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気が付けば大所帯

 エリーズさんの命令ゲーム収穫祭大人の部も無事に終わって、集まっていたオッサン達も方々に散って行った。私たちも休憩しようとずっと占領している席に座る。子供たちにももう終わったから解散だよと言ったんだけど、まだ何かやるんじゃないかと疑っているのか私たちを取り囲むように地べたに座っている。


「ねぇ、エマちゃん。少しは皆の思い出になったかな?」


「フフッ、なったと思いますよ? 後で怒られてしまうと思いますけど、それでも凄く楽しかったです。たまには皆と遊ぶのも良いものですね」


 いつもは二人きりで遊びたいなんて消極的な事を言っているエマちゃんだけど、お祭りの空気で集まった皆と勢いで遊んだのは楽しかったみたい。いつもより柔らかくふんわりと笑っている。さすがに疲れたなぁと充実感のある気怠さを感じてテーブルに顎を乗せてだらけていたら不意に声をかけられた。


「ノエルー! 呼ばれたからきたよー!」


「んあー? オルガちゃんじゃん、どうしたの?」


「ノエルが皆を呼んでるってダンが言ってたから走って来たんだよ?」

 

 皆が誰かなんてわからないし、別に誰の事も呼んでないぞ? そんなの知らないぞと首を傾げる私と、どういうことだと首を傾げるオルガちゃん。そんな私たちを見てエマちゃんが苦笑い気味に答える。


「さっき収穫祭だから皆集めて遊ぼうってダンと話したって言ってませんでしたか?」


「……あっ! 言ったわ。でももう遊んだし、なんならオッサンとも遊んだんだよなぁ。オルガちゃんは今までどうしてたの?」


「ウチか? ウチは父ちゃんが門番してるからそっちに行ってたんだ! ウチは広場で遊びたかったんだけど、母ちゃんが可哀想だから顔だけでも見に行ってあげようって」


 なるほどねー、門番までお休みって訳にもいかないもんね。この辺りに一体どんな危険があるのかイマイチ理解していないけど、何かあってからでは遅いだろうし仕方がない。そんなみんなの為に働く人たちの関係者は門の方に集まってるのかも。炊事場にいるおばさん達も仕事ではないだろうに皆の為に調理や給仕をしてるんだ。頭が下がる思いだよ。


「もう遊ばないのか? ウチノエルが何かするって言うから楽しみにしてたんだけどな……」


 オルガちゃんは悲しそうに俯き気味だ。周りで様子を伺ってた子供たちも本当にもうやらないのかとオルガちゃんに釣られてしょんぼりしている。


「はぁー……。エマちゃん疲れてない? 平気かな?」


「フフッ、私は平気ですよ。結局皆の相手をしてあげるんですね」


「こんなしょんぼりされたら仕方ないよね。じゃあダンが戻ってきたら皆で遊ぶぞー! それまで休憩! 体動かす遊びするからしっかり休んどけー?」


 私の号令にオルガちゃんも周りの子供たちは大はしゃぎである。だから休んでなさいって言ってるでしょ!


 その後もダンが声をかけた子なのか、皆が集まってるから寄ってきたのかわからないが私とエマちゃんを取り囲む子供が増えて全部で三十人くらいになった気がする。下は私と同じくらい、上は十歳超えてそうな子まで色んな歳の子が集まったね。この村にいる全ての子供が集まったわけでもないだろうに、こんなにたくさんいたなんて驚きだ。だが一つ言いたい。何故私たちを取り囲む? 監視か? 実は監視されてるのか?


「おい! ノエル!」


 どうやらダンが戻ってきたようだ。子供結界の外側から大きく手を振りながら話しかけてくる。


「おー、ダンおかえり。結構集まったもんだね」


「いや、俺はこんなに集めてねーぞ。なんでこんなにいるんだ?」


 知らんよ。むしろ私に教えてくれ。子供たちもダンが戻ってきた事でようやく遊びが始まるとザワつきはじめた。こんだけ人数いるとざわめきも結構大きく、取り囲まれてる私とエマちゃんはまるで生贄だ。


「それじゃあダンも戻ってきたことだし、さっきとは別の遊びを始めますかー! 広い原っぱみたいなところに行きたいんだけど、ダン近くにそういうとこある? それとオッサン達ー! 誰か私達の保護者として付いてきてくれない?」


 今祭りの会場になってる村の広場は本来、屋根付きの共同炊事場があるだけで後は剥き出しの土だ。でも今日は祭りだから人も多いし、テーブルが色んなところに設置されてる。これからやる遊び的には広くて原っぱみたいな所がいいな。さっきのエリーズさんの命令ゲーム参加者のオッサングループが立候補してくれた。相変わらず酒が入ってるだろう木のジョッキみたいなのを握りしめてるね。


「ありがとー! じゃあエリーズさんの命令! 私の後に続けー!」


 私の号令に合わせて、命令ゲーム参加者は一切の迷いなく、足並みを揃えて私の指示に従う。オッサン達も同様だ。逆にゲームを知らない子供たちは何が起きたのかわからず戦々恐々としてる。ざわついていた子たちが、謎の号令を聞いたら急に足並み揃えて動き出したら怖いよね。でも大丈夫。君たちだっていつかこうなるんだよ、にっこり。


「エマ姫もどうぞ」


 私は肘を軽く曲げてエスコート出来るようにする。このエリーズさんの命令するとエリーズさんは女王、エマちゃんはお姫様って感覚になるんだよなぁ。


「は、はい! ノエル様! お願い致します!」


「いや俺が案内するんじゃねーのかよ……」


 エマちゃんも役に入り込んだみたいで大興奮だね。それよりダン遅いぞ! ブツブツ言わんと早く前を歩きなさい!


 五分くらい皆でお喋りしながら歩くと目的地についたみたい。今は秋だから地面の草も萎びた色をしてるけど、春先だったらお昼寝するには気持ちよさそうな何も無い原っぱだ。どこまでも広がる青空と、白い雲、時折吹く少し冷たい風も心地いい。気が付けば前世の都会では考えられないような景色と生活にも随分と慣れたもんだな。


「ダン、ここはいい所だね」


 風になびく髪を抑えながら案内をしてくれたダンに声をかける。


「お、おう。そうだろ? みんな教会の方の丘に行くからここはあまり人も居ないんだぜ」


「もう目的地に着いたのでダンは向こうに行ってください!」


「な、なんだよ! 別にどこに居たっていいじゃねーか!」


「なぁノエルー、これから何すんだー?」


「あぁもう! オルガちゃんまで邪魔しないでください!」


 皆でご飯を食べるだけ、なんて言っていた収穫祭も蓋を開けてみれば随分と賑やかなお祭りだったように思う。こうやって大人も子供も関係なく集まって、皆で遊んで……。少しずつみんなと仲良くなって、これからも楽しく暮らしていければいいなって、そう思った。


「よぉーし、お前らー! これからやる遊びを説明するぞー! 喧嘩しないで仲良く遊ぶように! どうせならオッサン達も一緒にやろう! 第一回ハンカチ落とし大会始まるよー!」

 章分けは今の所考えていませんが、これで一応第一章が終了です。偶然にも大晦日になりました。


 明日からは新章が始まります。引き続きお付き合いよろしくお願いします。

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