第52話 驚きの・・・
このページまでお越しいただき誠にありがとうございます。今年最後の更新です。また来年もよろしくお願い致します。
俺達は二人一組になって、ベッドの患者に食事の介助にあたる。
俺達は職員の人とペアーを組む。
食事の介助は慣れない作業なので安心だ。
食欲は動物の本能だけに、食べ物を見ると比較的大人しくなる気がする。
スプーンを口元に持っていくと、震えながらも口を開けてくれる。
俺らのポーションは食事の水代わりに出すことになっており、俺はポーションを飲ませる係だ。
ポーションの件はシェルリーさん以外には、オーブリーが長い旅をして、ようやく手に入れたエルフに伝わる秘薬として、提供するという事にしてある。
「はいグリーンさん、飲み物ですよ。今日は味がついてますからね。びっくりしないでくださいね。トーランドさん、ポーションを飲ませてもらえますか?」
俺は、コップを患者の口元に持っていき、ポーションをゆっくりと流し入れる。
グリーンさんは顔をしかめたが、飲んでくれた。
顔の血色が良くなった気がする。
「顔色が良くなってますよ、グリーンさん。良かったですね。秘薬が効いてますよ、オーブリーさん!」
職員の人が嬉しそうだ。
他のテーブルからも歓声が聞こえる。
食事が終わる頃には、全ての患者にポーションの効果が確認された。
しかし、一回の食事で全快する訳ではなく、あくまでも患者の状態が改善されただけだ。
5日後、すべてのフロアーの患者の状態は、かなり改善された。
ほぼ、全快と言っても良いくらいだ。
顔も判別できるようになったし、たまに機嫌が良い患者が話しかけてくるようにもなった。
ベッドに縛り付けられている患者も少なくなった。
今ベッドに縛り付けられている患者は、薬物欲しさに暴れる患者だ。
やはり俺の予想通り、ポーションでは、状態異常は治せても、依存だけは対処できなかった。
現在俺達は、シェルリーさんを中心に、状態改善および今後のプログラムについて検討している状態だ。
ポーションに関しては残念ながら、絶対に口外しない約束で1回のみの提供という約束だ。
その理由は、ポーションが森の町ステルでタンカレイ卿、フルストさんと独占契約をしている為で、複数回の提供に関しては、フレシアが決して首を縦には振らなかった。
キッチリとしてるのがフレシアらしいな。
なので俺達が、このポーションが入っている“エナジードリンク『虎の穴』”のシン国バージョンを作る事となった。
そのまま虎の穴ドリンクを提供したら、ランスーク教の奴らに感づかれるといけないので、あくまでもオリジナル、味は虎の穴ドリンクを連想させないくらいに、かけ離れている味を目指す事にする。
それができるまでは手持ちのエナジードリンクを使う事になるが、シン国バージョンのエナジードリンクの開発を急ぎたい。
そうと決まると早速、フレシアとアビちゃんが、ネタさがしに街へ繰り出していった。
製造はこの施設ではなく、俺達が貧民街内に製造所を作る事にした。
そこでこの施設の患者を雇い作業させて、薬物依存回復及び自立支援をするのだ。
この形を取れば、俺達がポーションを原料にして作る事になるので、契約違反にはならない。
この件の段取りはシェルリーさんが担当を引き受けてくれる事になった。
俺達としては、シェルリーさんは昼にはこの施設、夜は酒場の仕事をしてるので、シェルリーさんの信用できる人を紹介してもらっても良かったが、本人の強い希望でシェルリーさんに担当してもらう事となった。
シェルリーさんはオーブリーのパートナーだし、貧民街で顔が広いので、職員の人選も含めて、しっかりと仕事をしてくれるだろう。
製造に関しては、フレシアが培ってきたノウハウを活かせばいいので大丈夫だろう。
後は、俺達がフレシアの指示の元しっかりと動くだけだ。
フレシアが久しぶりに生き活きとした表情だったな。
新しいプロジェクトを立ち上げるのが本当に好きだよな。
さすが元トップセールスウーマン。
アビちゃんまで、事業立ち上げとなると楽しいのか、テンションが高くなるんだよな。
ふと、グスローフさんの事が気になり、部屋の奥を見る。
グスローフさんはベッドに座って、右肩をさすりながら、遠くを見ている。
グスローフさんは重度の薬物中毒の影響で、右腕を失くした人で、身体の回復は早かったが、右腕が無いことに気がついてから、ずっと塞ぎっぱなしの人だ。
この部屋にはこういうように、自身の現実を知り、塞ぎ込んでしまっている人が多い。
「グスローフさん、調子はどうですか?」
「・・・・・」
「やはり肩は痛みますか?」
「・・・・・」
職員の人が話しかけても毎日こんな感じだ。
グスローフさんが枕元に置いてある、ボロボロのリュートを見つめ、大きなため息をつく。
リュートを弾きたいんだろうな。
けど、右腕が無いもんな。
こんな時、なんて話しかけたら良いのだろうか。
右腕を無くしたのに、音楽の話題なんてきっとタブーだよな。
実はシェルリーさんから、俺とリューガルドでグスローフさんの事をお願いされており、二人で何度か他愛のない話題で話かけているが、解決できていない。
リューガルドには策があるらしいが、ちょっと時間をくれと言ってから2日経っている。
「トー、ちょっと行ってくる。」
リューガルドがそういう残して、グスローフさんのベッドに向かっていった。
リューガルドの背中に今回へ意気込みが見える。
期待しよう。
この2日間、昼と夜に抜け出して、何やらしていたみたいだ。
リューのやつ、いたずらっ子のような目をしてたな。
あいつに期待してみよう。
「グスローフさん、ちょっと見てくれよ。実は俺も弾けるんだ。」
あいつはアイテムボックスから、補修しまくりの練習用リュートを取り出した。
グスローフさんは悔しそうな表情を浮かべて、無言でリュートを注視している。
「こいつは、いつでも俺の側にいてくれる最高の友人の一人だ。見てくれはこんなにボロボロだけどな。」
軽くリュートを鳴らす。
本番用と比べて音の粒は荒いが、優しい音が部屋に広がった。
「聞いてくれ。」
周りを見ると、かなりの人がリューガルドを見ている。
リューガルドが弾いてる割には、下手くそな音が聞こえてきた。
びっくりしてリューガルドを見かえす。
リュートは鳴っているのに、右手は
下がったままだ。
へ?
どうしてるの?
急いでリューガルドの正面にまわる。
左手はコードを押さえているが、肝心の右手はだらりと下がったままだ。
どうして音が鳴ってるの。
まさか魔法で?
そんな事は絶対にないな。
グスローフさんが驚いた表情でリューガルドの左手に見とれている。
改めてリューガルドの左手を注視する。
あーらなんて事でしょう。
3本の指でコードを押さえて、開いてる指で弦を弾いてるじゃありませんか。
何?そのテクニック。
たしかに抑えられないコードもあるだろうが、確かに弾けるぞ。
めちゃくちゃ難しいけど。
そんなの前世でも見た事ないぞ。
見てるだけでも指がつりそう。
「練習はきついけど、これだったらグスローフさんも弾けますよ。」
「お、おう。」
初めてグスローフさんが反応してくれた。
Respect /ももクロ紅白
只今ももクロ紅白視聴中。なんだか以前見たNHKの紅白よりで楽しいです。やっぱ、フルコーラスは良いですね。




