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第38話 怪しい光

このページまで来ていただき誠にありがとうございます。今週も更新できました。宜しくお願いします。

「どうしたの二人とも?そんな顔をして。安心して、メスカルはまだあるわ。っていうか、早くこの一本を飲み終わらすわよ。次の一本は、滅多に手に入らないオスクラル産の5つ星物を開けちゃうんだから。」


マジかよ?

あのオスクラル産の5つ星?

高級メスカルの代名詞だぞ。


「えーっ、本当?下戸の俺でも知ってるような高級品を飲んでいいのか?」


「良いのよ。まあ飲んでみて、あまりの美味しさにびっくりするわよ。忘れたくない楽しい時間には、忘れられないお酒がちょうど良いわ。」


「わーい、あの美味しいやつだ。母上が機嫌が良い時に僕にも飲ませてくれたんだよね。」


「お二人とも飲むっすよ。早く座ってくださいよ。」


外で見た光景を無かった事にして、メスカルを飲もうと思ったが、自然に口から出てきたのは、この一言だった。


「なあ、オーブリー。向こうの崖に階段なんてあるのか?恐らく人が降りて来てるぞ。ここは秘密の場所だよな。しかも夜だぞ。」


クリスは俺の口調で察したのか、顔つきが真剣な表情に一変した。


オーブリーは少し困った顔をしている。


「きっと、あんた酔っ払ってるのよ。確かに向こうの崖の下にに大きなホールみたいな洞窟はあるわよ。けど、私達が来てた頃には、崖に階段なんて無かったし、洞窟には船でしか行けないはずよ。仮に階段ができているとして、こんな夜遅くにそんな危険な事をする訳ないじゃない。そんな事するのはよっぽどの馬鹿よ。」


まだ半信半疑な様子だ。


「いや、降りて来てる。俺も見た。あれは絶対に人だ。かなり怪しいんだ。頼む、見てみてくれ。」


リューガルドの言葉を聞いて、オーブリーの雰囲気がガラっと変わった。


オーブリーは真剣な顔をして黙りこむ。


場の空気が変わり、最初こそムートン、ムルコフさんもどうしたの?みたいな顔をしていたが、雰囲気を察して真剣な顔をしている。


「わかった。見てみようか。みんな明かりをを持って出ないでね。向こうに気づかれたらまずい事になるかもだから。」


酔いが冷めたようで、口調がしっかりしている。


みんなで外に出た。


相変わらず、松明らしき光が崖を降りている。

先程よりも増えてる気がする。


外に出たオーブリーは、遠くの崖をを見て驚いていた。


「確かにあれは人ね。階段ができているみたいね。恐らく、あの光が向かう先は洞窟よ。」


「だろ。あれは何だろうな。明らかに怪しいよな。一体何の集団だ?」


リューガルドがオーブリーに語りかける。


「そうね・・・・・。」


そう言うと、オーブリーは黙りこくってしまった。


沈黙の時間が続く。


寒い。

先程まで、緩やかだった夜風が強くなっている気がする。


「何?この風。少しずつ強くなってる・・・・・」


オーブリーが呟く。


確かにそんな気がする。


オーブリーがハッとした顔をする。


「えーっ?」


俺の肩に黙って座っていたムートンが呟く。

ムートンは急いでオーブリーの肩に飛んでいってしまった。


「ねえ、オーブリー。この風だけど、ほんの僅かに魔力を感じるよ。この地形でこの風・・・・大きい船が来るみたいだね。」


「そうね、この風は魔法で作った風ね。私の魔力探知機もそう言ってるわ。これは・・・シン国の方からね。けど、どうして。・・・・あの国は確か、5年後に即位した国王の基盤が弱く、到底、外に力を向ける状態では無いはず・・・・あっ!」


オーブリーとムートンが同じ方向に顔を向ける。


かなり奥の谷の間から、砂の上を滑るようなかなり小さな光が見えてきた。

恐らく、二人が言っていたのはあれの事だろう。


光から判断すると、かなりの大きさのようだ。


けど、どう見てもあの船は怪しい。

光が少ないのだ。


夜にあの大きさの船が航行するには、光をもっと強く、多く照らした方が安全なはずなのに、敢えて最小限に留めているのが、船の知識が乏しい俺でもわかる。


案の定、船は崖を降りて来た集団と合流した。


「オーブリー、僕が見て来ようか?魔力を抑えて飛ぶし、僕は小さいから分かりづらいはずだよ。」


「駄目、ムートン。あっちもかなり警戒しているはずよ。かなり高精度に魔力感知しているはず。」


「えーっ、駄目なの?気をつけるから、お願いだから行かせてよ。」


「駄目って言ったら駄目。」


きっぱりとオーブリーは言い放つ。


それにしてもあいつが粘るなんて、きっと何かがあるに違いない。


「どうした?珍しくやる気じゃねえか。ムートン、お前何を企んでいるんだ?」


「テストしたいんだもん。」


空気が読めて無いムートンに、みんなのイラッとした視線が集中した。


俺もみんなと同じく“こんな場面でテストだと”と思い、イラッとした。


取り敢えず、ひと呼吸入れる。

ちょっと冷静になって考えてみる。


ムートンの発言も役に立ちたくて言ったはずだ。

あいつの積極性は評価するべきだ。


「ムートンのやる気はわかった。何をテストしたいんだ?」


ムートンは自身のアイテムボックスから、俺達の服についているボタン位の大きさの丸い物をだした。


「これだよ。魔力探知キャンセラー。」


へっ?

