第62話 突然の・・・
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池の上に浮かぶ大きな白い光。
その光を取り囲むように、さまざまな色と大きさの光が整然と並んでいる。
見た目はまるで前世での土星のようだ。
ローツシルツ様の放つ光は、マルゴーやムートンのお母さんである妖精女王ルミタリス様の時と比べ物にならないくらいに大きく明るい。
今の時点でもう、光の中に俺らは入っちゃってるし、まぶたを閉じていても眩しかったので、今は手で目を隠している。
ということは、魔力量や魔法の威力がかなりヤバいってことか。
「え、えーと・・みんなもう大丈夫よ。ローツシルツ様に挨拶して。」
大丈夫か?マルゴー。
いつものマルゴーじゃないぞ。
完全にビビってんじゃん。
目を開けると、大おばあさまという言葉とは程遠い、細身で皺一つ無く透けるような白い肌をした、かなり美人な妖精が池の上にいた。
見ただけでわかる、この人怖い。
表情に感情がないし、雰囲気も極寒。
ピーンとこの場の空気が張り詰めている。
マルゴーとムートンは既に俺達の前に出て片膝をつき頭を下げている。
慌ててそれに従い、片膝をつき頭を下げる俺達。
「マルゴー、ムートン、そして皆さん、ようこそいらっしゃいました。」
念話同様、冷たい声。
眉毛一つ動きもしない。
能面みたいだ。
警戒されているのが何となくわかる。
「ロ、ローツシルツ様・・・あ・・挨拶が遅くなり申し訳ございません。」
「それは先程謝罪を受けたので結構です。それよりもマルゴー、この方々の紹介を。」
「あ、ありがとうございます。この・・者達は・・・」
頑張れマルゴー、お前がローツシルツ様の事を黙っていた気持ちがとーってもわかる。
今の俺でさえ刃物の上にいるような、気をぬいたら真っ二つになっちゃいそうな、そんな感覚だ。
そんな怖いおばあちゃんだったら、俺だってスルーしちゃうかも。
「初めて話をしますね、ムートン。」
相変わらず言葉が氷ついている。
初めてなんだから、もうちょっと暖かくてもいいのに。
「・・・・ぁりがとうございます。」
ほらね、話が続かない。
ビビるよそりゃ。
「それで、そなた達がこの森に来た目的は何でしょう?」
「そ、それはですねローツシルツ様・・・・」
マルゴーが、しどろもどろになりながら、この旅の経緯と目的を説明する。
『白い本』の事をどうにかはぐらかしていたのはありがたい。
「残念ですが、私も長年この森にいますが、雷の魔石の鉱山があるという話は、今まで聞いた事がありません。それでもそなた達が望むのでしたら、マルゴーとムートンをここまで連れて来てくれたお礼として、特別に結界を解いてこの森の奥まで入る事を許しましょう。ただし、マルゴーとムートンはここに残って、キッチリと教育し直させてもらいます。それが条件です。」
思ってもいない話にざわつく俺ら。
いやいや、二人共大事な仲間なんですが。
「トラちゃん、私がやってみるね。」
フレシアが小声で呟くと、顔を上げてローツシルツ様と対峙した。
「よろしいでしょうか、ローツシルツ様。」
「何でしょう?フレシア。」
「申し訳ございませんが、マルゴーとムートンは私達の大事な仲間でございます。今までこの二人にどれだけ救われた事か。この森のモンスターはかなり強く、みんなで力を合わせなくては到底太刀打ちできません。そんな中、マルゴーとムートンが抜けるのはかなりの痛手でございます。何卒、マルゴーとムートンの同行をお許ししていただけないでしょうか?」
「それは、あなた方で解決しなければならない問題です。私たち妖精には関係ありません。」
「ですが・・・・」
「以上。その話はこれでおしまいです。」
一瞬、クソバ・・違った、ローツシルツ様の体が大きくなった気がした。
威圧感ハンパない。
この場の空気も極寒から猛吹雪に変わった。
「それ以上この話をする必要はありません。」
ピシャリと交渉が打ち切られてしまった。
「かしこまりました、ローツシルツ様。私達はここに残ってローツシルツ様の教えを学ばさせていただきます。ただ、この者達が森の探索を終えたら私たちも一緒に帰れるのですよね?」
心配そうなマルゴー。
「それはなりません。ほんの少しの時間で私の教えが済む訳がないでしょう。マルゴーとムートンには私の下で時間をかけてしっかりと教育し直します。どうやらルミタリスの教育が甘過ぎたようです。いずれあの子ともしっかり話をしなければなりません。」
「そんな・・・・」
絶句するマルゴー。
「ふざけんな、バ・・・」
ムートンが小声で呟いたのが聞こえた。
「そういった所ですムートン。」
氷の刃のような言葉がムートンに飛んでいく。
「・・・・申し訳・・・ございません。」
明らかにふてくされながら言うムートン。
えっ、あんなムートン強かったっけ?
