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第4話 創造主様からのお願い

このページを開いて頂き有難うございます。更新遅くなりました。

よろしくお願いします。

俺は今、白い部屋にいる。

なかなか面白い人生だった。


きっかけは、高校の友達に借りた、ロックミュージックのジャンルの一つ、『ヘビーメタル』の専門レーベルのコンピレーションアルバムだった。


初めて聞いたその音は、『音の衝撃波』そんな言葉がピッタリだった。

今まで聞いていた物とは全てが違った。

そこからヘビメタを聞きまくった。

いつの間にか、俺も歌いたいという気持ちが強くなっていった。


そんな俺は、小遣いを必死に貯めて、安いエレキギターを買った。

そして、友達と16歳で最初のバンドを結成。

紆余曲折を経て3回目に結成した、俺がボーカルを務めるバンド『Corkscrew』が注目を集め、インディーズシーンで活躍、そしてその勢いのまま東京に進出した。

インディーズで3枚のアルバムを出した後に、メジャーレーベルから声が掛かりメジャーデビュー。

誰でもみんなが知っているような、大ヒット曲には恵まれなかったが、ヒット曲を2曲出すことができ、知る人ぞ知るバンドになった。


そのバンドも10年の活動後、個人活動に専念する為に解散。

ソロで活動しつつ、小さなインディーレーベルを立ち上げ、ニューアーティストの発掘にも積極的に活動していた。


ソロになってからは、イケイケの頃と比べて昼夜の生活と収入は落ち着いたが、仕事では、いくつかのバンドをメジャーレーベルへ送り出す事ができたし、プライベートでも、最愛のパートナーと3人に子供に恵まれ、87歳で死ぬまでロックに関われた、俺にとって最高にロックな人生だった。


かみさん、子供達、友人達、ファンのみんな、俺に関わってくれた人達本当に有難う、またみんなで遊ぼうな。

俺は天国で待っています。


えっ、俺が天国に行けるかよって?


確かに、若い頃はかなりヤンチャな事もしたから、ある程度は覚悟をしたが、今居るここは、真っ白い部屋だし、雰囲気も悪くない。

きっとここは天国に違いない。

けど、初めて見る景色ではない気がするのが不思議だ。

もしかしたら、前世で来た事があるのかもな。

それにしても、仰向けで寝たまま身体が動かない。

どうなるんだろ俺。


そんな事考えていると、白い壁に扉が浮かび上がり、白い装束の男が静かな足取りで入ってきた。

足元に立ったその男の顔を見て、俺は物凄くビックリした。


3年前に死んだジョンだよ絶対。

ジョン・タイター、アメリカのヘビメタバンド、『ガーナード』のギタリスト。

玄人好みのテクニックはもちろん、イケメンで、ギターソロを弾いている時の表情が、男の俺が見てもセクシーで男女共にかなり人気だった。


ガーナードが訪日した際、ジョンと知人の紹介で飲む機会があって、意気投合して翌日昼前まで飲み倒した事があった。

その後も何回か食事に行って飲み倒した仲だ、絶対覚えているはずだ。

俺だよ、俺、Corkscrewの虎太郎だよ。

俺は必死に目線でアピールする。


だがジョンは無表情のままだ。


「虎太郎さんは意識あるようですね。まずは身体を動かせる様にしましょう。」


ジョンはつぶやく様に言うと、手を叩いた。


身体にエネルギーが入って来るのが分かる。

しばらくして立ち上がった俺は、ジョンに握手を求める。


「ジョン、覚えているよな?ジョン。俺だよ、俺、虎太郎だよ。」


ジョンは相変わらず無表情で俺の握手に応えている。


「これから虎太郎さんには『ある方』に会っていただきます。しばらくここでお待ち下さい。」


ジョンは落ち着いた口調で言うと、そっと手を離し、静かな足取りで、部屋を出ていった。


何だよジョン、無視かよ。

ってもしかして人違い?

まさか、そんな事ないよね?

違ったらかなり恥ずかしいよ。


ジョンが部屋を出ていくと、部屋の壁が消えた。

ただの白い空間が目の前に広がる。

しか、遠くから壁が近づいて来るのが分った。

部屋ができるのかな?

思った通り部屋ができた。

けど、天井が無い。


天井はどうなるのかな?と思って見上げていたら、何かがゆっくりと降りてくる。

単なるロープだった。

引っ張って見た。


「はい、何でしょう?」


壁から扉が浮かび、白いダボダボの衣装を着た、白髪でボサボサ頭で黒い丸眼鏡をかけたおじいさんが入ってきた。

胸には『偉い人』と書いてある。

おじいさんは強く扉を閉める。

バン、という音がなった瞬間、おじいさんの頭に金タライが直撃した。

ガンという音が虚しく響き、おじいさんは頭を抑えうずくまる。


「痛ったー。今のちょっと高い所過ぎるよ。首が縮んだと思った。」


何もない、誰もいない上に向っって言っている。


あ然としかできない俺。

 

「なーんちゃって。びっくりしたー?」


はあ?なにこれ、ウザい。


「あなた様はどちら様でしょうか?」


「そう!何を隠そう私が、創造主じゃ。」


創造主は胸を張ってドヤ顔で言った。


まあ、そんな事もあるかもな。


創造主は表情を改めて、にこやかな顔になった。


「虎太郎よ、お主もよく頑張った。ここから見ておったぞ。」


『も』って他は誰?

