第十一話:王都地下墓地へ
王都ヴェルニアの南区画。人通りの少ない裏路地を抜けた先に、《王都地下墓地》の入り口があった。
「この奥か……」
レイヴンは重厚な鉄の門を見上げた。墓地というよりも、まるで要塞の門のような威圧感がある。
「このダンジョン、実は序盤のネクロマンサー向け狩場なんだよね」
隣で俊也が説明する。
「アンデッド系の敵が多いけど、ネクロマンサーなら『支配スキル』で敵を味方にできるから、効率よくレベル上げができるんだ」
「なるほどな……」
レイヴンは頷きつつ、門に手をかける。
すると、システムメッセージが表示された。
——【ダンジョン:王都地下墓地】——
【推奨レベル:10~20】
【ダンジョンタイプ:インスタンス(ソロ/パーティ対応)】
【攻略情報:アンデッド系モンスターが多数出現】
「俺たちのレベルなら問題ないね。いこう!」
「ああ」
二人が門を開くと、湿った空気が流れ込んできた。
※
ダンジョン内部は、薄暗い石造りの通路が続いていた。壁には燭台が並んでいるが、その炎はまるで魂火のように青白く揺れている。
「雰囲気があるな」
「だね。でも、伯父さんにとってはこういう場所のほうが落ち着くんじゃない?」
「どういう意味だ?」
「だって、ネクロマンサーなんだからさ。墓地とか死霊とか、そういうのが似合うでしょ」
「……そういうものか?」
自分がネクロマンサーらしいかどうかは分からないが、このゲームにおいて「死の気配」はレイヴンにとって不利なものではない。
(むしろ……俺にとっては、都合のいい環境か)
ネクロマンサーのスキルは、周囲の「死」によって強化されるものが多い。
この墓地のような場所なら、戦いながらさらに強くなることができるはずだ。
「さて……そろそろ敵が出てくるよ」
キャバルがそう言った瞬間——
カツン……カツン……
奥の暗闇から、骨が擦れる音が響いた。
「……来たか」
※
闇の中から現れたのは、《スケルトン・ウォーリア》。
錆びた剣を携えた骸骨の戦士が、二体。
【スケルトン・ウォーリア(Lv12)】
•属性:アンデッド
•HP:400
•特殊能力:斬撃耐性、物理攻撃半減
「序盤の雑魚だね。どうする?」
「試したいスキルがある……やってみる」
「了解!」
レイヴンは杖を構え、スキルを発動する。
「《死者の従属》」
手のひらから暗いオーラが放たれ、スケルトンたちを包み込む。
——【スキル判定】——
【成功率:40%】
【対象:スケルトン・ウォーリア(Lv12)】
【……成功!】
「お、成功した!」
スケルトンの片方が、ゆっくりとレイヴンの足元に跪いた。
【スケルトン・ウォーリア(Lv12)が従属しました】
「ふむ……」
レイヴンは自分の支配下に入ったスケルトンを観察する。
このゲームにおけるネクロマンサーの召喚獣は、モンスターを倒して手に入れるのではなく、戦闘中に「支配」することで仲間にする仕様らしい。
(つまり、強いモンスターを手に入れるためには、戦って勝たなければならない……か)
なかなか厳しい職業だが、その分、戦術の幅が広がりそうだった。
「じゃあ、伯父さん。もう一体のほうは普通に倒そうか」
「そうだな」
キャバルが短剣を構え、もう一体のスケルトンに飛びかかる。
「《シャドウ・スラッシュ》!」
素早い一閃が、スケルトンの胴を斬り裂いた。
【クリティカルヒット!】
【スケルトン・ウォーリアに350ダメージ】
「あと一撃!」
「……任せろ」
レイヴンは杖を振り、呪文を詠唱する。
「《ダークボルト》!」
黒い稲妻がスケルトンを貫き、そのまま粉々に砕け散った。
【スケルトン・ウォーリアを倒しました】
【経験値+120】
「よし、いい感じだ」
「スムーズに戦えたね!」
キャバルが親指を立てる。
「伯父さん、もう一体は支配したし、どんどん奥に進もうよ」
「そうだな……この調子で進むか」
——こうして、レイヴンたちは《王都地下墓地》の攻略を開始した。




