第70話
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朝か・・・・
ウエッ
あー気分が悪いし頭も重い。
ここは管理本部内にあるゲストルーム。
周りを見れば、リューとクリスも俺と同くベッドに座ってぼーっとしているだけ。
まるでゾンビだ。
吐きすぎて、胃の中は空っぽ。
けど、気持ち悪さは変わらない。
夜中はトイレの奪い合い。
何度外のトイレに走ったことか。
ポーションがあったらな。
淡い記憶だけど、『最高の時間にポーションなんか要らない』みたいな事を言って、フレシアが差し出してくれたポーションを受け取らなかったんだったような。
バカだったな・・・・
こんな状況だったら普通、『二度とお酒なんて呑まない』なんて言いそうだが、ドワーフのお酒だったら今日もいける。
マジで旨かった。
種類は醸造酒と蒸留酒が1種類ずつのみ。
地下だから、原料に限りがある為だ。
翔さんによると、ドワーフが地上にいた頃はもっといろんな種類のお酒があったんだって。
料理も最高。
本当に昨日は楽しい飲み会だった。
けど一番は、なんたって翔さん。
あの人は最高のエンターテイナーだ。
話をすれば腹がよじれる位に笑わせるし、他人への気遣いというか、酒の呑ませ方が上手い。
お酒が減ったままなんてあり得ないし、減らないままもさせない。
しかも嫌な感じを相手に一切感じさせない。
翔さん前世でホストやったら凄かっただろうな。
男の俺でも常連になりそう。
というわけで、話もお酒も料理も十二分に堪能させてもらった。
カランカラン
扉の呼び鈴だ。
「おはよー、3人とも準備できた?」
「おはよう。」
扉を開け、フレシアとアビちゃんを迎え入れる。
「あんた達、まだ準備できてないの?もう少ししたら翔さんが来る時間よ。早くポーション飲んで準備して。」
遠くからやけにうるさい車の音がする。
ヤバっ、翔さんだ。
ポーションを飲んで、慌てて準備する俺ら。
良かった。
どうにか間に合った。
カランカラン
「おはよう、迎えに来たぞ。」
「はい、今行きます。」
扉を開けたら、今日の翔さんは黒い特効服だった。
「昨日はありがとうございました。」
「こっちも楽しませてもらったよ。また付き合ってくれよな。じゃあ行くぞ。」
翔さんの背中にはに大きく『喧嘩上等』と書いてある。
翔さんって、大きさは今まで見てきた妖精とそんなに変わらないけど、何故か大きく見えるんだよな。
男の背中だよな。
修羅場をくぐってきた背中だ。
というわけで、俺達は階段を降りて大会議室に向かう。
「昨日言った通り、あいつらはお互いにいがみ合ってるが、それぞれは、好きな事に一直線なだけの、気の良い奴らなんだ。」
死者を出した10年前の大抗争。
未だに種火が燻る労働者同士の対立。
翔さんには、北坑道、南坑道、加工場街の3者がまとまってくれたら、トップの座をドワーフに譲る構想があるそうだが、定期的なトップ同士の話し合いですら、危なっかしい状況らしい。
そして今日は、そのトップ同士の話し合いの日。
今日の内容は、仕事の成果報告と今後の見通しについて、あとイベントの打ち合わせだ。
大会議室の前に着く。
「何も無いとは思うけど、何かあったら俺が守ってやるから安心してくれ。あと、例の件は頼んだぞ。」
「わかりました。こちらこそ、お願いします。」
翔さんの表情が変わり、眼光が鋭くなる。
翔さんが呼び鈴を鳴らした。
「入るぞ。」
勢いよく扉が開く。
「「「「「「おはようございます。」」」」」」
異形のドワーフ達が座っていた椅子から立ち上がり、頭を下げる。
長テーブルが四角に並べられており、上座以外の3方向にそれぞれ2人ずつ並んでいる。
右手には、ねずみ色の着流しを着たドワーフ。
左手にはスキンヘッドで、デニムにタンクトップのドワーフが座っており、肌には黒の濃淡で描かれたタトゥーがびっしりと入っている。
そして下座にはグレーでストライプが入ったダブルのスーツに中折れ帽のドワーフ。
それぞれゴツい。
まるで岩石みたいな体つきだ。
何?この光景。
危ない人達の集まり?
「おはよう、座ってくれ。」
座ると始まる睨み合い。
とにかく会議室の空気が重い。
視線が突き刺さるように痛い。
「この方々については後程。では会議を始める。まず最初の議題は・・・・・」
この風貌での会議ってどうなの?って思っていたが、会議は至って真面目だった。
それぞれが張り合うように報告していたのはご愛敬だろう。
「というわけで、次の議題は祭りについてだが・・・・」
10年前の大抗争の翌年から始まった『祭り』は別名『席争い』ともいわれる、会議で座る場所を巡る争いだ。
みんなが目指すのは当然、上座。
つまりリーダーだ。
翔さんによると、内容は100人でする綱引きとタイマン。
まず各坑道と加工場街、総当たりで綱引きをして、勝者のリーダーが翔さんとのリーダーをかけたタイマンするらしい。
3者が1勝一敗で並んだ場合は翔さんの不戦勝で、会議の席も上と下座の二列に変わるとか。
そもそも、綱引きといっても単に綱を引っ張り合うだけではなく、綱を引き役、相手を邪魔する役に分かれての喧嘩綱引きで、禁止なのは目潰しと首絞めのみ、綱引きの時点で相当な怪我人が出るらしい。
因みに翔さんは10年間負け無し。
翔さんって妖精だよね。
あの体でドワーフとタイマンをするだけでもすごいのに、このメンツとやって勝ったのかよ。
翔さんの背中が大きく見える訳だ。
「・・・・というわけで、次の議題に移る。祭りについてだが、準備は3者が協力してするようにな。毎年言っているが、言い争いが起こった時点で祭りは中止な。」
「「「「「「ウッス。」」」」」
「俺からの提案だが、祭りを盛り上げる為に今年は前夜祭と後夜祭をやろうと思う。今日ゲストを呼んだのはそのためだ。この方々はCO・RYUっていうロックバンドで、上の世界では少しは名の知れた存在らしい。このCO・RYUに前夜祭と後夜祭にライブをしてもらって、祭りを盛り上げてもらおう思う。俺は曲を昨日少し聞かせてもらったが、かなり良いぞ。これは俺からのプレゼントだ。拒否は受け付けねえ。当日を楽しみにしておいてくれ。あと、前夜祭にはドワーフのバンドも出て欲しい。CO・RYUと俺で、北坑道、南坑道、加工場街それぞれでオーディションするから、伝えておいてくれ。日程は後で連絡する。いいな。」
翔さんの勝手な決定にお怒りのドワーフ側から、少しでも良いから俺達の歌を聞かせろという声があがったが、翔さんは『それは当日のお楽しみ』と言って、首を縦には振らなかった。
という訳で、俺達のドルラリア公演が、ほぼ翔さんのごりで押し正式に決定した。
Respect butterfly effect / fox capture plan
娘曰く「インスト曲の良さが分からない ハウスの良さが分からない」そう。自分なりに考え、スピード感があって、聞きやすいメロディーの曲が良いだろうと考え、思い付いたのがこの曲でした。とにかくピアノの疾走感が心地良いです。是非聞いてみて下さい。ちなみに娘に聞かせたのですが・・・・残念な結果でした。