すぐにビビって謝るかと思ったのに。
「申し訳ございません。ローツシルツ様。」
必死に謝るマルゴー。
「マルゴー、ムートン、私が言ってるのはそういう所です。いいですか、もう一回言いますが、マルゴーとムートンには私の下で、妖精の歴史や妖精の在り方などを、1からしっかりと学んでもらいます。かかる時間なんて関係ありません。あなた達みたいな子供達にこそ、私たち妖精の未来がかかっているのです。」
「ムートン、ローツシルツ様の言う通りにしましょう。これは私からの命令です。」
「・・・・わかった。」
マルゴーにもふて腐れるムートン。
「・・・・・・ローツシルツ様、一つだけお願いがございます。」
「何でしょう?」
「この者達だけでこの森で生き抜く為には、魔力が足りなさすぎます。それだけでもお考えいただけないでしょうか?」
「そうでしょうね。あなた達が抜けたら、全滅も時間の問題でしょう。マルゴーとムートンの仲間らしいですし、特別に私から『加護』を与えましょう。これでマルゴーとムートンが抜けた分を補えるはずです。」
ローツシルツ様の体が再び光り、その光が俺達の体を包み込んだと思ったら、スーッと体の中に入っていった。
血流が元気になった感じ?
いや、明らかに体の中にエネルギーを感じる。
魔力が沢山あるってこんな感じだったのか。
ということは、いままでマルゴーとムートンに結構負担をかけてしまっていたのかもしれないな。
「マルゴー、ムートンお前らの負担、大変だったろ。」
「大丈夫よ、そんな事ないよリューガルド。」
「これ預けておく。」
そう言うと、リューガルドはギターのピックを二人それぞれに渡した。
「大事なピックだ、絶対に返してくれ。できるだけ早くな、頼むぞ。」
二人が泣きそうだ。
「マルゴー、ムートン、すまない。俺達、今まで二人に負担をかけてしまっていたかもな。勉強が終わったらまた俺達の元へ戻ってこいよ。いつでも待ってるぞ。ムートン、お前が愛情を込めて整備してくれた魔道具は、お前が帰って来るまで、俺達が責任を持って整備しておくから安心してくれ。二人とも頑張れよ。」
「うん、頼んだよ。」
無理して笑うムートン。
「魔道具・・・」
一瞬、ローツシルツ様がそう言った気がした。
パッと顔を見てみたがやはり表情は変わっていない。
気のせいだったか。
フレシア、クリス、アビゲイルもそれぞれ別れの挨拶をすませる。
アビちゃんが感極まって号泣すると、フレシアとクリスもつられて号泣。
俺とリューはどうにか我慢できた。
二人ともかなりヤバかったけど。
「マルゴー、ムートン行きますよ。」
「「はい。」」
妖精達の光が池の中にゆっくりと入っていった。
Respect Fan-Tas-Tic, Vol. 1/スラムヴィレッジ
このグループはヒップホップレジェンドの一人であるJAY DEEが在籍していたヒップホップグループのファーストアルバムです。まー濃いこと。まだそこまで市民権を得ていない90年代のヒップホップのもつアングラ感満載のこのアルバム。まるで濃い芋焼酎のお湯割りのようです。万人受けはしないかもしれませんが、チャレンジしてみる価値があるアルバムです。中毒性ありますよ。




