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第53話 させてみよう。

大変お待たせいたしました。明けましておめでとうございます。今年最初の投稿です。今年も宜しくお願い致します。

オーブリーとアビちゃんはシェルリーさんと一緒に、新プロジェクトの準備に、街に出ている。


どこからか、怒鳴り合う声が聞こえる。


「おい、これは俺の物だぞ。」


「馬鹿、ふざけんな。俺がつかってんだ。カスが。」


あーあ、また喧嘩が始まった。

今回は、元重症と元軽度の子供同士の争いだ。


どうやら薬物中毒の患者は大人子供関係なく、我慢があまりできないらしい。


毎日何処かで喧嘩があるので、慣れっこになってしまった。


やはり薬物依存の患者は、何かに『依存』してしまい易いのだろうか?


グスローフさんはというと、三日前にリューガルドから片手奏法を教えてもらってから、ずっと片手奏法の練習をしている。


リューガルドも時間が空けば、グスローフさんの所に行ってアドバイスしている。


元々弾いていただけに、上達が早い気がする。

形になっていくにつれ、少しずつギャラリーも増えていっている。


人間、目標を持って本気で立ち向かえば、案外上手くいくのかもしれない。


しかし今の所、片手奏法から繰り出される音は、リュート本来の美しいサラサラと流れるような音ではなく、一音一音が粒立っていてエッジの効いた音になっている。


なんだろうこの響き、聞いた事があるような・・・・


そうだ、前世での『ファンク』に近いんだ。 

楽器の違いから、フレイバーの違いこそあるがたしかに『ファンク』だ。


喧嘩?・・・・ファンク・・・・喧嘩・・・・ファンク・・・・・


えっ!!


ラップいけんじゃねえの?

歌いたい奴は歌えばいいし。


患者の社会復帰に向けてのリハビリや、啓蒙活動にちょうど良さそうだ。


ということは・・・・・・・・・・


ラップといえば楽曲も魅力だが、患者の言い争いが多いこの施設では、フリースタイルバトルだな。


ま、どうやってそこのレベルまで持っていくかだけど、実現すれば、かなり面白そうだ。


ここの患者さんには、ドラッグ、喧嘩、貧困、苦労・・・など、反骨精神をくすぐるネタはいっぱいあるし。

そういう意味では、ネタには困らないだろう。


形ができてきたら、施設を出て街角でライブをしたいな。


自身の経験を伝える事で、薬物の怖さをはじめ、他多くの事を、住民に伝えられるはずだ。

住民の反応も見てみたい。


思い立ったら吉日。

俺は、施設のスタッフリーダーとリューガルド、クリスを呼んで、考えを話す。


みんな喜んで賛同してくれた。


俺達3人は許可をもらって、スタッフが休憩に使っている裏口の小広場で準備する事にした。


「じゃあ俺は、何か叩ける物を探して来るっす。」


クリスが施設に入っていった。


俺はラップの歌詞、リューガルドは簡単なビートの制作に取り掛かる。


正直言って、俺もリューガルドもラップはあまり上手くはないが、この世界にラップというスタイルがないので問題はないだろう。


よし、俺は歌うようにラップするスタイルでいこう。

歌も混ぜれば、歌の上手な人にも受け入れやすそうだし。


それにしても、韻を踏むのは難しい。

前世で、あまり意識して歌詞を書いてなかったもんな。


まずは、言いたいことをリズムに乗せて伝えるのが大事だ。

韻の踏み方は、ラップが定着すればラッパー達が進化させていくだろう。


リューガルドの方は、ボチボチ進んでいるようだ。


あれ?

