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127話 放課後モンパニ


「おいおいおいおい……! あの半透明な巨人は何なんだよ!?」


 自然神(ダイダラボッチ)【徘徊する逢魔(おうま)が時】がぬらりと窓の外を歩く姿を見て、腰を抜かしてしまうハヤトくん。

 そんな彼とは対照的に、クラスメイトの古守(こもり)は感動しているようだった。


「うわあ……冒険者っていつもあんなの相手にしてるのかあ」


「見たことないタイプのモンスターでっすね……」


 そしてエルフ姫みどりさんは、これが異常事態であると察知した。

 もはや異世界(パンドラ)課などに冒険者向けの救援要請を出すレベルだと。



:やばくね?

:学校にあんな巨人が出現するとか怖すぎw

:冒険者ハヤテくん頑張れwww

:あれ? 群馬県に出てきた【雲の巨人(クラウドマン)】と似てないか?

:てかここってどこの高校?



 リスナーたちのコメントも不安がちらほらと出始めてきた。

 ここまでの事態になってしまったら、さすがに悠長に素人の配信(・・・・・)を手伝っている場合じゃない。

 学校の七不思議的な現象が次々と発生するから、警戒していたけどまさか自然神レベルの存在まで出現するとなれば、もはやハヤト君の希望に沿ってはいられない。


 とはいえここは焦らずに行動していきたい。

 おそらく学校には、まだ帰宅していない彼女たちも数人は残ってるはずだ。

 とりあえず俺はスマホをタップして配信を切り、避難誘導を開始しよう。


「みんな! ミドリーナさんを中心に避難しよう!」


「はあ? オジが急に何言ってんだよ……べ、べつに俺はビビッてなんかいねえし、こんな大チャンスを逃すわけって、お前! 勝手に配信切りやがったのか!?」


「ちょっと隼人(はやと)七々白路(ななしろ)の言う通り、もう『冒険者ハヤトくん』をやってる場合じゃないって」


「校庭の方から悲鳴が聞こえるでーっす」


 エルフ姫みどりの指摘を受けて、渡り廊下に急いで移動する。

 するとやはり生徒たちは突如として出現した彷徨う自然神(ダイダラボッチ)に阿鼻叫喚だ。

 それだけじゃない。

 よく見ると、何かに追い回されている生徒もいる。


「うわ、初代校長先生の石像が動いてるとかシュールだな」

「上から見てるから滑稽だけど、自分がされたら恐怖でしかないよ」

「他にもグロいのが走ってまーっす」


 おいおい、人体模型のジョンまで何やってるんだ。

 まるで何かに興奮したかのように、陸上部の連中を追いかけまわしていた。


「……まるで放課後のモンスターパニックだねえ」


「え、えっ!? ちょっと待ってくれ! あれって、【にじらいぶ】の! そらちーじゃないか!?」


「ん? ああ、前に隼人が藍染坂(あいぞめざか)さんに似てるって言ってたYouTuberだっけ?」


「そう、そうだよ! 海斗そら!」


 ハヤトくんの言う通り、校庭で生徒を追いかける七不思議を止めようと、(あおい)が奮闘し始めた。

 やっぱり水泳の部活動で放課後も学校に残っていたようだ。

 となると校庭の方は蒼に任せて大丈夫か。


「わあお! ここで【にじらいぶ】のメンバーを見かけるなんて、偶然にしてはできすぎでーっす?」


 鋭い意見を漏らすエルフ姫みどりさん。

 だが俺はいたって平静な顔で、避難誘導を勧めておく。


「幸運なことに【にじらいぶ】が現れたわけだし、早めに学校から退避しよう」


「はあ!? オジは何言っちゃってんの!? こんなチャンスは滅多にないっての! 逃げたいならお前だけさっさと行けよ!」


「いやいや隼人。どう考えてもアレは俺らにおえる代物じゃないでしょ」


古守(こもり)までビビってんのか!? だったら俺一人で————」


 ハヤトくんは憧れの【にじらいぶ】メンバーを目撃して感極まっていたけれど、その元気は【徘徊する逢魔(おうま)が時】の注意を引き寄せてしまった。

 巨大な夕焼けの化身は窪んだ虚無の眼孔をこちらに向け、ゆらりゆらりと夕闇を引き連れて(かが)んできた。


「ゆう……焼け……子、焼けェェェェエエエエエエエエエ!」


 渡り廊下周辺の空中が自然発火し、それは自然神(ダイダラボッチ)のメラメラと燃え上がる気炎のようだった。


「ひぃぃぃ……!」

「あー、死ぬ」

「攻撃すべきでーっすか……? 下手に刺激しない方がいいでっすか?」


 これはまずい。

 さすがにミドリーナさんを前に正体バレを気にしている場合じゃない。


 俺は巨神を前に一歩出ようとする。

 しかしあわやというところで、銀に輝くナイスバディな魔法少女が颯爽と登場してくれた。



「ダイダラさんは落ち着くのです。そうそう、ちょっとお話をしましょうです」


 迫りくる巨大な夕闇そのものに1人の少女が手を伸ばす。

 渡り廊下で、すんなりと放課後の夕焼けを(とどめ)てしまう姿は、まるで映画やアニメのワンシーンのように美しく、非現実的な光景だった。


 そんな彼女に呆気に取られたのは、もちろんハヤトくんや古守(こもり)だ。

 彼ら二人の視線に気づいた可愛らしい魔法少女は、ちょっとゆるい感じの笑みを浮かべる。



「にゅにゅーっと登場☆ ぎんにゅうですっ!」


 銀髪地味巨乳な魔法少女さんが登場してしまった。

 どうやら先日食べた【極旨(ごくうま):龍星カレー】で習得した技術(パッシブ)『龍宮使い』が上手く作用しているらしく、ぎんにゅうでも自然神との対話が可能なようだ。



「ぎっ、ぎんにゅうちゃんだああああああ!?」


 そしてハヤテくんは、モンスターに倒される前にぶっ倒れてしまった。






新作はじめました。

『下級兵のおっさん、転生したら『天空の城』だった~遥かな高みから全てを見下ろして、最強スローライフを満喫します~』

です!

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