72話 掲示板【宝石の死刑場】
◆掲示板◆
【異世界】深く語るスレ【宝石の死刑場】
：先駆都市ミケランジェロの神は狂ってやがる
：芸術の神ミケランジェロか？
：なにがあった？
：あいつが友人に宝石の芸術家がいるって言うから、どこにいるのかって聞いてみたんだ
：宝石を扱う神の友人か。それは気になる
：したら絵画を指さされて『あそこにいる』って
：まさか……【絵画世界】か！？
：絵画の名前は！？ 場所は！？
：絵画のタイトルは【宝石が浮かぶ湖】。場所は先駆都市ミケランジェロの『天使が降りた回廊』前だ
：ないすうううう情報めっちゃ感謝
：よくあの気難しい神から【絵画世界】の場所を聞き出せたな
：裏ステータス……『きようさ』と『芸術』をコツコツ上げてたんだ……いつかミケランジェロが創り出す作品と肩を並べるような傑作を作りたくて……自作も納品してきた
：ミケランジェロに認められたってわけか。よかったじゃん
：その結果がこれだよ！ 全て失っちまった！
：どうした。落ち着け
：どうしてミケランジェロを恨むんだ？
：あんな【絵画世界】は鬼畜すぎる！ 俺以外、パーティーメンバー全員が宝石人間になっちまった！
：宝石人間……？
：くわしく
：最初、俺たちは新種の【絵画世界】発見に胸躍ったさ。まず自分たちで一番に攻略して富を得ようってな
：まあ冒険者ならそうするのは当たり前だよ
：むしろ今、無償で情報を共有してくれるのはありがたすぎる
：信憑性に欠けるデマかもしれんけど
：まあ、そこはおいおい確認できるだろ
：俺たちのパーティー平均Lvは12だ。新種の【絵画世界】でも、五大黄金領域のダンジョンなら、事前に準備さえすれば攻略できるって踏んだ
：ミケランジェロは初期都市の一つだもんな
：パーティーのLv帯は中堅だし、うん。安全マージンは取れてるな
：それでも悲惨な結果ってダンジョントラップとか？
：ああ、入った瞬間からモンスターハウスか？
：【絵画世界】の中は、普通の湿地地帯って感じだった。俺たちは絵に描かれたような美しい湖に辿りつけなかった
：行ってみたいな
：いいな。俺も攻略したい
：そんでもって宝石も取り放題か
：でも宝石人間になるってどういうことだ？
：湖がうっすら見えるところまでは行けたんだ。でも、湖畔に近づけば近づくほど、妙な彫刻が乱立するようになったんだ
：妙な彫刻？
：作品か？
：何かの宝石を削って作った、人間の彫刻だ。全てが恐怖の表情を浮かべたまま凍ってしまったかのような……そんな感じだった。あの時、引き返していれば……俺たちは……
：つまり、その彫刻が実は全員本物の人間だったってオチだな？
：そうだ……俺の仲間はあいつに宝石にされちまった……あの大鬼のせいで……
：大鬼？
：芸術の神ミケランジェロはあいつをこう呼んでいた。『宝石を生む芸術家』だと
：で、モンスター名は？
：『彫刻の大鬼ジュエル』。あいつの吐息を浴びたが最後、自分自身が奴の芸術作品の仲間入りだ。美しい宝石になりたいって言うんなら、あのダンジョンに挑めばいいさ。俺は！ あの狂った神の危険性を警告したからな！
：……一攫千金の代償は、自分の命ってか……
：だが、俺は行くぜ。情報ありがとな
：俺も……挑戦してみるだけのリターンが見込める
：宝石を取り放題だろ？ 挑まないなんてありえない！
こうして富と名声を求めた冒険者は、煌びやかな【絵画世界】に呑み込まれていった。
そして多くの者が美しい作品になり果て、帰らずの人となる。
いつしか、その【絵画世界】はこう呼ばれるようになった。
【宝石の死刑場】と————
お読みいただきありがとうございます。
この物語を『おもしろかった！』『続きが気になる！』と思ってくださった方は、ブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります！
