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第44話 残念なセッション

このページまで来ていただき誠にありがとうございます。ではよろしくお願いいたします。

空は一面のオレンジ色。

さっきまで真上にあったお日さまが、だいぶ落ちてきた。


俺達は今、町の南に広がっている大きな砂防林の中にある広場にいる。


俺達以外に誰もいない。


みんな無言で、楽器をいじったり、ショーケースを磨いたりと、それぞれがそれぞれの事をしている。


俺は我慢できず、何回目かの同じ質問をしてしまう。


「フレシア。やっぱ聞いた場所ってここじゃないんじゃない?人なんて来ないじゃん。本当に、今日の予定はこの時間のこの場所で、大丈夫なんだよな?なんだったら、他の場所を探して見てもいいんじゃねえか?」


みんなの視線が、一番不安そうな顔をしているフレシアに集中する。


「そうだよねトラちゃん。おかしいよね。そのはずなんだけど・・・・けど・・・話に聞いてた目印の木はあれで、ここがその広場だと思うんだけどな・・・・」


「騙されたんじゃねえか?」


リューガルドはちょっと切れぎみだ。


「リューガルド、落ち着け。」


「ああ、悪い。」


「ごめんねリューちゃん。けど、騙そうとする人が前金なんて払うと思う?私だって一応、冒険者ギルドにも行って、人物とグループの確認までしたんだから。そんな事ないと思うんだけど・・・・ごめん。もうしばらく待ってみようよ。」

                         フレシアがさらに暗くなった。


「もうちょっとだけ待ってみませんか?」


「そうっすよ。来るかもっす。」


アビちゃんとクリスは笑顔を作ってフレシアを励ます。


「そうね、待ってみるのもいいわね。」


クリスのカホンに座り、目を閉じて心の中の自分と対話するように叩いていたオーブリーが手を止めて言った。


「ありがとう。」


フレシアの顔はまだ晴れない。


あれは、ライブハウスのオープンライブから5日目の事だった。


初日のライブが、轟音のロックだけを詰め込み過ぎて惨敗に終わった俺らは、セットリストに路上ライブで好評のアコースティックを増やしつつ、日々試行錯誤して、ようやく手応えがあったライブの後だった。


フレシアとドリンクコーナーで長話をしていた最後の客が出ていくと、見送っていたフレシアが店の中央に戻ってみんなを集めた。


小さなガッツポーズをして、とても嬉しそうだった。


「みんな集まって。やったわ。ライブの依頼よ。『今度、郊外の広場で冒険者仲間を集めて、合同訓練をするので、訓練修了後にライブをしてほしい』ですって。もう前金までもらちゃった。よし、こうなったらその会場で、ドリンクもガンガン売るわよ。」


もう既に、フレシアの目はお金マークになっていた。

それもそのはず、俺らCo・Ryuはライブでは苦労しているが、ドリンクは外のショップも含めて絶好調なのだ。


特に人気なのがスペシャルドリンク『虎の穴』で、注文の7割。

飲んだら元気が出るのと、ちょっと癖がある味が受けているようだ。


もう既に、新しい事に敏感な若者の間で話題になっており、表にあるドリンクショップに行列ができているのも珍しくない光景になっている。   


バンドとしても、新しい音楽の普及させる良い機会であり、販売としても冒険者にアピールする絶好の機会なので、今日は、メンバーみんなが楽しみにしていたライブだったのだ。


「トー、あれ見えるか?」


突然、不機嫌そうなリューガルドが話かけてきた。


「えっ、どこだよ?」


「どこっすか?リューさん。」


また一体何があるんだよ、リューガルド。


「はーっ。」


突然、オーブリーが大きなため息をつく。


「「どうしたオーブリー?」」


「ふふっ、なんでもないわ、トラちゃん、リューちゃん。ありがとう。」


(顔色は変えないで聞いて。みんな、ここからは念話で話すわよ。気づいてるかもしれないけど、私たち、先程から監視されてるのよね。恐らく周りを囲まれているはずだからマルゴーとムートンは気配を消して周りを見てきて。)


マルゴーとムートンが姿を消して上空へ飛んでいった。


オーブリーの指示通り、みんな顔色こそ変わらないが、この場の空気が張り詰めた。


「みんな、もうちょっと待ってみようぜ。依頼者さん達は、何かの理由で遅れてるのかもしれない。」


一応、みんながあわせてくれた。

みんなの声に感情が入っていないのがばれてなきゃいいが。


(トーランド、ありがとう。おそらく最悪の事態よ。恐らく・・・)