さっぱりわけが分らない。


「虎太郎よ、目を閉じて真っ直ぐ立つのじゃ。合図するまで目は閉じておけよ。」


俺は言われた通りにする。


「ほいっ」


創造主の声が聞こえると同時に、パンッと手をたたく音がした。


頭の中に俺が虎太郎として産まれる前の記憶が蘇ってきた。

情報量の多さに頭が重たくなり、少し吐き気がする。

そうだ、俺は『トーランド』だ。

あの時にダリオらに殺られたんだ。

じゃあ、リューガルドは?

あいつはどうなった?


「トーランドよ、目を開けよ。」


俺は目を開けた。

やっぱり横にリューガルドはいない。


「おい、入ってきて良いぞ。」


突然、創造主の横に扉が出現し、静かに扉が開いた。

入って来たのはさっきのジョンだった。

虎太郎としてジョンと飲み明かした夜に見た、あの笑顔だ。

じゃあ、リューガルドはジョンなのか!

そりゃウマが合うわけだ。

あいつもスゲー結果出したな。


「トー、待ってたぞ!お前が虎太郎だと知った時はビックリもしたし、納得もした。またよろしくな。それにしてもさっきは堪えるのに大変だったんだぞ。創造主様が『サプライズするぞ』って言うから。」


リューガルドと俺は、握手をすると熱い抱擁した。


少し心が落ち着くと、ある疑問が湧いてくきた。


「創造主様、私達はこれからどうすれば宜しいでしょうか?」


「おお、まだ言って無かったな。お主達にはトーランド、リューガルドとして生きていた世界に戻ってもらう。実はまだあちらの世界では肉体的的には生きておる。いわゆる、生死の境をさまよっているところじゃ。そして、体力が戻った後に、そなた達には大衆文化を広めて欲しい。その為に今回、努力をする事ができるそなた達に、地球で歌を勉強してもらった。その他、何でも良い、地球で好きだった文化を民衆に広げて欲しい。」


「また、何ででしょうか?」


俺は素直な疑問をぶつけた。


「それは、民衆の為じゃ。そなたらの国は長い間、内乱が続いておった。ようやく一つの国としてまとまったのが100年前じゃ。今、そなたらの国が一つにまとまらないと、再び内乱が起こり、他の国も巻き込んだ大戦になってしまう。それを防ぐ為には、『民衆の力』が必要じゃ。大衆文化を広め、上からの圧力に屈しない力を国王や貴族の連中に示すのじゃ。」


思ったより重い課題に俺は言葉が出なかった。

それは、あまりにも、元いた世界の大衆文化が乏しかったからである。

歌に関しては、民衆の生活の中にあるのは、街にたまに来る吟遊詩人と鼻歌位であり、他に大衆文化と胸を張って言えるものがあまりにも皆無だったからである。


「トーランド、やってやろうじゃねえか。俺達が、この世界の、ビートルズやローリング・ストーンズになってやろうじゃねえか。あの世界で、あの震えるような歓声を、また聞こうじゃねえか。人が必要だったら育てたらいいよ。」


ライブでのあの全身が震える様な歓声を思い出す。


「そうだなリューガルド。チャレンジしなければ見えない景色があるもんな。また、人を集めてバンドしようぜ。」


かなり苦労はしそうだが、リューガルドと一緒だったら楽しみだ、いや、どんな状況になっても無理やり楽しんでやる。


「創造主様、俺達やります。あとまだ宜しいでしょうか?俺達がやっていた音楽には、元の世界には無い、『電気の力』が必要なのですが、どういたしましょう。あと、バンドメンバーを育てる際にイメージしやすい様に音源が欲しいのですが、どうにかなりませんか?」


「その点は雷の魔石があれば対処できる。音源の方は王都のすぐ近くにある、ダンジョンのドロップ品でレアアイテムとして、雷の魔石と共に、お前達が行った際に、出るようにしておこう。持って行きたい音源をイメージするのじゃ。·····わかった、それらの曲を準備すれば良いのじゃな。アイテムの使い方は、その日の夜にでも夢で教えてやろう。他に聞きたい事は無いか?」


「いえ、無いです。」


「いえ、無いです。」


久しぶりの双子シンクロ。

久しぶりで嬉しい。


「そうと決まれば早速行って貰おうとするかの。あと一つだけ、わしからのお節介があるので楽しみにしておけよ。それでは二人共、目を閉じるのじゃ。トーランド、リューガルド頼んだぞ。ほいっ。」


言い終えると手をたたく音がした。


自分の身体が、下に吸い込まれて行く感覚がする。

ようやく身体の感覚が落ち着いたと思ったら、全身に激痛が走る。

俺は痛みを我慢して、ゆっくりと目を開けた。


横たわっている俺達の周りに、深刻な顔をした親父、お袋、友達が囲んでいる。

天井が見える。

どうやらここは教会らしい。



「おい、トーランドが目を覚ましたぞ!」


「こっちもリューガルドが目を覚ましたぞ!」


「良かった!」


「よしっ」


歓声があがった。


みんな泣いている。


俺は、とにかく身体が痛くて、声が出せない。


人一倍大きい、女性の泣き声がする。


それは、俺達の足元の間でひざまずいて泣いている、俺達と年齢が同じ位の女性だった。


あれ、俺達の身の回りにこんな娘いたっけ?

いや、野郎どもばっかりだったはずだけど?

····もしかして創造主様が言っていた『お節介』ってまさかのこの娘なの!?


横を見て見るとリューガルドも唖然とした表情だった


ここまで読んで頂き有難うございます。あと1回でトーランドとリューガルド編は終了予定です。

頑張って書くぞ!

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