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ただいま辺境伯家

誤字報告ありがとうございます! 一応読み返してはいるのですが、どうして誤字は無くならないのか。

 久しぶりに辺境伯家に帰ってきた。私の帰還を聞いたのか、アンドレさんが出迎えてくれたよ。アンドレさんは何回か口を開いては閉じてを繰り返したあとおかえりなさいませと言ってくれたが、一体何が言いたかったんだろう?

 一旦邪魔にならないように馬車置き場まで馬車を動かす。馬が引くから馬車なら、私が引くなら私車? 美少女車? どうせもう使わないからなんでもいいね。


 ゴレムスくんが荷台からゴスっと音を立てて飛び降りたので両手で抱き抱えて御屋敷に戻る。ゴレムスくんは歩くのが遅いのだ。


「ノエル様、その抱えてらっしゃるのは……」


「これ? これはゴレムスくん。今回の旅で拾ったんですよ。ほらゴレムスくんも挨拶」


 ゴレムスくんは私の話を聞いていないのか無視しているのかわからないけど、一切反応がなかった。ミチミチと締め上げていくと慌てた様子で手を上げた。最初からちゃんとやりなさい。


「はぁ。では先ずは旦那様に報告ですね」


 アンドレさんの先導で執務室へ入ると、フレデリック様が仕事中だった。


「やぁ、おかえり」


「ただいま戻りました。お土産がありますよ」


「お土産っていうのはその抱えてるゴーレムのぬいぐるみかな? リリが喜ぶよ」


 抱えられてる間ピクリとも動かないゴレムスくんを見て、フレデリック様はぬいぐるみだと思ったようだ。


「ほら、ゴレムスくん挨拶」


 私の言葉を聞いて、今度は急いで手を上げた。やれば出来るじゃないの。


「えぇっと、アンドレ説明頼む」


「いえ、私にも何が何だか……。取り敢えず拾ったそうです」


「あ、お土産はこれです」


 私はゴレムスくんを下ろしてから鞄に入れてある悲運のインゴット三つを執務机に置いた。


「アンドレ、これはもしかして……」


「アダマンタイトでしょうね」


「そうみたいですよ」


 実際のところ私はアダマンタイトを知らないんだよね。これをアダマンタイトゴーレムって皆が言ってたからアダマンタイトなんだと思ってるけど、そもそもアダマンタイトが何かをよく知らない。サラさんが貴重って言ってたからお土産として喜ばれるでしょ。


「このゴレムスくんが襲ってきたんですよ。それでボコボコにして、戦利品としてゴレムスくんごと持って帰ってきました」


 屈んでゴレムスくんの頭をコンコンと軽く叩く。あれ、襲ったのは私だっけ? まぁいい。叩かれた本人は叩かれた事に気が付いていないのか、気にしていないのか特に何も反応せずにいる。

 帰ってくる時にも思ったけど、ゴレムスくんはのんびりとした性格のようだ。休憩中シャルロットとおしゃべりしていない時は、座って太陽の方に体を向けてじっとしてたからね。


「そ、そうかい。それは安全なのかな?」


「どうなんでしょう? ゴレムスくんは安全? おーい、安全か聞いてるんだから答えなさい」


 ゴレムスくんはヘッドバンギングで答えてくれた。うん、安全のようだね。ぼーっとしてるのか反抗的なのか判断がつかないよ。


「そ、そうかい。まぁ安全ならいいよ。貴重なお土産もありがとう」


「あ、そうだ。今日街に帰ってきた時に街の人が私達を見る目が何処かおかしかったんです。責めるような視線といいますか、トゲがあったと言いますか……。私がいない間に、街で何かあったりしましたか?」


「いや? 特にそういった報告は受けていないね。恐らくはノエルちゃんの出発前と変わりないはずだが……」


「そうですか……。わかりました」


 結局街の人達の不可思議な視線の正体はわからなかった。後日、果てなき風の人たちから何か教えて貰えるかもしれないしそれを待とう。

 フレデリック様にお辞儀をしてから執務室を出て部屋に戻る。ゴレムスくんについて深く言及されなかったし、取り敢えず滞在許可が得られたって事でいいのかな?


