第40話 高級メスカルとベースギター
このページまで来ていただき誠にありがとうございます。では宜しくお願いします。
みんなよほど腹が減っていたのだろうか、テーブルの上にあれだけあった料理がほとんど無くなってしまった。
しかし後に、あの有名な高級メスカル“オスクラル産の5つ星”が控えているだけあって、メスカルの減りはみんなが普段飲む量からすると明らかに少ない。
「さ~て、みなさんお待ちかねのアレを持ってきましょうか。」
オーブリーが最高の笑顔を振りまいて、イスから立ち上がり、キッチンへ消えていった。
オーブリーがキッチンから戻ると、テーブルに2本ボトルが並んだ。
「「「「「「「「え〜っ⁉」」」」」」」」
みんなが驚いた声をあげた。
一本だと思っていたら、二本持ってきたのだ。
しかもボトルの色が違っている。
一本目はビンに赤い星が5つ書いてあるビンで、みんなが思い描く“オスクラル産の5つ星”と言えばこのビンだろう。
もう一本のビンにも星が5つ書いてあるのだが、色がついてないのだ。
恐らく、星に色がついてない方は色付きよりも高いんだろうな。
普通のやつでも、一般庶民には到底手が出せないのに、あれはきっと、かなりヤバい金額だろ。
そんなの俺達に飲ませるか?
オーブリーはいったい何を考えてるんだ。
他のみんなも俺と一緒みたいで、目が点になっていて、驚きの声しかだせていない。
「久しぶりに飲み比べしたくなっちゃった。」
オーブリーがいたずらな笑顔を浮かべている。
「ねえ、オーブリー。その星に色がついてないやつは何?」
フレシアが恐る恐る聞く。
こんなに慎重なフレシアなんて、営業先でも見た事がない。
「フフッ、知らないでしょ〜。」
ビビっている俺等なんて気にもせず、得意げな顔をするオーブリー。
聞きたくない。
何となく、話をまともに聞いたら、びびって味がわからなくなっちゃう気がする。
「これはね、オスクラル産の5つ星には違いないんだけど~、熟成期間が違うの。普通のが3年熟成なんだけど、これは5年熟成なの。味はもちろん、香りの良さにびっくりするわよ。まずは普通のからね。」
やっぱりね。
ヤバいやつじゃん。
って、普通に開けたーっ!
全くためらいを見せずに、普通の方のビンを開けるオーブリー。
開栓しただけなのに、華やかで爽やかな甘い香りがほのかに漂って来きた。
なんじゃこの香りの広がり方。
普段飲んでるのとは別物だろ。
普段飲んでいるメスカルは、開けるだけでこんな香りなんてしないぞ。
みんなの前に、綺麗な琥珀色に染まったショットグラスが並んだ。
「あらためて、乾杯しようか。グラスを手に持って。」
何となくムルコフさんを見たら、グラスを持つ手が少し震えている。
ムルコフさん、俺も気持ちがわかります。
こんな体験、俺達みたいな一般庶民にはできないもんね。
「「「「「「「「「カンパ~イ。」」」」」」」」」
唇にグラスの縁をそっと置き、琥珀色を流し込む。
メスカルの華やかな香りが口の中に広がり、鼻に抜けていく。
後を追っかけて、強いアルコールが体に染み込んでいく。
旨い。
これしか言葉が出ない。
テーブルの上に広がる、みんなからの称賛の嵐。
オーブリーが嬉しそうだ。
オーブリーは、みんなのグラスが空いたのを見計らって、
「じゃあ、こっちも開けるわね。あらかじめ言っておくけど、すごいわよ、これ。まあ、好みは分かれるけどね。」
と言って、5年熟成の方の瓶を開栓した。
開栓した瞬間に、トロっとした強い甘い香りが部屋いっぱいに広がる。
みんなが「すごい」だの「何?これ」といった、驚きの声をあげた。
飲んでみたら、オーブリーの言った通りだった。
別格だった。
濃厚な甘い香りが口の中に広がると、舌先に甘さを残して、すーっとアルコールが体の中に染み込んでいくのだ。
「やっぱ、これよね。最高!どう、みんな?」
みんなが感嘆の声をあげる。
ムルコフさんなんて、泣いているし。
「おいおい、こんな高級品を俺達なんかに飲ませて良いのか?」
「良いのよ、リューガルド。気が向いただけだもん。ただ・・・・そうね、あなた達はこの二本を飲んで、感じた事があるはずよ。その感じた事を今後に活かして欲しいかな。そうしてもらえると嬉しいわね。」
ちょうど良いタイミングだ。
ベースのお披露目といきましょう。
俺はリューガルド、クリスに目配せをする。
俺は、ショットグラスに残ったメスカルを一気に飲み干すと、椅子から立った。
リューガルド、クリスも立ち上がる。
「俺たちからお礼を言わせてくれ。素晴らしいお酒と美味しい料理、ありがとうございます。そして、この前の鬼鯨の件、本当にありがとうございました。お陰で、悲願だった、ベースギターが完成しました。お礼として、ここで披露させてもらいたいんだけど、オーブリー、良いかな?」
