第9話 元友達
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俺もリューガルドに続き暴力沙汰になっている現場に近づく。
おいおい、俺達と同年代じゃねえか。
おそらく、殴られたのは背が高く、ひょろっとした男だろう。
一方の殴った方の人数は3人。
気が強そうな、ぽっちゃり体型の男がリーダーってところか。
後は取り巻きだな。
それにしても、この歳になってもイジメかよ、ダセエ。
俺達もギーリさんに出会うまでは結構荒れてたし、群れてたというかグループを率いてたけど、いじめは絶対しなかったしさせなかった。
相手が喧嘩を売ってきた場合は別として、弱い相手とケンカするなんてダサいと思ってた。
ライブで手応えがあってからのこのしょーもない展開に、リューガルドと同様に俺もかなりイラついた。
けど、俺は怒りの気持ちを抑えて大人な対応をしよう。
私は、リューガルド君とは違うのだよ、リューガルド君とは。
「こらこら、君達ケンカはいけないよ。いじめだったら、もっといけないけど。それ以上続けるんだったら俺達も黙っておけないなー。」
「ウッセーよ。俺達の事に口だしてくんじゃねえよ。お前らは歌だけ歌っとけば良いんだよ。おいセルス、行こーぜ。」
殴られた方はセルスって名前なのね。
ぽっちゃり君がわざとらしくセルスと肩を組んで、この場所から離れようとした。
セルス君とやらは、二発一方的に殴られて観念しているのか抵抗すらしようとはしない。
「お前はそれで良いのか、やられたままで。悔しく無いのか?」
リューガルドはセルス君に問いかける。
「お前が動かないとずっとこのままだぞ。」
俺もセルス君に問いかける。
セルス君は何か思う所があるのだろう、悔しそうな顔で下を向いている。
少し震えている様にも見える。
「お前にはやりたい事があるんじゃ無いのか?そんな言葉が聞こえたぞ。こいつらに付き合ってたらその邪魔になるだけだぞ。俺達から掛ける言葉はこれで最後だ。本当にこのままで良いのか?助けて欲しかったら『助けて』と言え、俺達が助けてやる。」
セルス君、お前の意思が大事だぞ。
もしかしたら怖くて言えないのかもしれないけど、勇気を出すんだ。
一言『助けて』と言うだけの勇気で良い。
「何も無いよなセルス、ほら、行くぞ。もう痛い事はしないから、また俺達と遊ぼうぜ。」
ぽっちゃりが連れて行こうとするが、セルスは動かない。
「言えよ。後は俺達に任せろ。」
リューガルドも優しくセルス君に問いかける。
長い沈黙が続き意を決したのか、セルス君がぽっちゃり君の手を振り払った。
「もうお前とは遊べないんだクリス。前にも話をしたように、僕には夢ができたんだ。エーテルの事も黙ってた俺が悪かった。殴りたいんだったら気が済むまで殴ってくれ、けどそれも今日までにして欲しい。」
えっ、もしかして女性もこの件に絡んでるの?
ただ彼女を茶化すだけの言葉じゃ無かったの?
「ごちゃごちゃ、うるせえ。お前は弱っちいセルスのままでいいんだよ。金が無くて頭も悪い俺らに『夢』なんて無理な話なんだよ。俺が断言してやる、お前が言った『夢』なんて叶わねえ。叶いっこ無え。」
「俺の『夢』にクリスは関係無いだろ。知った口聞いてるんじゃねえよ。」
あれ、何か思ってたのと話が違ってきたぞ。
単なる弱い者いじめじゃなかったの?
