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しがらみが多い

 私が王都を離れて村で暮らすのは結構厄介な問題らしい。軍事的示威活動になってしまうかもしれないとかなんとか。


「でもサカモトより強い私が村に住むのは良いのに、サカモトが住むのはダメかもって変な話だよね」


「ノエルちゃんは可愛いから平気ですけど、サカモトは強そうな見た目ですから」


「普通の人にはノエルよりもサカモトの方が脅威に見えるんですのよ」


 サカモトはデカいしダイナソーな感じでカッコイイのにね。それに人懐っこい優しい子なのに酷くない?


「王都の外に家を建てて住むのはどう?」


 王都外に家を建てるのは私も考えたけど、そんな回りくどい事するなら実家帰った方が楽だと思ったんだけどね。フレデリック様からお願いとかされても対応しやすいし。


「……ノエルちゃん。私も王都の外にお家建てて住んでくれたら安心です」


 エマちゃんが指を絡ませるように手を握る。反対の手をアデライト嬢が同じように握った。


「私がノエル様の邸宅を建てますか? ノエル様と私の家だと言えばあの父も拒みはしないと思うわ」


「なんでアデライトが一緒に住むんですわよ」


 いくらお金持ちだとしても、友達に家を建ててもらうなんて受け入れられないでしょ。それにマルリアーヴ家のお金だって死んだような顔をした領民の払ったお金だ。尚更気が引ける。


「王都に家を建てるとしたら自分のお金で建てるよ。そんなご飯奢るみたいな簡単な話じゃないし」


「でしたらお母さんに相談して安く建てれないか聞いてみますよ? セラジール商会と懇意にしてる職人さんに交渉してみるだけです。それなら良いですよね?」


「……まぁそれくらいなら良いのかな?」


 ちゃんと職人さん達に利益いくよね? というかなし崩し的に王都の外に家を建てる事になっていってるけど……まぁ良いか。レオが将来王都の学園に通うことになったら使い道も出来るかもしれないし。


「ではノエルはわたくし達から離れたりせず、王都の近くに住むってことで決まりですわね」


 全員が異議なしと頷いた。何だか流されてるような気がしないでもないけど、皆が私と離れたくないと思ってくれてるのは純粋に嬉しい。


「でも一度マグデハウゼン帝国とは話し合った方が良いと思うわ。サカモトが現れた事でマグデハウゼンも確実に調べ始めるはずよ。隠し通せるなら隠しておきたいけど、サカモトを調べれば当然ノエルに行き着くわ。引き抜きに動くかもしれないし、批判されるかもしれないし」


「なんで? 言っても私貴族じゃなくて冒険者だよ? ほとんど活動してないなんちゃってだけど」


 登録してもう何年も経ってるのに未だにEランク冒険者のままだけど、職業を名乗るなら冒険者が一番しっくりくる。ほとんど何もしてないのに経営者です、とは口が裂けても言えない。……冒険者も同じか。


「ベルレアン辺境伯家の後ろ盾を得ているし、これだけ有力貴族と懇意にしておきながら、根無し草の冒険者ですは通らないわよ。事実がどうあれ、帝国は納得しないわ」


「だからって批判は変じゃない?」


「サカモトだけでも国家間の力関係が不均衡になってるのに、調べてみたらそのサカモトを力でねじ伏せた人がいた、そんな事になれば文句のひとつも言いたくなるんじゃない?」


 文句のひとつも言いたくなるのはわからないでもないけど、それでもし私が傍若無人なタイプだったらどうするの?

 王城か帝城かわからないけど、サカモトで急襲したらおしまいじゃん。怖っ、関わらんとこ! なら理解出来るけど批判はわからん。


「ん〜……。わかんない! 国家間の問題なんて全然わかんない!」


「ノエルちゃんおいでー」


 エマちゃんが腕を広げて私を呼ぶから縋り付くように抱き着く。難しい話は辞めてくれ。


「だってさ、極端な話だけどさ。サカモト飼うのはやめてくださいって帝国に言われるとするじゃん? それに対して私が絶対に認めん! って言って手袋ぶつけたらどうするの? 極論人の世なんてお互いの合意の上で成り立つ社会じゃん。私がその気になればこの世はいつでも弱肉強食だよ?」


 手袋なんてぶつけないで初手平手打ちしたって止められないじゃん。国家反逆罪で斬首刑ですって言ったって私の首はねられんの?


「落ち着いてくださいまし。完全に獣の論理でしてよ?」


「がるるるる」


「唸るノエルちゃんも可愛いです! ヨシヨシ」


 最近世の中窮屈だ。何をするにも許可だとかなんとか、批判だとかなんだとか。私に対して締め付けが激しいぞ!


「ですからノエル様がマグデハウゼン帝国を落とすのが早いんですよ?」


「落としても管理できないよ。でも玉座の間に突撃してサカモトの許可取るのは有り。王都の外にお家できるまで帝国に行ってこようかな」


「じゃあ私も一緒していいですか? ノエルちゃんの役に立ちますよ? 荷物持ちとして特に」


「エマ!? それはもう少し待ってって」


 ベランジェール様が慌てた様子でエマちゃんを止めた。エマちゃんのモヤモヤが魔法袋みたいな事ができるから騒いでるんだろうな。専売特許が取られた様な形だもんね。

 私が気付いてないと思ってるのかもしれないけど、流石に気が付いてるよ?


 私に恩を売る為に王家が魔法袋をくれるならそれはそれでいい。願ったり叶ったりだよ。


 エマちゃんはモヤモヤで物を閉じ込めて、閉じ込めてるモヤモヤを閉じ込めるモヤモヤをスカートの中に作ってるんだと思う。マトリョーシカみたいに。

 でもそれの魔力消費がどうなってるのかは調べないとわからないからね。常に消費してるのかもしれないし、出し入れだけ消費するのかもしれない。その辺もわからないまま、私がエマちゃんに荷物を持たせる訳がないじゃん。


 ●


 ギャーギャー答えのでない話し合いをしていたら、あっという間に王都へ帰ってきた。ここまで一生懸命飛んでくれたサカモトに、御礼にたっぷり魔力をあげる。


 エマちゃんをセラジール商会へ送り、ベランジェール様は王城へ、リリとアデライト嬢は学園へと送った。


 旅の終わりに何だか難しいことを考えて気が滅入ってしまった。今日はシャルロットにゴレムスくんとサカモト、皆で一塊になって寝よう。最近は構ってあげられる時間も少なかったしね。


 その日の夜、シャルロット達みんなと一緒に、建てるならどんな家が良いかを話し合った。


 

明日、明後日はリリアーヌ視点の閑話になります。それが終われば新章です。

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