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パーティーだってよ

 帝都の人気飲食店でご飯を済ませたあと、またお城まで戻ってきた。未だ城の中は慌ただしく、メイドさんや執事さんが走り回っていた。


 まるで年末のような忙しなさの中、私はウルゼルさんに広い部屋へと案内された。


「じゃあノエルちゃんはしばらく部屋で休んでてくれ。少ししたらメイドが手伝いにくる」


「なんの手伝い?」


「パーティーの準備だ。入浴したり化粧したりドレスに着替えたりする必要があるだろう?」


 何を当たり前なことを、とでも言いたげな顔で言うウルゼルさん。今夜パーティーがあるから慌ただしかったみたいだね。でも正直知り合いの居ないパーティーなんて肩がこるだけだし出たくない。


「私はいいよ。パーティーとかあんま興味無いし」


「主役が何を言ってる。ノエルちゃんがいなかったら意味が無いだろう」


「えぇー。主役に声を掛けないで始めるパーティーもどうかと思うけどね」


「まぁ言いたいことはわかるが、突然やってきた我々が言えた事でもあるまい」


 私のモチベーションはさておき、思った以上に丁重に持て成してくれてるみたいだ。本来なら到着予定を聞いた上で、しっかり準備して歓迎会を開きたかったんだと思う。それなのに季節一つ分くらい早く来ちゃったもんだから大慌てなんだろう。


 来てくれるか、いつ来るか確認しようとしたのに、『来ました』なんて言われれば無理もない。

 ウルゼルさんは私の護衛か監視かサボりかわからないけど、部屋を出ることなく入口近くに立っていた。


 メイドさん達が来るまでの間、シャルロットとイチャイチャして過ごした。


 ●


 メイドさん三人に風呂に入れられ、柔らかい布で全身を磨かれた。身体にはバラの様な香油を塗られ、ツヤツヤのピカピカに仕上げられたあとはお着替えだ。

 帝国ではコルセットを使って細く見せるのがトレンドらしく、メイドさんが私の胴体をコルセットで締め上げた。一生懸命紐を引っ張り魅力的なくびれを作ろうとし、最終的には私の背中を足で抑えてまで紐を引っ張った。三人がかりで、だ。

 流石にやり過ぎだと思ったのか、ウルゼルさんは慌てていた。しかし安心して欲しい。私の肉体をコルセットで締められるとお思いか?

 笑止! アダマンタイトすら砕く私の肉体を獣の革かなんかしらないが、そんなもので締め上げられるはずがなかろう!


 涼し気な表情で手を広げる私と、顔を真っ赤にして紐を引っ張るメイド衆を見てウルゼルさんは笑っていた。


 そもそも私は細いのだ。コルセットなんか無くても十分魅力的だ。確かにエマちゃん程豊満なおっぱいはないけど、ちっぱいならある。

 鏡の前で胸をペタペタさわる私を見て、ウルゼルさんが肩をポンと叩いた。


「これからだ、これから」


「うっさいわ!」


 今度ウルゼルさんが金属鎧を着てたら、おっぱいの形に曲げてやる。ラバースーツみたいにしてやる。


「でも、ドレス姿は似合ってるぞ。平民の出だと聞いていたが高貴な生まれに見える。特にその鋭い目がプライドの高いお嬢様っぽいぞ」


「これねー。お父さん似なんだけど結構冷たい印象受けるよね。でも似合ってるって言ってくれてありがとう!」


 私はにぱっと笑ってみせた。


「あ、あぁ」


 自分で言うのもなんだけど、ウルゼルさんの言うようにドレス姿は結構似合っている。まだまだセクシーとは言えない迄も、大人と子供の狭間で揺れ動く曖昧な感じが蠱惑的だろう。

 

 オフショルダーで首周りと肩の辺りはスッキリとしたデザインで、スカートはフィッシュテールスカートになっている。

 色は白が基本で、裾へ向かうほど青色が着いている、全体的に爽やかな色合いだ。上半身の白は青い小さな宝石が散りばめられ、青と白がメインカラーになっていた。

 素足を晒すのはコチラでもあまり良くないのか、タイツの様なものが膝上まで覆っていて、大きく動くとちらりと見える太ももの素肌が凄くエッチだね。

 鞭を持って見下せば尚更似合うと思う。我ながら少し悪役っぽい目付きだよ。


「エマちゃんとリリにも見せたかったなー」


「そのドレスはそのままプレゼントするそうだぞ」


「ほんと? 太っ腹じゃん」


 帰ったら皆でパーティーでもしようかな。硬っ苦しいのは一切抜きの完全身内だけのお友達パーティー。パーティーというよりはたまには皆で気合い入れておめかししませんか? のコーナーだね。エマちゃんのドレス姿も見てみたい。


