第37話 洞窟
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「あーっ、あった。わかる?あそこよ、あそこ。」
オーブリーが指さした先を見ると、断崖絶壁の岩場に洞窟が見えた。
洞窟の眼の前には、砂海から巨大な岩が突き出ており、遠くから見たら、岩に洞窟が隠れて確認ができない。
そもそも、最初にオーブリーが『あそこの岩の裏に、寝泊まりに使ってた洞窟があるわよ。』と言った時は、目印の岩が、岩場と同化して見えていたので、どこの事を言っているかすら理解できなかった。
ここからだと、簡単な船着き場も確認できる。
「あなた達、小汚い洞窟を想像してるでしょ。まあ、長く使って無いから、埃が溜まってるかもしれないけど、そこはみんなで掃除すれば良いのよ。あなた達が思ってるより涼しくて快適よ。しかも、鬼鯨の簡易的な解体ができるくらい広い岩場もあるしね。」
今回捕った鬼鯨は、この船の状態保存機能が付いたアイテムボックスに入れてある。
今回の鬼鯨一頭で、ムルコフさんのアイテムボックスが容量ぎりぎりだったらしく、ムルコフさんが『俺は、最高で一日で3頭捕ったが、ボックスがこんなにいっぱいになる事が無かった。間違い無く今回の一匹が、俺の生涯最大の鬼鯨になるだろう。港の解体場に着いたらみんな、色と大きさにびっくりするぞ。』とニコニコ顔で言っていた。
船は岩場に着く。
船着き場は巨大な岩の裏に造られており、船が岩に隠れて、遠くからは見えない作りになっている。
オーブリーが言っていた、広い岩場は洞窟の前に広がっていた。
確かにこの広さだと、今日の大きさより大きくても、解体には困らないだろう。
俺等は船の片付けをするムルコフさんと、魔導具の手入れをしているムートンを残して、船着き場に降り立った。
長く船に揺られていたせいで、陸に上がってもまだ揺れている気がする。
「一応確認してくるから、ちょっと待っててね。」
と言い残して、オーブリーは洞窟の中に消えて行ってしまった。
それにしてもここから見る“ヌシの巣”の景色は圧巻だ。
見渡す限りにそびえ立つ高い崖。
まるで切り抜いて貼り付けた様に、雲一つない真っ青な空。
黄金色に光る砂の海。
「すごいな。」
「そうっすね。」
隣のリューガルドとクリスが呟く。
「あーあ、こんな事だったら、絵を描く道具を持ってくればよかった。」
「トー、何か言ったか?お前の絵なんて見た事ねえぞ。」
「トラさん、申し訳ないっすけど、想像しただけで、無理っす。絶対に無理っす(笑)。あっそうだ、そういえばアビゲイルなんですけど、あいつ絵が上手いんっすよ。孤児院でも、みんなの似顔絵を色んなパターンで描いて、小さい子達と遊んでいたし。普段はあんななのに、以外なんすよね。あいつだったらもしかしたら描けるかもっす。」
へー驚いた。
良い事を聞いた。
「じゃあクリス、看板なんていけるかな?字だけの看板はつまんねーなと思ってたとこなんだ。できれば、店内の案内もやってもらいたいな。」
「良いっすね。いけるかもっす。多分、最初は断ると思うので、みんなで説得しましょうよ。フレシア姉さんが協力してくれたら、あいつも断れないはずっす。りゅーさんも、協力をお願いしますよ。」
「おう、わかった。けど、クリスもちゃんと手伝えよ。それは言い出しっぺの責任だぞ。」
「えーっ、嫌っすよ。あんな、半分男みたいな奴の手伝いなんて。喧嘩で仕事が進まないっす。」
「いいや、駄目だ。リューガルドの言う通りだ。店内の改装の時に思ったんだけど、お前らセンスあるぞ。店内の色を提案したのはお前らだし、テーブルや椅子も、オーブリーが褒めたのは、お前らが探した奴だし。自信持って良いぞ。やってみろよ。」
「えー、マジっすか?やめてくださいよ、トラさん。」
クリスは口では嫌がってるが、まんざらでも無いようだ。
「これで看板も大丈夫だな。なー、トーランド。」
「だな。リューもたまには良い事を思いつくじゃねえか。」
「うるせぇ、トー。お前は話に乗っかっただけだろう。」
「何をーっ(笑)。」
しばらくしたら、オーブリーが出てきた。
明るい顔だ。
「みんなーっ、洞窟の中は、ちょっと掃除すれば大丈夫よ。さあ、4人で掃除頑張ろうか。じゃあ、ちゃんと灯りを付けるね。」
オーブリーが灯りをつけていく。
広い洞窟内に鯨油の独特な匂いが広がっていく。
この匂いを臭いという人もいるが、俺は結構好きだ。
全部に火が灯されると、洞窟内がかなり明るくなった。
オーブリーの嘘つき。
これのどこが“ちょっと”だよ。
まず、灯りが少なくて薄暗いし、かなりの広さじゃねえか。
しかも、スゲー埃だぞ。
ちょっとオーブリーにやられたなと思いながら、洞窟の中の掃除が始まった。