隣を見たら、リューガルドは腕を組んで目を閉じて、考え込んでいる。
「じゃあ、クリスとセレス正面きってぶつかれば良いじゃねえか?負けた方は文句を言わねえルールでタイマンだ。これで良いだろ?」
そう言うと、リューガルド真剣な表情で二人を見る。
っていうか、睨んでいる。
「分かったよ、それで良いぞ。ただし一週間後、場所はこの町外れにある原っぱで良いな?それで良いよな、セルス。弱っちいセルスを昔から俺が守ってやってたんだ。俺が負ける訳無え。またいっぱい遊ぼうぜ。」
「黙らせてやるぞ、クリス。」
「じゃあ行くぞお前ら。」
そう言うと、クリスと取り巻きの二人は去って行った。
取り巻き二人の表情は少し残念そうな顔をしてた様に見えた。
「ありがとうございました。俺達の事に巻き込んでしまいすみません。」
「気にするな、良いって事よ。俺達の名前はトーランドだ。こっちがリューガルド。それよりもセルス君?だっけ、お前達の間に何があったの?」
それからセルスから、事情を詳しく聞いた。
どうやら、クリスが言っていた事は本当で、小さい頃にセルスがいじめられており、クリス達が助けてくれたらしく、それ以来ずっと4人は友達で、いつも一緒だったらしい。
しかし、セルスが親の手伝いで木こりの仕事を手伝った際に、木の卸売りに感銘を受けたらしく、今は将来の独立を夢見て、お父さんの知り合いの卸で修行をしているらしい。
気になったエーテルちゃんの件だが、エーテルちゃんは4人のマドンナ的存在で、卸の勉強の為に、苦手な計算を彼女に教えてもらったのをきっかけに距離が縮まり、現在はセルスの彼女らしい。
要は抜け駆けしたって事ね。
きっと、クリスも本気でエーテルちゃんの事が好きだったのかもしれないな。
「ところでセルス、一週間後大丈夫なのかよ?喧嘩できんのか?」
「リューガルドさん、心配ありがとうございます。喧嘩に関しては当たって砕けるしかないですね。きっとどうにかなりますよ。俺も自分の道をしっかり歩きたいですし。」
「じゃあ、俺達が教えてやろうか?俺達だって遊びながら旅をしてるんじゃない。それなりに冒険者として修行した身だ。ここで出会ったのも何かの縁だ。俺達がサポートしてやる。なあ、リューガルド。」
「そうだな、じゃあ俺が殴り方と蹴り方を教えてやる。トーランドは組んで戦う方法を教えてやれば良いんじゃねえか?」
リューガルドの奴、よく覚えてたな。
前世で飲んでた時に格闘技の話で盛り上がったっけ。
俺は中学、高校と柔道をやっており有段者だった。
リューガルドの方も護身術と体のケアを兼ねてキックボクシングをやってたっけ。
最近は剣術ばかり使っていたので、柔道は久しぶりだ。
身体動くかな?
前世でも健康維持の為に、老後にしっかりやり直したから大丈夫でしょ。
今の身体は若いし。
リューガルドの方を見たら、目が輝いてた。
あいつきっと教え魔だぞ、ワクワクしてるに違いない。
「自分は嬉しいですけど、ご迷惑じゃありませんか?」
「気にするなって、俺達も昔、旅の吟遊詩人にに助けてもらった事があるんだ。それがあって今の俺達がある。今、俺達ができる事はセルスの手助けだ。迷惑なんかじゃないよ。」
「きついからな!覚悟しておけよ!!」
「はいっ、お願いします。」
リューガルドさんえらい気合いの入りようだこと。
こりゃきつい特訓になるぞ。
一週間でどれだけ物にできるか心配だけど、やるしかない。
セルスは明日の時間を確認して帰っていった。
それにしてもギーリさん元気かな?
どこで何をしてるかな?
会って演奏を聞いて欲しいな。
いや、まだまだ後だな。
俺達は始まったばかりの身。
もっと、こちらの世界での実力をつけてからだな。
楽器もまだ1個もそろって無いし。
「なあトー。ギーリさん今どこで何してるかな?あのときのギーリさんってこんな気持ちだったのかな?また会いたいな。まだ自信持って会うまでの力はつけて無いけど。」
「おれも今、同じ事考えてた。俺達も頑張らなきゃな。」
「おう。帰ってからも練習だな。」
「だな。けどその前にフレシアだ。出ていく前に言った時間より、だいぶ遅くなってる。こりゃ面倒だぞ。リュー、任せた。」
「何で俺だよ。俺は知らねえ。」
俺達は宿屋へ急いだ。
Respect アイ・オブ・ザ・タイガー/サバイバー ボクシング映画ロッキー3のテーマソングです。書き終えた時に浮かんできました。
この曲を聞いてトレーニングを頑張っている中年の方も多いんじゃないでしょうか。やる気にさせてくれる曲です。