 久しぶりの自室に入るとリリが紅茶を飲んでいた。いつものメイドさんも一緒だね。


「ノエル! 帰ってきたのね! そのブサイクなぬいぐるみは置いてちょっとこっちに来てくださいまし!」


 何があったのかわからないけど、リリは私を見るなり立ち上がって手を引いてお風呂場へと向かった。というか、もしかして私が居ない数日間私の部屋で過ごしてたの? もうこの部屋あげようか?


「見ててくださいまし!」


 リリは目を閉じて集中すると、浴槽に手を伸ばした。


「はっ!」


 掛け声と共に手からは氷がゴロゴロと出ている。凄いじゃん! 私が最後に見た時は小さい氷を二、三個出すくらいだったのにゴロゴロとたくさん出すなんて!


「これどうしたの? 急に凄い進歩じゃん!」


「そうでしょう? なんだかわたくしにもわかりませんが、急にできるようになったんですの」


 コツを掴んだのかな? でもスポーツなんかでもそうだよね。毎日の練習で成長を感じられなかったのに、ある日突然不思議なことにグッと上手くなるタイミングがあった。それと同じなのかもしれない。なんにせよ頑張った子は褒めなきゃいけないよね!


「リリ凄いよ! 天才だ! 夏本番を前にして氷が出せるようになるなんて救世主だ! アイス作ろうアイス!」


 ゴレムスくんを置いてリリを抱き上げる。


「そうでしょう? わたくし凄いでしょう? わたくしも自分自身で驚きましたもの。わたくしに、こんな隠さ」


「凄いぞー! リリ! 天才だー!」


「ちょっと話を聞いてくださいまし!」


 氷が作れるならアイスが作れる。アイスが作れるならパフェだって作れる! 大きい縦長のパフェ用のグラスを特注しなくちゃ! パフェとサンデーの違いはわからないけど、私にとってパフェは上に向かって広がっていく縦長のグラスに沢山素敵なものを詰めたらパフェだ。小さいならサンデーだ。

 サンデーは物足りなくて、パフェは夢いっぱいなのだ!


 リリを下ろしてゴレムスくんを探すと、シャルロットと二人で遊んでいた。シャルロットがリリの作った氷を持ってきてはゴレムスくんに渡す。ゴレムスくんは受け取った氷を自分の体にぶつけて壊し、頷いている。それなんの遊びなの? どうだ俺の方が硬いぞ、みたいなアピールなの?


「ちょちょっとわたくしの氷を壊さないでくださいまし! というかあなたはなんなんですの!」


 リリはひたすら氷を壊して頷くゴレムスくんをどう止めたらいいのか分からずに、ゴレムスくんの横に屈んでわちゃわちゃと手を動かしている。

 

「その子はゴレムスくんだよ。シャルロットおいで」


 氷さわって冷えちゃうからね。ギュッと抱き寄せると嬉しそうにおしりを振った。シャルロットはゴレムスくんの前だとお姉さんぶっているのか、あまり甘えたりしないんだよね。

 私もリリの出した氷をさわって確認する。成型されたような氷ではなくて、ゴロッとしたロックアイスみたいな氷だね。ガリッと食べてみると味も特になく普通だ。


「わたくしの氷を食べないでくださいまし!」


 顔を真っ赤にして怒るリリにごめんと謝ってから部屋に戻る。

 でもこれでリリの魔法をバカにしたアレクサンドル様とアンドレさんを見返す事ができるし、リリがアイスを作れば貴族の女性から一目置かれる様になると思う。

 今こそ反撃の狼煙を上げる時だ。お茶会でリリをバカにした子にはアイスをあげないし、アレクサンドル様とアンドレさんにもあげない。


「リリ、明日はリリの力を貸してね!」


「よく分かりませんが、わたくしに任せなさい!」


 その日の夜、お風呂に入るリリが叫ぶまでゴレムスくんをお風呂場に置き去りにしていた事を忘れていた。

 


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