俺とオーブリーが風魔法で大まかな埃を外に飛ばして、残った埃をリューガルドが集める。
そしてクリスが拭きあげていく。
思った通り“ちょっと”では済まず、案の定、かなり時間がかかった。
綺麗になって、改めて洞窟の中を見てみる。
全て簡易的ではあるが、テーブルや椅子はもちろんの事、キッチンやベッドらしき物まである。
これら全てに年季を感じる事から、かなり昔に作られた物だと思う。
5〜6人が過ごすには十分な広さで、備え付けも十分だ。
「掃除ももう終わったし、ちょっとだけ外に行こうよ。ここの夕方の景色が最高なんだから。“ここで夕焼けを見たら幸せになる”って言い伝えを、たった今思いついたの。帰ったらみんなに広めてね。」
悔しいけど、俺達3人とも吹き出してしまった。
俺達はオーブリーに言われた通りに外に出てみる。
そこには見た事が無い景色があった。
昼間のここの景色も綺麗だったが、夕焼けの綺麗さは更に綺麗さが増している。
高い崖は夕焼けに照らされて、光と陰のコントラストが美しく、砂面の黄金色は深みを増し、空は燃えるように紅く染まっている。
たまに遠くで上がる、鬼鯨の砂潮も黄金色だ。
船を見てみると、ムルコフさんとムートンも手を止めて、俺達と同様に景色に見とれている。
「やっぱり、ここの景色は最高だわ。みんなはここでゆっくりしていてね。私は中に入って晩ごはんの準備をしてくる。こんな事もあろうかと思って、一応準備してきたのよ。準備できたら呼ぶから、来てね。」
「手伝おうか?」
俺の声に反応して、リューガルドとクリスも動こうとしている。
「3人共ありがとう、アイテムボックスから出すだけだから、私だけで十分よ。その代わりにお酒を付き合ってね。今日は飲むわよ。」
おいおい、“今日は”じゃなくて“今日も”の間違いだろうとは思ったが、言わないでおいた。
夕焼けから夜へは早い。
空が狭いここなら、なおさらだ。
いつの間にか真っ暗になっており、先程までの美しい光景が、暗闇を纏っている。
「みんな、準備できたわよ。お酒もいっぱいあるから、おいでー。」
待ってましたとばかりに、みんなが洞窟に移動する。
あのムートンでさえ、メンテナンス途中で来た位だ。
みんなの移動速度は、間違い無く本日の最高速を計測しただろう。
俺達とにかく、お腹が減っていた。
乾杯した後しばらくの間は、みんな無言で、オーブリーが準備したご飯をむさぼり食い、浴びるようにお酒を飲んだ。
会話が弾みだしたのは、みんなのお腹が満たされた後だった。
以外にも、今日一日を通して、ベテランらしくどっしりと構えていたムルコフさんが、かなり場を盛り上げてくれた。
正確に言うと、メスカルを飲みだしてからのムルコフさんだ。
ワインを飲んでいる時のムルコフさんは、ずっとオーブリーから鬼鯨の話を聞いて、勉強熱心な姿が印象的だった。
やっぱ、信頼される人ってこういう人なんだと関心したし、俺もこういう大人になりたいなとも思った。
しかし、メスカルはそんなムルコフさんを変えた。
「こんな上等で飲みやすいメスカルだったら、下戸な私でも飲めますな。」
と言って3杯目の事だった。
「オーブリーちゃん、聞いてくれよ。最近、俺の○○が反抗期みたいで言う事を聞いてくれないんだ。何か・・・・・。」
そこからは下ネタと愚痴、失敗談のオンパレード。
以外にも、ムルコフさんは話が上手で、オーブリーも嬉しそうな顔をして、ムルコフさんにちょうど良さそうな合いの手を入れて、話を転がすもんだから、俺達はずっと笑いっぱなしだった。
「悪い、ちょっと小便行ってくる。」
ちょっと呂律が悪くなったリューガルドが、そそくさと外へ出ていってしまった。。
「リュー、俺も行くから待てよ。」
馴れない場所での単独行動は危険なので、俺もついて行く事にした。
外はかなり寒い。
昼間の熱さが嘘のようだ。
見上げると星が輝いてる。
いつもと同じはずの夜空だが、ここで見ると違って見えるのが不思議だ。
目線をちょっと下に向けた。
いくつものオレンジ色の何かが、下にゆっくりと降りくるのが見える。
高さ的に星はありえないとすれば、人魂的な物?それとも人か?
「おい、リュー。あのオレンジ色は何だと思う。確かあそこは崖だよな。」
「あれはきっと松明の光だろうな。きっと人だろう。動きが一定しているからな。」
あの光を見て、リューガルドの酔いが冷めたようで、口調もしっかりしている。
念のため、オーブリーに聞いてみる事にした。
Respect フィル・コリンズ/イージ・ラバー
この曲はディスコロックとでも言いましょうか。アースウインド&ファイアが参加している曲だったと、思うのですが・・・・。耳馴染みが良い曲ですよ。聞いてみてください。