みんなからそんな声が聞こえた気がした。


「みんな、ちょっとごめんね。」


オーブリーがそう言うと、自身の頬を両手でひっぱたいた。

アイテムボックスから、俺達のオリジナルポーションを取り出し、酔いを冷ます。


「やっぱ、あなた達のポーション効くわね。ごめんね、私としたことが油断して酔っ払ってたわ。けど、もう大丈夫よ、ようやく冷静になれたわ。ねえ、ムーとン。“魔力探知キャンセラー”って何?」


興味を持ってもらえたのが嬉しかったのか、ムートンは得意そうな顔をしている。


「オーブリーの家で見た魔力探知機を見て、開発したんだ。まだ正直言って試作品だけど、自信はあるんだ。お願いテストさせて。はい、オーブリー。」


ムートンはオーブリーに魔力探知キャンセラーを手渡した。


「取り敢えず、ボタンを押してみて。あとね、実はもうひとつ役に立ちそうな魔道具があるんだけど・・・・。」


そう言って出したのは、2枚の魔法陣が書いてある紙だった。


「これはこうやってつかうんだ。」


ムートンは魔法陣を両手に1枚ずつ持ち、目の近くと目線の先に手を置いた。


「魔力を送って両手を上手く調節すると・・・・ほら、遠くの物が近くに見えるんだ。動力源が魔力だけど、属性は関係なく使えるよ。」


ムートンが魔力を送ったらしく、透明な円盤がそれぞれの紙の上に浮かび上がってきた。


「トーランドが教えてくれた、望遠鏡だよ。見かた調節は簡単。一人用しかできていないけど、トーランド見てみて、はいこれ。」


「お、おう。」


ムートンの能力に驚いている俺にはこんな反応しかできなかった。


早速、試しに崖の光を見てみよう。


目の近くの魔法陣は固定し、目線の先にある魔法陣を動かす。

最初こそ調整に手間取ったが、思ったより倍率が高く、崖の光がかなり近くに見えたのでびっくりしてしまった。


「おい、ムートン。お前やるな、天才かよ。何で鬼鯨の時に出さなかったんだよ。」


「ありがとう。トーランド。出さなかったのは、魔力をセーブしろって、オーブリーが言ってたからだよ。」


よっぽど嬉しいのか、ムートンの声がうわずっている。

ムートンの鼻が高くなっている幻影が、俺には見えた。


「そういえば、そうだったな。ムートンが正解だ。」


「ムートン、ちょっとおいで。あと、あなた素晴らしいわ。キャンセラーを試して見たけど、リューガルド、クリスの魔力レベルだったらOKだったわ。次にムートンの魔力で試させて。」


オーブリー側からも歓声が上がった。

あちらでもテストがうまく行ったらしい。


それからしばらくの間はムートンの新作魔道具のテストをした。


結果は大成功。

しかし、今回の魔道具に関してはオーブリーの提案で、ムルコフさんは口外禁止、俺達も仲間内以外は口外禁止となった。


どうやら、今回の魔道具の2つはこの世界の軍事バランスを狂わせる恐れがあるらしい。


俺達がテストをしている間に船は、予想通り崖から降りてきた集団に合流し、光が消えていった。

恐らく、みんな洞窟に入って行ったのだろう。


テスト終了後、俺達は向こう岸の人達の偵察に行くことにした。


もし本当に何かを企んでいる集団だと確認ができたら、オーブリーが昔から付き合いのある、国軍の幹部に報告するつもりだそうだ。


偵察は話し合った結果、俺とオーブリーの二人で行く事になった。

リューガルドが行きたがったが、オーブリーの


「リューちゃんは正義感が強すぎて駄目。偵察はあくまでも偵察。戦闘を起こしては駄目なの。まだそこが心配だから、今回は駄目よ。」


という一言でグループリーダーの俺が行く事になった。


船は、漁船についている、緊急脱出用の手漕ぎボートを使用。

向こう岸との距離を考えるとかなりの重労働だ。


準備を整え、俺とオーブリーが船に乗り込む。


「安心して、見てくるだけだから。メスカル飲みながら待ってても良いけど、あなた達はそういう事できないわね。もっとも、この状況でメスカルを飲みながら待つような人を信用しないけどね。もう一回確認するけど、もし、私達が帰って来ないような事があったら、打ち合わせした通りにしてね。じゃあ、いってくるわね。」


「俺も行ってくる。」


手漕ぎボートが漁船から離れた。

砂の上をボートが走って行き、みんなの姿がどんどん小さくなっていく。


ボート漕ぎは想像以上に楽だ。

水の上ボートを漕ぐのとは比べ物にならない。


「そろそろ羽織りましょうか。」


と言ってオーブリーは自身のアイテムボックスから、2枚のマントを取り出した。


「これはエルフのマントよ。簡単に言うと、保温性の高い、高性能な隠れ箕よ。これを使われたら、私でも見つけるのに苦労するわ。」


こうして、俺とオーブリーの偵察ミッションが始まった。


Respect 中森明菜/雪の華

中島美嘉の代表曲である雪の華を、昭和の歌姫のひとり、中森明菜がカバーしているのを最近、ユーチューブで知りました。当然ながら、オリジナルバージョンも良いのですが、この曲を中森明菜が歌うと、違うドラマが見えてくるのが不思議です。中森明菜を知ってる方はもちろん、知らない方こそ聞いて欲しい曲です。現代の日本には存在しないタイプの歌い手です。今の音楽に飽きた方は是非聞いてみてください。新しい発見になると思います。

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