第54話 ナイスアイデア
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では宜しくお願い致します。
『好きになる事に年齢は関係ない』
『好きこそものの上手なれ』
この2つの言葉がある。
この言葉は真実だ。
俺達が、ここの患者にラップを教えてからしばらくたったが、この施設の殆どの人がラップを楽しむようになった。
時間が空くと気がつけば、職員を含めた施設のみんなで、会話や単語で韻踏み遊びをしている。
強いのは子供たち。
やっぱ若いっていうのはそれだけで才能だ。
吸収するのも早いし、それをすぐに使いこなす。
その証拠に、何人かが歌詞を書けるようになってきた。
しかし、大人も黙っちゃいない。
歌詞を書けるようになってきた大人も数人いるが、彼らの韻の踏み方にそれぞれこだわりを感じる。
こういうところは、さすがは大人といったところだろう。
ビート担当のグスローフさんも、リュートの指導に加えてパーカッションの指導ととても忙しそうだが、表情はいきいきとしている。
今回は俺達(特にクリス)にとっても、とてもいい経験になっていると思う。
グスローフさんが刻む、昔から伝わるシン国のビートが、非常に個性的なのだ。
90年代のヒップホップともドリルミュージックとも違うビート。
前世で例えると、シン国のビートはアフリカのものに近いだろう。
特徴的なパーカッションの使い方と速いテンポのリズム。
このビートを聞いていると、自然に腰でリズムをとってしまう。
グスローフさんを手伝っているリューとクリスは、オーブリーの家に帰ったら防音室でこればかり練習してるし。
俺達の今後に多大な影響を与えるに違いない、大切な出会いだ。
このリズムを取り入れたラウドロックなんてのも良い気がする。
早速、今晩オーブリーの自宅にある防音室のセッションで話をしてみよう。
そういえば、このリズムをここで初めて聞いたなと思い、グスローフさんに聞いてみたが、やはりランスーク教の影響だった。
ランスークの礼拝に使われる音楽が、国王がランスーク教に入信したことで、昔から伝わる音楽を駆逐していったようだ。
クリスは今回、意外な才能を発揮した。
ラップが上手いのだ。
ラップの評価基準として、リズムの乗り方や韻の踏み方、ストーリーテリング(物語を伝える事)の上手さなど、いろんな基準があるが、クリスはストーリーテリングがとても上手なのだ。
韻の踏み方こそシンプルだが、彼のラップを聞くと、彼が思い描いている事が、まるで芝居を見ているみたいに頭に浮かび上がってくる。
クリスのラップを取り入れた曲を作ろうかとも思ったが、ライブでドラムを叩きながらラップするのもな・・・・
「ドラムマシンほしいな・・・・・」
そう呟くとポケットの中にいるムートンが反応した。
ポケットの中でずっと、俺を叩いている。
(どうした?ムートン。)
妖精の存在がバレてはいけないので、俺は急いでトイレに駆け込んだ。
「悪いムートン、暇かもしれないけど、頼むから大人しくしておいてくれ。」
ムートンがポケットの中からが小声で呟く。
「僕達はじっとして隠れるのには慣れっこだから大丈夫。それよりもドラムマシンって何?」
「そうか、それね。ドラムマシンっていうのは、ドラムの音が入っている機械だよ。いくつもパッドがついていて、パッドを叩けばハイハットやスネア、バスドラの音が出てくるんだ。演奏を覚えさせて自動演奏する事もできる。そんなやつだよ。」
「へえー面白そうだ。ありがとう、じゃあね。」
ムートンの目が輝いていた。
恐らくムートンはドラムマシンの開発に着手しただろう。
ムートンがポケットの中で、ワクワクしながらドラムマシンを想像する姿が目に浮かぶ。
ドラムマシンできるといいな。
頼むぞムートン。
そうか、クリスがラッパーで俺がDJ、ギターとベースがそのままのグループでも活動しようかな。