「あら、できたの。私、楽しみにしてたのよ。遊びに行っても披露してくれないんだもん。駄目だったのかしら?って思ってたわよ。この前に虎の穴で聞いた曲やってよ。何だったっけ?ベースギターが気持ち良い曲。」
「Road to Exit だな。オーブリーが気に入ってそうだったから、真っ先にやろうと思ってたんだ。俺らの予想通りだな。」
ちょうどみんなが見やすい場所に陣取り、俺がアコースティックギター、リューガルドがアコースティックベース、クリスがカホンを準備する。
「良いぞ。」
「良いっす。」
「聞いてください。Road to Exit。」
コン・コン・コン
アコースティックギターのボディを3回叩いてタイミングを合わせる。
今日準備してきたのは、普段やってるのとは違う、前世バージョンだ。
叙情的なイントロのギターソロが美しい曲だが、なにせ難しい。
序盤なのに、手がつりそう。(苦笑)
イントロの終わりを告げる、ギターの高くて綺麗に伸びる音の後、ベースとカホンが入ってきてからが歌いだしだ。
やはりオーブリーはベースギターが好きらしく、曲にのりながら、リューガルドのアコースティックギターの演奏を注視している。
フレシアやアビちゃん、マルゴーは聞き慣れているのでいつもみたいに一緒に歌っている。
ムルコフさんは、最初こそみんなの反応についていけずに戸惑っているようだったが、次第に慣れてきたみたいで、静かに聞いてくれている。
この曲のもう一つの聞き所である、終盤の3人でのコーラスも、ここ最近、では一番うまくいったのではないだろうか。
クリスが俺達につられることなく、自分のパートをしっかりと歌う事ができるようになってきた。
ジャーン
最後のアコースティックギターでこの曲は終わりだ。
演奏が終わると、みんなが大きいな拍手で俺達の演奏を讃えてくれた。
次は予定通り、ガーナードの『ROSY』でいこう。
「聞いてください。『ROSY』。」
この曲はギターのカッティングと流れるようなベースラインが特徴的なミドルテンポの曲だ。
引き続き女性陣は練習を聞いて覚えているので、一緒に歌ってくれている。
ムルコフさんは、体を少しだけ曲にのって揺らしながら、手でリズムをとってくれている。
オーブリーは相変わらずベースに夢中だ。
オーブリーは楽器経験者なので、恐らく他の楽器とベースの絡み方を分析しながら聞いてるんじゃないだろうか。
そう思わせる位に、真剣な表情で聞いている。
曲が終わると再びみんなが大きな拍手で讃えてくれた。
「あなた達の曲、聞き始めこそ、楽器の音色やリズムに耳馴染みがなくて戸惑うけど、慣れてくると、体が勝手に動いちゃうのよね。まあ、初めて聞く人には、あまりにも耳馴染みがなさすぎて、好き嫌いがはっきり分かれるとは思うけどね。けど、私は大好きよ。やっぱり私はベースギターが好き。楽曲への絡み方が良いわ。ねえ、リューガルド。ベースギターってソロで弾いてみてよ。」
よっしゃー!オーブリーが興味を示した。
リューガルド頼んだぞ。
このままオーブリーをベースギターの世界へ惹き込むんだ。
リューガルドによるベースギターのソロが始まった。
指弾きでスラップやタッピングを駆使しての演奏は俺が見ても圧巻だ。
リューガルドの才能にちょっと嫉妬しちゃう
な。
それにしても、ベースソロって格好良いよね。
前世でもベースソロは野郎ウケが良かったもんな。
オーブリーもベースソロに見とれている。
リューガルドが演奏を終えた。
「そうね・・・・それが良いかも・・・・」
オーブリーがそう呟いた。
そんな気がした。
突然、勢いよくオーブリーが椅子から立ち上がった。
「リューガルド、私にベースギターを教えてくれない?私も演奏してみたいわ。」
オーブリーが俺を見つめてきた。
「ねえ、トーランド。ベースギターのメンバーが必要でしょ?私に考えがあるの。私がメンバーになる代わりに、あなた達は、国軍の幹部から依頼された件の協力をするの。良い考えだと思わない?」
オーブリーは満面の笑みだった。
ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ/You are the universe
アシッドジャズといえば、まずこのグループとジャミロクワイが出てくるのではないでしょうか。
車でこの曲がかかると、私と娘がなんちゃって英語で熱唱するのがお決まりのパターンとなっています。
サビが最高に気持ち良いので、是非聞いてみてください。