「ウルゼルさんはドレスに着替えないの?」


「私は騎士だからな。団服が正装だ」


「ずるいね。あと私パーティーの作法とか知らないよ?」


「安心しろ、今夜のパーティーは格式ばったものじゃない。メンドーな純血派は何か言ってくるかもしれないが、そしたら無視すればいい。陛下も礼節を重んじる様なお方でもないしな」


 ウルゼルさんは肩を竦めてそう言った。でもまぁ念の為準備はしておいた方がいいだろう。


「手袋の予備とか貰える? これだと二人までしか処せない」


 私は二の腕ら辺まである長い白い手袋を、オペを始める医者みたいに見せつけた。モンテルジナ式交渉術というものを見せてやろう。


 ●


 ウルゼルさんもモンテルジナの決闘文化は知っていたらしく、手袋は渡さないと言われた。なんなら付けてた奴も取り上げられた。


 日が落ちて、いよいよパーティーが始まるそうで、私はミニサイズになったゴレムスくんと手を繋ぎ、シャルロットを腕に抱きながらパーティー会場へ向かって歩いている。この子達は表向き私の護衛だ。

 ミニサイズのゴレムスくんは、少しかがまないと手を繋げないがヒールを履いてるからそれもやりにくい。ちょっと不格好な体勢で歩いていると、ゴレムスくんは片手の長さを調整してくれた。紳士的だね。


「大丈夫だとは思うが、その子たちが暴れたりしないように頼むな?」


「大丈夫だよ。うちの子達は優しいから。危害をくわえたりしなければ襲わないよ。逆に言えば危害をくわえられたら黙っちゃいないけどね」


 主に私が。バカにされるくらいならまだいいけど、まるで敵のような扱いを受けようものなら、お望み通り敵になると思う。

 流石にサカモトはパーティーに参加出来ないから、訓練場でお留守番だ。配慮してくれたのか、篝火を焚いてくれて真っ暗にはなっていなかったから有難い。

 帝国のお城は武骨な雰囲気の割に、結構細やかな気配りがされてる気がするんだよね。ドレスの用意とかメイドさんの手伝いもそうだし、ドレスのプレゼントとかもさ。

 突然の来訪にも関わらず、スピーディーな対応だったのも、帝国ではモンテルジナよりも王家の力が強いのかもしれない。こうしなさい、はーいってテンポ良くいけるのかもね。


 そうこう考えているウチに、大きな扉の前にやってきた。

 ウルゼルさんが私の顔を見たので、私は頷いて答える。扉の脇にいた騎士が扉をゆっくりと開けた。


「モンテルジナ王国よりノエル様、並びに第二騎士団所属ウルゼル・ロイデンシュタール様、ご入場です!」


 そんな態々告知しなくても……そう思った私の心境などお構い無しに、ウルゼルさんは会場へと歩き出した。


 広い会場にはたくさんの騎士や貴族っぽい人達がいた。壁には黒い狼のような物が描かれた大きな旗が何本も吊るされている。恐らくは帝国旗か何かなんだろう。

 会場の左右には長いテーブルが置かれ、その上には所狭しと料理が並べられている。そして会場全体を照らす大きなシャンデリアがキラキラと光っていた。

 帝国のお城では珍しい、贅の限りを尽くしたような会場に少し面食らったよ。


「これは立食パーティーって感じ?」


「あぁ。自由に取ってもいいが、気品のある者は給仕に声をかけて取らせる」


「それはつまらないよ。どれにしようかなーってトングをカチカチ鳴らしながら選ぶのが醍醐味でしょ!」


「わからんでもない。それなら早速行くか! それと食事中の者には話しかけないのが作法だから、誰かに声をかける時は一応気をつけた方が難癖をつけられにくいぞ」


「なるほど。簡単に実践できるような作法なら教えて貰えると助かるよ。堅苦しくなくていいとは言っても、無法者にはなりたくないしね!」


 私達は会場脇のバイキングへと向かった。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 手袋とりあげたって靴下だろうが下着だろうが投げつけるぞ!
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