途中でマルゴーとムートンが慌てた口調で入ってきた。


(残念ながら、オーブリーの言うとおり、周りを武装した集団に囲まれているわ。)


(大変だよいっぱい敵いるよ。)


(だいたい400位よ。人員配置もしっかりしているから手薄い場所はないよ。みんな同じ黒い格好をしていて、誰が指揮をとってるかまではわからないわ。)


(二人ともありがとう。きっとランスーク教の奴らね。やっぱり私たちまでたどり着いちゃったか。とりあえずバンドメンバーは魔法攻撃用の楽器を出してセッションしましょ。相手からは楽器と区別つかないし。)


(みんなごめん。私がもっとしっかりしていれば。)


フレシアの顔がさらに曇った。


フレシアの暗い顔を見てると、いつも彼女の活躍に助けられている身としては、みんなで頑張って今迎えている危機を乗り越えて、いつもの彼女に戻ってもらいたいと思う。


弱いフレシアを見てると守りたくなってくるのだ。


みんなの目を見ると、みんなもそんな目をしている。


(フレシア、今は顔色変えちゃ駄目。反省はここを生きて脱出してからしてちょうだい。だいたいフレシアが引っ掛からなくても、他の誰かが、他の罠に引っ掛かっていただけよ。)


(そうよ、姉さん。私がリューさんと守ってあげるからね。ねー、リューさん。)


(俺から離れるなよ、フレシア。とりあえず四方を向いて全体攻撃からスタートでいいか?)


(リューガルドそのとおりよ。みんないい?私たちのメイン武器は機動力が良くないわ。だから、あいつらをおびき寄せて広場で全員倒すのが理想よ。逆に林の中に入ったらあいつらの思い通りよ。気をつけてね。フレシアは私たちの中心にいて、アビゲイルはフレシアの守りメインで、私たちに近づいてきて攻撃を仕掛けて来る奴らをお願い。もし魔法を使ってくる奴がいたらそいつがリーダーよ。)


(魔法使えるのは一人だけ?二人以上の可能性はないのか?)


(いい質問ね。昔と違って、魔法使いは少ないの。だから国にとってですら、魔法使いってだけで立派な兵器に値するの。あれからあいつらをずっと調べているけど、たしかにランスーク教って組織はすごく大きいけど、魔法使いを何十人も揃える力は、まだないようね。けど、ランスーク教の戦闘部隊は魔道具の扱いに精通している者が多いから気をつけて。魔道具の対応はムートンに任せるからね。ムートン頼んだわよ。)


(うん、僕にまかせて。)


(マルゴーは相手の動きを見るのと、みんなへの魔法及び魔力のサポートをお願いね。)


(了解。)


(ランスーク教の奴らびっくりするわよ。6人全員が魔法使いでしかも妖精が2人もいるんだから。まっ、知られてからの私たちの対応が大変になるんだけどね。)


「みんなー、暇だからセッションしましょうよ。フレシア、アビちゃんはせっかくだから、コーラスをやってみようか。いつもらいぶを聞いているからなんとなくわかるでしょ?」


「えーっ、嫌よ。」

「私やるー。」


俺達は、魔法攻撃用楽器を取り出し、フレシアを中心に俺とクリスが背中合わせで座り、リューガルドとオーブリーが背中合わせに座る。


アビゲイルはリューガルドとクリスの間に立っている。


この楽器配置でセッションをするなんて『誰に聞かせたいの?』って感じで、わかる人が見れば笑い話レベルなのだが、敵の中にこの不自然さに気がつく奴なんて誰もいないだろう。


(いい、私が指示を出すまでは、魔力を込めないでね。)


「じゃあ、せっかくだから、ライブでの曲順でやっていこうか。」


「「「「「「了解。」」」」」」


「クリススタートよろしく。」


クリスがカホンを数回軽く叩き、曲がスタートした。




                               

Respect ヴィエ/バーバパパ


テクノの曲です。突然YouTubeのおすすめに出てきた曲で、曲、PV共に中毒性が非常に高く、私もはまってしまいました。このジャンルの音楽って万人受けはしないとは思いますが、理解できた方が音楽生活が格段に豊かになる気がします。

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