だとすれば、ドラムマシンだけではなく、サンプラーやDJセットもあったらいいな。
帰ったらムートンに相談してみよう。
きっと嫌とは言わないはず。
ゆくゆくはここのラッパーをプロデュースできたらいいな。
今、俺達が表立って活動したら、オーフェリエの俺達だってバレるかもしれないから、動けないけど。
そんな時代が来るといいな。
そういえば、オリジナルドリンクの制作だが、苦労しているみたいだ。
フレシアがここ最近、ズーンと重たい顔をしている。
リーダーがそんな感じだから、アビちゃんやも浮かない顔をしている。
そんな中、オーブリーとシェルリーさん夫妻は製造所と人員の確保ができたそうだ。
シェルリーさんもオーブリー楽しそうに、新事業の件を話し合っている。
どうやらここの住民にも、新しい働き口ができるという事で、けっこう喜んで協力してくれたそうだ。
という事はオリジナルポーションをどのようにして準備するかだな、と思いその件をフレシアに聞いてみたが、オリジナルポーションを薄めて、こちらに持ってくる段取りの手配は済んでいるとのこと。
後は味だけなんだって。
さすがフレシアとアビちゃんの、事業立ち上げ最強コンビ。
けど、味が一番大事だもんね。
もうちょっと頑張ってくれ。
「ちょっと休憩いかないか。」
リューガルドが珍しく誘ってきた。
オーブリーとシェルリーさん、フレシアと一緒に休憩所で休憩することになった。
「フレシア大丈夫か?」
リューガルドさすが。
優しいねぇ。
「・・大丈夫。ありがとう。」
「そうよね・・・・・・フレシアとアビちゃん最近暗いわよね・・・・・そうだ、今日はみんなでパーっと飲まない?フレシアとアビちゃんには気分転換が必要だし。っていうか、ソレ以外の段取りは、ほぼほぼついてる訳だし。ねえ、シェルリー。」
「オーブリー、ナイスよ。飲む場所は私に任せて。けどオーブリーは飲んじゃ駄目。あんた、私の前でまともでいられた事が無いじゃない。あっそうだ、グロル酒作っておいたんだった。あんたがずっといなかったから忘れてた。それを絶対に飲むと約束してくれたら飲んでも良いわよ。」
「か、勘弁して〜、気を付けるから。あれすごく苦いんだもん。ずっと口の中に苦さが残るし。」
「ねえ、そのグロル酒って何なの?」
俺もグロル酒?って思った。
リューも不思議そうな顔してるし。
「そうね、貴方たちは知らないよね。『グロル酒』って私の故郷に昔から伝わる薬酒なの。飲み過ぎやお腹の調子が悪い時に飲むのよ。何でもいいから強めの蒸留酒に薬草を漬け込むの。私の家にあるのは年代物だから効くわよ〜。かなり苦いかもだけどね。」
「ああ、イ◯ーガーマイスターとか、◯ンダーベルグみたいな物か。味は違うだろうけど。」
「俺は断然、養◯酒派だ。飲む前にはウコ◯の力。お酒じゃないけど。」
じゃあフレシアは?と思って見てみたら、フレシアの目がキラキラしていた。
「そうよね・・・・美味しくなくても良いのよ・・・飲めればいいの、飲めれば。ちょっとだけで甘くしようか・・・・アルコールは子供にも飲ませたいから駄目ね。みんなありがとう。もしかしたらいけるかも。シェルリー、そのグロル酒作り方教えてもらえる?」
「当然よ。今晩はみんなでグロル酒を試飲してから飲みに行くという事でいいわね。」
「「「「オー」」」」
試飲が嬉しそうなのはフレシアだけだった。
Rspect 強風オールバック/Yukopi
ユーチューブで突然おすすめに上がってきたのですが、原因は娘のようです。リコーダーの音って可愛くて良いですよね。栗コーダーカルテットを思い出してしまいました。娘おすすめのボカロの曲を聞いてみると、ポップなものからマニアックな音作りなものまで色々あり、ボカロがヒットチャート(古いかな?)を席巻する日も近づきつつあると思いました。




