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お買い物準備

「では私から辺境伯に手紙を出しておこう。二、三日あれば何かしら連絡がくるだろうし、それまで街の観光でもしてはどうかね?」


 それなら一度村に帰って何日か滞在する事になったって連絡したいなぁ。こういう時スマホが無いと本当に不便だよ。


「アレクシアさん、一度村に帰らなくても平気?」


「……そうだな。心配はするだろうけどジゼル達も行ってすぐ帰ってこれるとは思ってないんじゃないか? 平気だろう」


「私ならすぐ往復できると思うけど」


「誰が見てるかわからないから、それは辞めておいた方がいいだろう」


「はぁい」


「さて、エリーズや可愛いエマの話も聞きたいところだが、折角街に来たのにいつまでも爺の相手をさせるのは忍びない。今日泊まる宿はもう決まってるのかな?」


 宿なんかすっかり忘れてたよ。窓の外を見てみると日がだいぶ傾いていた。出来ればお風呂付きの宿に泊まりたい……。


「あの、お風呂がある宿ってありますか?」


「うむ。マリーに案内させよう」


 おお! 転生してから初めてのお風呂だ! 正確には産湯振りのお風呂かな。……乙女として終わっている気がするね。


「それと……お金が欲しいんですけど……」


「……ノエル、それはダメだろう。お金なら私が出してやるから人に集るな」


「アレクシア殿、ノエルちゃんは集っている訳じゃないと思うよ。商会でノエルちゃんに支払われるお金を預かっているんだ。それの事だろう?」


 言い方が悪かったかな? でも自分のお金でも返してとか払ってって何故か人に言いにくくない? 例えば来月返すねって言うから貸したお金とかさ。月が替わったのに返さないのは来月が一か月後って意味だったのかな、とか自分に言い訳して言えなくなっちゃうんだよね。あれって私だけなのかな?


 結局よくわからないけど、白金貨十枚を渡してくれた。今すぐに渡せるのはこれだけなんだってさ。ギルドで下ろせば渡せるそうだ。


 お金を見たのは初めてだけど、見た目より結構ズッシリしていて、何かの動物と剣の刻印がされてる。白金貨っていうからもっとキラキラしたのを想像してたけど、意外と落ち着いた銀色をしてるね。多分銀貨もあるでしょう? じゃあ銀貨とはどう違うんだろう?


 この白銀貨ってどれくらいの価値があるのか聞いてみようと思って隣のアレクシアさんに目線をやると、口をあんぐりと開けて放心している。


「アレクシアさん、この白銀貨ってどれくらいの価値があるの? いつも食べてるパン何個くらい買える?」


「……いやパンって……。一個も買えないよそんなの……。」


「えぇー。じゃあ宿泊まれないじゃん」


「宿は泊まれる。それこそ一番高い宿でも泊まれるぞ。ちょっと混乱してるからそっとしといて……」


 私だって混乱してるわ。パン一個も買えないのに高い宿には泊まれるお金って何よ。あんな鈍器みたいなパンが実は高いの? 実はパンみたいな鈍器って可能性。異世界ならあり得るか……? 非常時には食用にもできる鈍器みたいな。


「私から説明しようか。当然パンを買うことはできるけど、額が額だ。店側が釣銭を出せないだろう。そういう意味ではパンは買えない。ノエルちゃんはお金を見るのは初めてかな?」


 私がそれに頷くと、ジェルマンさんは机の引き出しからコインケースの様なものを取り出して、各種お金を一枚ずつ私の前に並べてくれた。


「こちらから順番に、銅貨、銀貨、金貨、大金貨。銅貨から順番に十枚ずつで次の硬貨と同じ価値になっている。十銅貨と銀貨一枚、十銀貨と金貨一枚、十金貨と大金貨一枚がそれぞれ同じ価値という訳だ。ここまでは平気かな? そして今ノエルちゃんが持っている白金貨一枚は大金貨十枚と同じ価値がある。パンは物にもよるが銅貨一枚程度だから、そこに白金貨を出すと店が困るという訳だな」


 仮に銅貨一枚を百円と仮定すると、白金貨は百万円って訳ね。つまり私が持ってる白金貨十枚は一千万円くらいって事か。ふーん。


 私は震える手でカチャカチャと硬貨を鳴らしながらテーブルの上に白金貨を置いた。この爺さん頭おかしくね? 七歳児にはいどうぞで一千万渡すか……? 冷静な振りしたけど無理だったわ。手汗がヤバい。子供が一千万円持ちながら、『これでパン何個買えるかなー?』なんて言ってきたら返事に困ってアレクシアさんみたいにもなるか。


