第46話 いざシン国へ
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広場での一件のあと、オーブリーは指揮官と魔道具使いを自宅で拘束後監禁し、その他全員はオデリアの国軍に引き渡した。
この拘束した2人は、数日後国軍の親衛隊が秘密裏に私服で引き取りに来た。
これですべてが終わって、ようやく音楽に集中できると安堵した俺らだったが、この出来事はそれで終了とはいかず、それから後も大変だった。
連日、国軍施設での事情聴取の日々。
俺達が加害者なの?って思うくらいだった。
また、オーブリーに報復の可能性を指摘され、事件直後は暗殺や暴漢などを心配しながら行動していたが、実際にあった報復?は地味な嫌がらせの数々だった。
店への落書き。
ドリンクショップの客前での謂われないクレーム。
“あいつらの音楽は悪魔の音楽"とか“聴くと呪われる"などの風評被害。
当初は幼稚だなとも思ったが、嫌がらせ対応や、ライブハウスとドリンクショップ共に、目に見えて客が減った事もあって、精神的な面でかなりのストレスだった。
みんなが暗い顔をしている中で、嫌な顔を見せずに頑張ったのがフレシアだ。
『ここからついて来るお客様が本当のお客様よ。』を口癖に、店内だけではなく、町中を奔走していた。
そんな彼女を見て『過去をふりかえらず、前だけを向いて走る』という思いが沸いて、俺も頑張れている。
他のメンバーもそういう思いだと思う。
最近、みんなの表情が明るくなって、活気が戻ってきた。
バラバラになったバンドの音にも、まとまりが出てきた。
音の厚みにおいては、以前よりも増してきていると思う。
そのおかげか、若い人を中心に客足が戻ってきた。
客足が戻ってきたら、クレームや嫌がらせも減っていった。
ファンが嫌な客を追い出すようになったのだ。
中には、『フレシアちゃんが嫌がってるだろ』とか『アビゲイルちゃんがかわいそう』とか具体名を出して言ってる奴もいるが・・・ファンだろうな・・・とにかく有難い。
そんな俺らだが、今はライブハウスのみ『他の町のイベントに招かれた』という事にして休業し、オデリアより更に南に位置するズブレーガという国境の町にいる。
目の前には砂の川。
対岸の国の建物が豆粒のように見えている。
そしてそこに浮かぶ巨大な船。
その船の向かう先はシンビラルグリル王国、通称"シン国“の第2の都市であるドゥルスコウだ。
これから俺らは船に乗り、シン国に入国する予定だ。
俺達の目的は、ランスーク教の現実を見る事とランスーク教の総本山の偵察。
全てオーブリーからの要請だ。
オーブリーによると、もともとシン国は長く続く王家による政治体制が続いていたが、現国王がランスーク教に帰依してしまい、ランスーク教の教皇が政治にも影響力を強めている状況らしい。
ズブレーガの町は国境の町らしく、警戒が厳しい。
船に乗る為にも、厳重なチェックを受けなければならず、船の入り口前には長い列ができている。
一応俺らは、ランスーク教の奴らに身元がばれないように変装をし、偽名を使い、吟遊詩人ではなく冒険者としてシン国に入国することにしている。
「おいおい、お前ら表情が固いぞ。リラックスしろよ。そんなんじゃ倒せる獲物も倒せないぞ。」
オーブリーが緊張した表情の俺達に言った。
思わず吹き出しそうになってしまったが、必死に耐えた。
オーブリーのこの口調、やっぱり慣れない。
リュー、クリス笑うなよ。
耐えろ。
フレシア、アビちゃんは下を向いて、少し震えている。
おいおい、笑ってんじゃん。
俺の装備に隠れているムートンも、小刻みに震えているので少しくすぐったい。
「隊長、ありがとうございます。お互い気を付けような。」
「「「「はい。」」」」
しばらく待った後、俺らはどうにか無事に船に乗り込むことができた。
最初の関門クリア。
ひと安心だ。
船に乗っている間に、オーフェリエ王国とシン国の現在の関係をしっかりと教えてもらった。
どうやら、民間レベルの交流は活発だが、政治的な面での交流は、300年前にちょっとした小競り合い程度の戦いがあった時の会談以降、全くないらしい。
