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第8話 テニスとゲーム

 「暖、今のはあからさまにに動きすぎなんだよ。そんないつも俺が同じコースに打つと思ったのか?(笑)」


 万丈先輩にそう言われるのと同時に俺は恥ずかしくなって頬が赤くなった。


 (恥ずかしーーー!!!。今のは確かに馬鹿正直に動きすぎた(汗)。)


 15-15になって俺はふと思った。


 さっきは俺が万丈先輩のリターンの傾向を思い出してとっさに判断したからポイントできた。ゲームでいうところの一つの小さな《《攻略の糸口》》を見つけたってことだ。


 何を隠そう俺は根っからのゲーム好きで、その点においては百戦錬磨してきた猛者だと自負している。


 俺には天性のショット感覚や神の当て感などというテニスにおける才能はこれっぽちもない。だが、ゲームにおける才能はピカイチだ。


 昔から幾度となくRPGの攻略法や、バトロワ、サバゲーでの立ち回りを独自に編み出してきた。特にゲームにおける状況把握や空間認知能力に長けており、また対人ゲームでは相手の弱点を突くのが得意だった。


 つまりテニスをスポーツとしてみるのではなく、ゲームとして捉えるということだ。


 恐らく、この考え方のほうが俺にはあっている。


 (こっちのほうが得意だし、絶対ぇ楽しいじゃん!)


 俺は心の中でそうつぶやき、早速テニスをゲームに置き換えて整理してみた。


 万丈先輩は俺がさっきポイントを取るまでは確かにずっとクロスにリターンしていた。それは間違いない。でもいきなり逆のコースに打ってきたってことは、俺がクロスに動くのを予想したうえで、「対策」をしたってことだ。


 ゲームでいえば「ゲームオーバー」ってとこかな。そのあとは最初からのやり直しか、中間ポイントからのやり直しなのだが、テニスはそうはいかないらしい。


 テニスでは失ったポイントを前に戻って取り返すことはできない。だから、ミスをしても自動的に次のステージへ行く。


 つまり、常に状況が移り変わる中でどのように相手を攻略していくかってところだ。ここがテニスの難しいところだ。いつもの倍以上頭を使う必要があるからそれだけ考える時間も必要だ。


 おまけに一つ攻略のカギを見つけたと思ったら、すぐに違うプレーをしてくる。しかも万丈先輩はまだ全然手札を見せてないだろうし、、、、。



 「スパンッ!!」


 「おい暖、ゲームセットだぞ。何ポカーンと突っ立ってんだよ。」

 

 先輩はネットの前に寄って来ていて俺に握手を求めていた。


 「へ?ゲームセット?」


 俺はいきなりの先輩のエースに驚き、何が起きたのかわからず先輩に聞き返した。


 「そうだよ。お前今負けたじゃねぇか。だから試合終了だよ。」


 負けた????????


 「え、でも今カウントは15-15のはずじゃ。」


 「何言ってんだよ(笑)。そのあとお前のサーブ3本とも俺のリターンエースで終わったじゃねぇか。」


 「俺、サーブ打ちましたっけ?(笑)」


 「お前覚えてねぇのかよ(笑)。考え事でもしてて無意識のうちにサーブ打っちゃったみたいな言い方だな。」


 もしかしたらその通りかもしれない。俺はどうやら攻略法を考えている間に無意識にサーブを打ったらしい。


 (いやいやいや、ありえないでしょ(笑)。無意識?試合終了?俺の負け?だとしたらある意味集中しすぎでしょ俺(笑)。でも自分のプレイに気づかないくらい考えることに集中してたってことか。なんか変な感じ。)


 そんなこんなで、俺と万丈先輩の練習試合は幕を閉じた。

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