プロローグ
初投稿です。
「……エル! ノエル! 早く起きなさい! 遅れるわよ」
うるさいなぁ。今日から春休みなんだから初日くらいもうちょっと寝かせてよ……。
「ノエル一人だけ洗礼式に遅れても知らないわよ!」
「・・・・・・洗礼式? 卒業式なら昨日行ったじゃん」
「またわけわからないこと言って! みんなに迷惑かかるから早く起きて!」
うぅ……朝日が眩しくて目が開けられないから手探りで枕もとのスマホを探す。なんかやけにベッドは固いし、シーツはごわついてるし、部屋の中から変な匂いもする。土っぽいような、埃っぽいような匂いだ。
ようやく目が開けられるようになって枕もとを見ると生地の荒いこげ茶のシーツが目に入った。
――あれ? 私昨日部屋で寝たよね?
「ここどこ?」
うつ伏せのまま、少し慌てながら辺りを見渡すが見覚えのない小屋? 部屋? の中にいる。木の壁に木の床にガラスのついていない窓。そこから見える景色は田舎としか言えないような何処までも続く畑だった。
ほんとに私はどこで寝たんだと困惑していると反対側から声をかけられた。
「ようやく起きたわね。朝ご飯にするから早く顔洗ってきなさい」
そう言って少し金色の混じったような明るい茶髪の見知らぬ外国人が部屋を出て行った。
――見知らぬ外国人? 違う、あれは私のママだ。いや……お母さんじゃない……よね?
混乱する頭で色々考える。私のお母さんは純日本人で決して外国人などではないし、あんな若くて美人でもない。
私は誰だ? ――昨日高校を卒業して明日から春休みが始まると浮かれながら眠ったまでは覚えている。
私は誰だ? ――今日は五歳の洗礼式で、仲良しのエマちゃんと一緒に行こうねって約束したんだ。
そうか、私は五歳のノエルだ。じゃあこの松浦瑞希というのは誰だっけ? ――それも私だ。
わけがわからないからもう一度寝よう。次起きたときに夢なら覚めてるだろうし何か状況が変わっているかもしれない。おやすみなさい! ぐうぅ……。