オーブリーから詳しく教えてもらってだいぶ時間も経ったので、ドゥルスコウにかなり近くなっただろうと思ったが、まだ時間がかかるようだった。
しばらく船に揺られて、ようやくドゥルスコウに到着した俺達を待っていたのは、入国チェックを待つ長い列だった。
まだ船から降りる事ができないのか。
あーあ、早く船から降りたいな。
日も傾いてきたし、どうやら今日はこの町で一泊だな。
ドゥルスコウの町並みが甲板から見える。
国が違うと、同じ気候でも雰囲気が全く違うんだな。
オデリアやズブレーガでも、建物が2~3階建てと縦に
いっていたが、ドゥルスコウは多くが平屋建てで、町の広さがかなり広い。
遠くに見える、高い壁の奥にある立派な建物が領主の邸宅だろうな。
長い待ち時間。
周りの人達も疲れた顔をしている。
こんな時、吟遊詩人でいて良いんだったら、楽器を出して2、3曲披露するのにな。
まだしばらくは歌詞ノートの時間だな。
後ろを見ると、リューがエアギターをしており、その後ろではクリスがリズムをとっている。
おいおい、お前ら端からみたら怪しいからな。
まあ、俺も怪しいっていったら怪しいかもしれないけど。
その後ろでは女性組が安定のおしゃべり。
ただひとつ、俺にはオーブリーの口調が男バージョンなのが気持ち悪い。
この国にいる間はずっとこの口調なのかな?
宿屋の中では普段の口調に戻って欲しいな。
結局、俺もセッションに加わってしまった。
更にオーブリー加わり、楽しい時間だった。
周りからみたら怪しい集団だったろうな。
フレシアやアビちゃんまで離れて見ていたし。
ようやくシン国に入国する事ができた。
「変なおじさんたち~、楽しかったよ。バイバーイ。」
俺らの近くで並んでいた子供が笑顔で手を振ってきた。
「バイバーイ。」
俺らも笑顔で手を振り返す。
子供の親は俺らを一瞥すると、子供の手を引っ張って早足で離れていった。
そりゃそうですよね~。
「ちょっと、恥ずかしかったわよ。楽しんで見てた人達も多少はいたけどね。」
「姉さんには悪いけど、私もちょっと楽しんじゃってました。」
「みんないいか?今日はこの町に一泊する。宿屋に向かうぞ。」
「「「「「はい、隊長。」」」」」
オーブリーが先頭に立ち、町中を進んで行く。
道幅はこの国の方がかなり狭い。
馬車2台しか通れなさそうだ。
これでもこの町のメインストリートだ。
食べ物はズブレーガやオデリアでも見たことがあるのばかり、その点では安心だ。
あっ、大きなドーム型の建物だ。
あれは何だろうか?
オーブリーに聞くと
「あれはランスーク教の教会だ。ランスーク教の教会はみんなあの形だ。」
と教えてくれた。
見てみると、扉は常に開けられており、中に人影がちらほらと見える。
ある程度の人の出入りがあるようだ。
「ぼーっとしてないで行くぞ。宿屋までもう少しだ。」
そう言うと、
宿屋に向かって歩きだした。
「ここだ。」
宿屋も平屋なのには驚いた。
少し古いが、けっこう大きい。
宿屋に入ると、オーブリーがスムーズに受付を済ませ、店員が俺らを部屋に案内する。
オーブリーが店員の去り際を呼び止めた。
「宿主にオーブリーが来たと伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
部屋に入り荷物の整理をしているとノックがした。
「店主のワーレイでございます。お呼びでしょうか。」
落ち着いた声だ。
「どうぞ。」
ゆっくり扉が開いく。
小柄で小太りのおじさんだ。
なかなか貫禄がある。
「失礼いたします。」
丁寧に扉を閉めた。
ワーレイが一回深呼吸するとオーブリーに向かって走り出した。
あれ、乙女走りだぞ。
「久しぶりね~、オーちゃん。」
「あら、ワーちゃんも元気そうじゃないの~。」
そこには手を取り合って喜ぶ二人のオネエがいた。
Respect OZROSAURUS /プレイヤーズプレイヤーfeat KREVA
聞いてみて下さい。この二人のラップスキルは異次元です。名曲!




