空気の絶縁を破壊するには
これは自然科学です。
二つの電極の間に空気がある
二つの電極の間に高電圧をかける
ごく僅かにでも電子が空気中にあれば
ごく僅かにでも電子が電極から出れば
加速された電子が空気分子にあたって
窒素や酸素にいた電子が二個飛び出す
二つの飛び出した電子がある
二つの電極の間に電子がある
この二つの電子は空気中にあるので
この二つの電子は電極で加速されて
加速された電子が別の分子にあたれば
窒素や酸素にいた電子が更に飛び出す
倍々ゲームで電子が増える
倍々ゲームでイオンも増える
これらの電子は膨大になるので
これらのイオンも膨大になるので
加速された電子が電極を襲う
加速されたイオンもう一つの電極を襲う
この一連の反応の連続が気中放電
必要なのは最初の僅かな電子
必要なのは電子を加速する高電圧
必要なのは加速に十分な電子のスペース
二つの電極は衣類の両袖あってもよくて
二つの電極は雷雲と地面であってもよい
こすれた袖の電荷から電子が飛び出して
袖の間をパチパチと放電する
こすれた上空の雲粒も電気を帯びた雲をつくる
雷雲と地面の間をゴロゴロと放電する
お読みいただきありがとうございます。
以下は、本文の注釈です。興味がありましたらでどうぞ。
注1: ごく僅かにでも電子が空気中にあれば
ごく微量な電子は空気中に必ず存在します。宇宙線から飛来した電子や紫外線が空気分子に照射されて発生した電子で十分です。
注2: 電子が二個飛び出す
一つの電子が空気分子に衝突して複数の電子が飛び出すのが、気中放電のミソです。
注3: 倍々ゲームで電子が増える
倍々ゲームは、ものすごい勢いで数を増やします。
注4: 衣類の帯電と放電について
衣類やプラスチックなどの絶縁体をこすると帯電します(金属もアースから外せば帯電します)。こすった物体の片方がプラス、もう片方がマイナスに帯電します。摩擦帯電といいます。符号の異なる帯電物を近づけると、放電します。基本的には、空気分子をイオン化する放電を伴います。衣類からの放電の電圧は数千から数万ボルトで、人は痛みを感じます。静電気がなくなれば、放電は終了します。衣類の帯電量は少ないので放電(感電)は一瞬です。可燃物が近くにあると発火を引き起こすかも知れません。超精密機器の誤作動も心配されます。注意しましょう。
注5: 上空の雲粒も電気を帯びた雲
衣類がこすれてたまる電気(静電気)と同様に、上空の雲粒の氷もこすれて電気を帯びます。小さな粒ほどプラス、大きな粒ほどマイナスに帯電しますが、この理由は定かではないとされます。小さなプラスの粒が軽いので雲の上部に、大きなマイナスの粒は下部に分布します。マイナスに帯電した粒から地面に向かって電子が放電する落雷が典型です。ただし、地面から雲に電子が放電する場合(逆さ雷)もあります。基本的には軽い電子が流れます。空気中のプラスイオンは、雷雲や地面からきたイオンではなくて、空気中の分子が電子を奪われてできたプラスイオンです。このプラスイオンは電子の出発高さと反対側から発達するので、雷の見方によっては、雷の発達が雲からか地面からかの判別が逆になります。雷雲と地面の電圧は典型値として、10^9Vです。雷雲の正味の帯電量と地面からの距離によるものと思います。上空で発生する静電気の放電であり、広い範囲が影響を受けます。
注7: 空気の絶縁破壊、所謂、気中放電について
電極が金属である場合、放電が起こる電極間距離と気圧(分子の密度、電子が分子に当たるまで加速される距離に関係する)、そのときの放電電圧は、予測しやすいです。一つの金属の電圧は一定と近似できるためです。しかし、電極の角張った場所は電圧勾配が高く、放電しやすいです。これはなかなか予想が難しいです。高電圧設備では、金属や絶縁体の角を丸く加工します。電極に絶縁性があると、絶縁体にも電圧がかかるので放電予想が難しいです。本文にあげた、衣類や雷の放電は絶縁性の物質が帯電したものなので、帯電していない絶縁体よりも放電しやすいです。
注8: プラズマ
マイナスの電子とプラスイオンがほぼ同量存在する領域は、プラズマといいます。どちらか一方の電荷が優位な場合にもプラズマという場合がありますが、振る舞いが違うのでご注意を。
以上、ここまでお読みいただいた方、マニアックな話におつきい、どうもありがとうございました。
制作: 歌川 詩季 先生