表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

第2話 部活動体験

 これほどにも俺がスポーツに目を奪われたことがあるだろうか、いや、あるはずがない。そう思いながらフェンスにへばりついて見ていると、


 「君たちテニスに興味あるの?良かったらせっかくだし体験しない?」


 と、一人の男子生徒がこちら側に駆け寄ってきた。俺たちはその男のあまりの勢いに飲まれてしまい、ただ見学しに来ただけなので遠慮します、と言うこともできず、

そのままテニスコートの中へと足を踏み入れた。



 あー、来なければよかったと後悔したがもう遅かった。安田はやる気満々だし、もうシューズもはかされて、おまけにラケットも持っているのだ。

 

 「ようこそテニス部へ!キャプテンの如月勝太きさらぎしょうたです。よろしく!」

 

 キャプテンと名乗った男の人はまさにさっきの人だった。俺たちは如月先輩に次いで、軽い自己紹介をした。


 「じゃあ、早速だけど、まずはラケットの握り方から。ラケットを地面において、そのまま上から握ってください。」


 俺は先輩の言うとおりにグリップを握ってみる。おぉ、なんだかすごく持ちやすい。


 「これがフォアハンドのグリップの握り方です。まあ、スイングとかいろいろ説明したいことはあるけど、実際に打ってみたほうがはやいから、とりあえずやってみよう!」


 如月先輩にそう言われ、まだ握り方しか教わってないんですけどー、と内心思ったが、とにかくコートに立った。


 「今から俺が見本見せるから、みんな見ててね。」


 そう言って先輩は構えに入った。そしてボールが出ると、


 「タッ、タッ、スパーン!!」


 小刻みなステップから正確なフォームとスイングで放たれたショットは、美しすぎる放物線を描き相手コートに落ちた。


 「まあ、こんな感じかな。じゃあ、吉田君打ってみて。」


 いやいやいやいや大ざっぱすぎるよ、と言いたくなるが、そんなことを考えているうちにもうボールが来てしまう。よし、俺は如月先輩のフォームを見よう見まねでやって、思い切りスイングした。


 「スカーンッ!」


 俺のラケットは空を裂いた。人生初テニスの初球を空振り。


 やっぱりか、と俺は思った。そう簡単に俺に打てるわけがないんだ。

先輩は、


 「ドンマイ!今日初めてやるんだから仕方ないよ。」


 と慰めのような言葉をかけてくれたが、その時の俺にはどんな言葉も無意味だった。ただ、にじみ出る悔しさだけがあったのだ。


 続く安田は、なんと一発でラッケトに球を当て、それどころかしっかりボールをコート内に収めていた。


 「安田君すごいね!よく一発目であんな球打てるよ!」


 そんな先輩の言葉に俺はよけい惨めになって、体験中で楽しんでいる安田を置いて、一人帰路についた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