「買いたい物が二つあるんですけど、どこで買えるか聞いても良いですか?」


「一体何が欲しいんだい?」


「一つ目は料理やお菓子作りに使える調味料! あと食材も一応見たいです」


「料理関係か。この店にも一応あるが、調味料なんかの品揃えは貴族街近くにある店舗の方が良いだろう。案内する宿からも近いし、そこへもマリーに案内させよう」


 街に二店舗もあるのか……。お母さんが調味料は高いって言っていたし、貴族街の近くの店舗って事は高級路線のお店があって、ここは本店なのに庶民向けだったのかな。前世でも高級住宅街の近くにはスーパーなのにやけに落ち着いた雰囲気で商品が高いところとかあったしそういう感じなのかな? こんなところにスーパーあったんだーの軽いノリで入った時に場違いな感じがして驚いたのを覚えてるよ。スーパーなのに場違いってなんだこれって感じだったね。


「そうして貰えると助かります。もう一つはあったら欲しいって感じなんだけど……。見た目以上に入って、入れた物の時間が停止する袋とかない……よね……?」


「ふむ……」


 ジェルマンさんは何かを考え始めた。記憶を探ってあったかどうか思い出してるのかな。


「そうだな。先ずは一応ある、と言っておこうかの。ただ買えるかという問いには買えないと答えるしかない。……私からも聞きたい、その袋の話はどこで聞いた?」


 ジェルマンさんが鋭い目付きで質問をしてくる。もしかして国家機密とかで一般的には存在すら知られていない危険な物だったりした……? め、めんどくさい……。


「聞いたことはないよ。ただ魔法が存在する以上、そういう道具があっても可笑しくはないのかなぁって。それがどうかした?」


「そうか……。別に問題がある訳じゃない。ただ一般的には知られていないのだよ。そして売り物ではないから買う事が出来ない」


「でもあるんでしょ? どこで手に入るの?」


「魔法袋は王家が管理しているんだ。それを褒美として貸与する事があるらしい。だから持っている人も、形式上は王家から借りている事になっている。管理はかなり厳しく、定期的に魔法袋の所在やら何に使っているかなど報告義務があると聞くね」


 ……王家卑怯じゃね? そもそも私のお菓子計画においてその魔法袋の存在はかなりデカイ。魔法袋がないと買い溜めも出来ないし、村まで運ぶのも難しい。例えば沢山の牛乳を村に運んで貰うのはちょっと難しいと思う。時間も掛かるし保存も難しい。じゃあ早く走れる私が運ぶ? 出来るけどそんな速度で走ったらバターになっちゃうよ……。街でお菓子を作って村まで運ぶ? それこそ出来っこない。それらを簡単に解決出来るのが魔法袋だ。


 そして王家が独占してる。……言ってみれば王家はお菓子を独占してる訳だ。


「つまり王家は私の敵……?」


「……ングッ!? ゲホッゲホッゲホッ。お前なんて事言うんだ! 流石にやべーぞ」


 落ち着いて紅茶を飲んでたアレクシアさんがまた少し興奮してる。


「そうだな。王家の批判はそれだけで捕まる可能性があるから言わぬように。どこで誰が聞いてるかわからないからね」


「でも魔法袋独占してるなんてずっこいじゃん! 私だってお菓子作りの為に使いたいもん! ジェルマンさん、どうにか入手する方法ないかな?」


「真っ当に手に入れるには王家に認めるれるのが一番だろう。寧ろそれ以外に方法はない」


「持ってる人に借りられないの?」


「それも難しいだろう。さっきも言ったように厳しく管理されている。何でも入れる事が出来て、好きなだけ入れられる袋など悪用しようと思えばいくらでも出来てしまうからな。それを他人に貸したりは普通はせんよ」


 むぅ。ホントに無理っぽいなぁ。魔法袋なんだから作るのは魔法が使われてるんだろうけど、流石に身体強化の魔法では作れないよね。ワンチャンを信じて身体強化して時空を切り裂けるほど鍛えるか、王家に突撃してオネダリするしかない、か。どっちが手っ取り早いかで言えば王家だよね。


「じゃあ近いうちに王家にお宅訪問に行こう!」


「いや王家って誰々さんの家みたいなものじゃないからな? わかってるか?」

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