前世で聞いた事があるようなフレーズが聞こえてくる。

って、日本語ヒップホップクラシックじゃねえかよ。


「リュー、何でこの曲を知ってんの?」


「D-LARGEのだろ。このビート好きなんだ。日本に遊びに行った時に、偶然に共通の知り合いがいて、連れて来てくれたんだ。聞くと、小さな頃からずっと俺のファンなんだって。それから、ライブにも遊びに来てくれたし、あいつが出すアルバムのイントロを一緒にやる話がすすんでたんだ。けど、その前に奴が病気で・・・・・一緒にやりたかったな・・・・・このビートはあいつのビートの中で、俺の一番のお気に入りなんだ。何個か既にビートの原案があるが、このビートが最初がいい。最初にトーからこの聞いたときに、ピンと来たんだ。」


「へーっ、そうだったんだ。前世で俺と知りあったのは確か、D-LARGEが亡くなった後だったもんな。俺も一緒に飲んでみたかったな。わかった、それで行こう。」


しばらくするとクリスが帰って来た。


「見つけたっす。面白いっ音が鳴るっすよ。」


と言って、両手に抱えてきたのは大きめの壺と、大きめバケツと木の棒だった。


叩いてみると確かに面白い。

壺はコンガ、バケツはパーカッション代わりに使えそうだ。


試しに合わせてみると、なんとなく形になった。


よし、みんなを集めてやってみよう。


ちょうど天気が良いので、外の広場にみんなを集めた。


みんなは何があるんだろう?って感じの表情だ。


「みんな、集まってくれてありがとう。ちょっと思いついた事があるんだ。まずは聞いてくれ。」


手拍子を促す。


リュートらしからぬ、エッジの効いた音が響き、壺から心地良いリズムが生まれる。


まずは俺が一曲ラップを披露した。

日頃の感謝の気持ちを歌詞にしてみた。


反応はボチボチというか、ほとんどの人達は初めて聞く歌唱法に呆気にとられている。

一部だがノリが合うのか、リズムをとっている人達もいる。


一曲終えると、ボチボチの拍手があった。

上々のスタートといっても良いだろう。


「こんな事もできるんだ。」


次は俺とリューガルドのバトルスタイルだ。

敢えて同じビートでいく。


テーマは『どっちがすごいか』だ。


俺とリューガルドが向かい、にらみ合う。


会場がざわつく。


手拍子を再び促すと先程よりも大きくなった。


みんなが期待をしている目をしている。


まずは一発かましてやろう。


♪おいリュー 今のうちだぞその余裕 俺の歌で輝くその腕h 俺がいなけりゃただの影 〜~~~ 〜~~~♪


♪トー お前が言ってること そのまま返すよ、ただの戯言 〜~~ 〜~~~~~~ ♪


リューガルドが返すと大きな歓声があがった。


ショーアップされた他人の喧嘩は楽しいものだ。

みんなが、俺達からつむぎ出される言葉に反応している。


「終〜了。」


クリスが俺らのバトルを止めた。


会場から大きな拍手が起こる。


「ありがとうございます。皆さん拍手を止めて下さい。ではどっちの言い分やリズムの乗り方が良かったか、皆さんに拍手でジャッジしてもらいたいと思います。トーランドが良かった人。」


パチパチパチパチ


「じゃあ、リューガルドが良かったと思う人。」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


「この勝負、リューガルドの勝ち。」



おお〜


観客から大きな歓声があがった。


くっそーっ、負けたか。

こんなバトル?でも負けると悔しいな。

まあいい。

肝心なのはここからだ。


「これは俺が小さな頃に流行った『ラップ』って遊びだが、みんなやってみないか?思った事をリズムに乗せて他の人に伝えるんだ。ルールは一つ。なるべく韻を踏むこと。俺らのまわりでは、韻を踏めば踏むほどカッコいいってされてたんだ。それ以外は自由。内容は喜怒哀楽何でも良い。歌っても良い。できればドラッグの現実についてラップしてもらいたいが、そこは任せる。ビートは最初のうちはリューガルドがするけど、パーカッションの指導も含めてグスローフさん頼みます。リュートを一本置いておきます。ラップの指導は俺がするから、いつでも聞いてきてくれ。」


「俺、やってみたい。教えて。」


「俺も。」


「僕も。」


「私も。」


真っ先に反応があったのは、やはり子供たちだった。


それを見つめるグスローフさんの優しい目が印象的だった。

Respect Number_i/GOAT

最近どハマりしている曲です。エッジのきいたビートにカッコいいラップ、ダイナミックなダンスと色々と良いところがごちゃまぜのナンバーです。アイドルというフィルターを取っ払って聞いていただきたいナンバーです。

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