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第51話 施設内にて

このページまでお越しいただき誠にありがとうございます。大変お待たせいたしました。ようやく更新できました。言い訳になりますが、食品業界の11,12月が繁忙期でなかなか書けませんでした。今月あと1回更新予定です。よろしくお願い致します。

目の前には、両側とも鍵を使ってしか開かないドアがある。


ここから重症者の区域だ。


施設に入った俺達は、まず職員達の部屋に通され、シェルリーさんから施設の手短な説明を受けた。


施設は奥に行くほど重症な患者らしく、施設内で俺達が守らなければならない事は、『患者と目を合わせない』『話かけられても答えない』『なるべく声を出さない』の3つだ。


患者の目つきや話しぶりで、ここまで来るだけでも十分に薬物の怖さを知ることができたが、恐らくここからはもっとショッキングだろう。


できれば子供の薬物中毒者はもう見たくない。


どうにかここの患者たちに俺らのポーションが役に立てれば良いが。


ドアの前には、職員の証である緑の腕輪をした体格の良い男性が立っており、部屋の中からは不明瞭な声やうめき声が聞こえてくる。


シェルリーさんが男性職員に声をかけると、ポケットから鍵を取り出し、部屋に通してくれた。


「食事の準備をしてくるから、この部屋の現状をしっかり見ておいて。」


シェルリーさんはそう言い残すと、他の職員に俺等を任せて、部屋の奥に消えていった。




想像通り、多くの患者がいた。

いて欲しくはなかったが、やはり子供の患者もいる。


患者たちは、肌はしわくちゃで青白く、頬がコケて身体はやせ細っているが、目つきだけは異常にギラギラしている。


立って震えながら、服のポケットの中を必死に探す人。

奇声をあげて全身をかきむしっている人。

ゾンビのように徘徊してる人。

立ち上がれず床に寝てる人、這ってる人。

中腰のまま動かない人。

そんな患者で溢れかえっている。


事前に説明を受けてたし、前世でも重度の薬物中毒者に関して聞いた事があったが、実際に見てみるとかなりショックな光景だった。


この光景を目にして、悲しさ、怖さ、絶望、怒り、虚しさ、他、言葉では言い表わせられない、いろいろな感情が俺の中で渦巻く。


俺達は重たくなった足で、その奥にあるベッドルームに向かう。


その部屋には扉は無い。

部屋の前には二人の職員が立っている。


部屋からは、訳がわからない奇声とギシギシガンガンとベッドで患者が暴れている音がする。


部屋に入ると絶望しかなかった。


数え切れない程のベッドの数。

空きベッドは少なく、ほとんどの患者はベッドに縛り付けられている。


眠っている患者は少なく、ほとんどの患者が暴れているか、自分の身体を貪るように噛んだり舐めたりしている。


職員が俺たちに目線で手前にいる患者を見るように促した。


よく見ると、患者の腕の肉が溶けている。

溶けた肉の間からは骨が見えている。

足の指も2本欠落しており、ほかの足の指もどす黒く、このままほっておくと取れてしまいそうだ。


この患者だけかと思ったら、そういう患者がたくさんいた。

本当にいて欲しくはなかったが、子供らしき患者もいた。


この部屋の患者は、大人と子供の区別は身体の大小で判断できるが、もはや性別はわからない。

みんな骨と皮だけのような身体で、肌は死人のように白くしわくちゃなのだ。


患者には申し訳ないが、部屋に入った瞬間、俺にはベッドにいる患者が『人』として見れなかった。

そこにある無惨な光景としか見れなかった。

それくらいショッキングだった。


シェルリーさんによると、

ここに入った患者はもって半年、中には1ヶ月持たない人もいるそうだ。


それなのにこの部屋の患者のこの多さ。

無力感を感じている職員もいるだろう。


ここの患者にも『普通の人』だった頃があったろうに。

それぞれ患者の人生に関わってる人も多いだろう。


もしこの患者が、薬物なんかに興味を示さなかったら、ランスーク教と出会ってなかったら、もっと希望のある人生を送っていただろうに。


やはり薬物はあってはいけない物なのだ。


前世でもそうだったが、恐らく薬物への入口は『疲れない』とか『気持ちよくなれる』とか、宗教と絡めるとすれば『神の存在を感じられる』みたいなものだろう。


ハッキリ言うが、そんな薬はこの世に存在しない。前世でも異世界でも。

どんなに良いポーションを飲んでも、疲れるものは疲れるし、気持ちよくなる事は全くない。

確かに、あの世では創造主様と話をしたが、この世に戻ってきてからは、声を聞いた事がない。


そうか、少しでもいいから、知識があればここに来る人も減るかもしれない。

前世では薬物の啓蒙活動があったよな。


前世でラッパーたちが歌っていた『ストリートの現実』っていうのも、啓蒙活動の一つだったんだろうな。


そういえば重たい歌詞の曲も多かったよな。

けっこうラップは好きで聞いていたけど、歌詞の内容にドラッグや暴力てき表現が多く、共感できない部分も多かったな。


『ドラッグをやって音楽を聞くと、更に深く聴くことができる』って話があったけど、それは錯覚だ。


薬物によってデフォルメされて聞こえているだけだろう。


ドラッグをやらないと深く聴けない音楽なんてクソだ。

そんな音楽なんて聴く価値がない。


ドラッグをやらないと神様の存在を感じられないなんて・・・・そんなの神様じゃなくて邪神か悪魔の類だろう。


創造主様とあの世で会った俺が言うんだから本当だ。


そんな事を考えていると、また一人ベッドで寝ていた患者が暴れだした。


薬物中毒者か・・・・・・


そうだよな。


人として時間が流れている限り、どんな人にもより良い未来はあるはずだ。


ここの『患者』いや違う、ここに入所している『人』にも、より良い未来があってもいいはずだ。


まずはより良い未来の為に、俺達のポーションを飲んでもらおう。


薬物中毒が“状態異常”だったら、俺達のポーションの効果に期待はできる。


問題はその後だろう。


素人の俺がいうのも何だが、“状態異常”は改善できても、薬物への“依存”にまで俺達のポーションが効く可能性は低いと思う。


ポーションの効果が出ても、再び薬物に走らないためのプログラムは必要だろうな。


俺達は薬物の怖さを多くの人に知ってもらう為に、ここで見た現実を『吟遊詩人』として多くの人達に歌い伝えていかなければ。


昔の伝承、教え、さまざまな愛を歌うのも良いが、これからは『現実』『人のダークサイド』をも歌っていこう。


きっとそれが多くの人のより『良い未来に』繋がるはずだ。


後は、状態異常が回復した後の事も考えなきゃな。


隣ではリューガルドが明らかに怒りの表情でこの光景を見ている。


「おいリュー、大丈夫か?落ち着けよ。」


「ありがとう、大丈夫だ。前世のアメリカでも、治安が悪い所に行けばドラッグなんて簡単に手に入ったよ。ドラッグに手を出す奴は『俺は大丈夫さ』なんて言いつつも、自身に起きる最悪の結果を知っていたんだ。小さい頃一緒に遊んだ友人はオーバードーズで死んだし、ダチだったギタリストは薬がやめられずに悩んで鬱になり、結局自殺したよ。あいつらはあの世できっと、ドラッグに手をだした、自分が悪かったと反省をしているだろう。けど、ドラッグに対する知識に乏しいこの世界では、騙されてこうなってしまった人達がほとんどなんじゃないか?ドラッグを売っている奴らのしている事は“人殺し”と一緒だ。ランスーク教の奴らめ・・・・」


「リュー、その怒りは俺も一緒だけど、どんな場面でも冷静な行動を頼むぞ。」


「わかってる。大丈夫だ。」


自殺したって、あのギタリストね。

好きなギタリストだっただけにショックだったな。

ドラッグの噂あったもんな。

やっぱそこがあっての事か。


その横を見ると、フレシアが目を閉じて何か考え事をしており、クリスはショックで言葉を失い、アビちゃんは泣いている。


「そろそろご飯だから手伝ってもらっていいかしら。こっちよ。」


シェルリーさんが戻ってきた。


いよいよ、俺達のポーションの効果を試す時が来た。



Rspect KRS-ONE/I got next

KRS-ONEは80年代から活躍し、現在ではレジェンドラッパーの一人に数えられるラッパーです。自らを先生と名乗り、ストリートの現実を伝えているラッパーです。力強く畳み掛けるフロウが特徴のラッパーで自らプロデュースするトラックもぶっとい音です。こんなスタイルを持つ日本のラッパーは、未だに出てきていない気がします。

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