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第36話 よっしゃー

更新が遅くなりました。お待たせさせていたら申し訳ございません。来週は土曜日休みなので、週末にアップできると思います。では、宜しくお願いいたします。

「演奏はそのままでね。今、とーっても良い感じよ。それぞれに粒が立ってて、綺麗にまとまった音になってる。ムルコフさんは、このまま全速力ね。なるべく長く逃げて。ここで体力を削るわよ。ムートンは私の言う事を元に、攻撃隊に指示する作戦を、自分で考えるのよ。」


「「「「「了解。」」」」」


船は全速力で砂海の上を走っている。

だが、鬼鯨のスピードが勝っているみたいで、グングンと迫ってきている。


あんな図体をして、こんなスピードが出るのかよ。

大丈夫か?

かなり近いぞ。


「船のスピードを、ほんのちょっとだけ落として。攻撃隊は、弱点ではないけど鼻先に強めの攻撃を当てて。攻撃が当たって、鬼鯨が怒り出したら、船はスピードアップよ。そのタイミングは私が指示する。」


「「「「「了解。」」」」」


船のスピードを落とした為、鬼鯨がグングン近づいて来ている。

俺のリュート+風魔法だけでも、ある程度ダメージを与えられる距離になってきた。


「ムートン、攻撃を指示して。」


「了解。トーランド、リューガルド、音を合わさなくて良いから、鼻先に攻撃して。大きめの岩を壊す位の力でね。」


「「OK」」


最初の攻撃は明るい音でしょ。


明るいリュートの音と共に、魔法で巻き上げられた砂が一つの塊になって、鬼鯨の鼻先めがけて飛んでいく。


ドーン。

鼻先の衝撃に、スピードを落として顔を振る鬼鯨。


よっしゃー、狙い通り!



次に、リューガルドのリュートからも、明るい音と共に雷が走る。

ドドーン。

リューガルドの攻撃も鼻先に命中する。


鬼鯨はたまらず、泳ぐスピードを下げた。

ゆったりとしたスピードになる。


「二人ともいい感じだよ。次も同じ調子でね。」


「トラさん、リューさんナイスっす。」


「トーランド、リューガルド。良くやったわね。しかし鼻先は一番硬い所だから、残念ながらダメージはほとんど無いわ。けど、今はそれで良いのよ。しばらくしたら、鬼鯨が怒って、血相を変えて私達を追ってくるわ。今は、なるべく長く全速力で泳がせて、体力を削るわよ。」


一瞬、鬼鯨の黒さが増したような気がした。

突然、耳鳴りがする。

オーブリー以外のみんなが耳を塞いでいるが、全く効果が無い。


「覚えておきなさい、これが鬼鯨の『怒り』よ。来るわ。全速力で船を出して!」


船が全速力で走り出した。


少し遠くなっていた鬼鯨の姿が、グンっと近づいて来る。

先程も速いとは思ったが、怒っている時の方がかなり速い。


しかし全力というのは、そう長くは続かない。

この部分だけは、鬼鯨も人間と一緒だ。

時間が経つにつれ、スピードが落ちてきた。


鬼鯨のスピードが落ちた所で、船がスピードを落とし、再度、鼻先を攻撃する為に距離を縮める。

射程距離に入った所で、俺とリューガルドが鼻先を攻撃する。

鬼鯨が怒って、船が全速力で逃げる。


しばらくはそれを繰り返しだ。


それにしても、鬼鯨の体力は凄い。

最初に怒らせてから小一時間位経つが、まだダッシュできるのかよ。

とはいっても、最初の頃のスピードじゃないけど。


さすがに俺も、魔力効率の良い魔道具を使ってるとはいえ、ちょっとだけ疲れたな。


周りが気になり、見てみる。


リューガルドは少しだけ疲労している表情が見えるが、攻撃をしていないクリスは元気だ。

ムートンはムルコフさんと共に、良い集中状態が続いてるようで、疲れは見えない。

オーブリーは『砂海の姫』だけあって、余裕の表情だ。


ちょっと疲れてるのは、俺とリューガルドだけか。


けど、ここからでしょ。

ライブも演者、観客共に、この位までがウォーミングアップみたいなもんだし。


「リュー、ここからだな。やってやろうぜ。クリスも頼むな。」


「おう。お前らには負けねえ。俺が倒す。」


「やってやるっすよ。悪いけど、俺も負けねえっす。俺が倒すっす。」


「えーっ、僕には?僕には何もないの?」


「ごめん、悪い悪い。ムートンも的確な指示を引き続き頼むな。」


「うん。」


「あら、みんな頼もしいわね。気合が入ってるじゃない。そろそろ良い頃合いね。」


みんなの視線がオーブリーに集まる。


「みんな、次の作戦よ。ムルコフさん、出来る限りで良いから、蛇行して。後はわかるわよね、ムートン。」



「大丈夫です、オーブリー。トーランドとリューガルドは鬼鯨のこめかみを狙って、クリスは、下腹部を狙ってね。ほら、鬼鯨の泳ぎ方をよーく観察しよう。動きが大きいよね。下腹部は砂面を跳ねる時に見えるようだ。タイミングが大事だよ。3人共、攻撃の合図が出るまで、タイミングをシュミレーションしておいて。」


鬼鯨はもう少しで俺の魔法の射程圏内に入る。


ずっとシュミレーションしていたが、まだ命中率は6〜7割と言った所か。

命中率をもっと上げないと、仕留める為の魔力を温存できないな。


「3人共、攻撃準備良い?トーランドとリューガルドは、先程と一緒で、明るい音で行こう。クリスは色々な組み合わせを試してみて。」


「「「オッケー。」」」


「ムートン、射程距離に入ったら攻撃して良いわよ。」


船の上を緊張が走る。


「今だ、攻撃開始。」


口火を切ったのは俺とリューガルドの明るい音だ。

その後にクリスの低い音が続く。


鬼鯨のこめかみあたりに雷が、俺の風魔法で飛ばした岩が目の少し下にヒットし、クリスの放った衝撃波は砂を伝わり、下腹部にヒットする。


鬼鯨が、もがき苦しんでいる。

上々のスタートだ。


俺達は立て続けに攻撃を繰り出す。


俺とリューガルドは狙いが同じなので、タイミングが一緒なのだが、クリスの狙いとはタイミングとは違うので、音楽的には非常に、気持ちが悪い。


良い音が良い魔法を生む。

それが俺達の使ってる武器だ。


けど今回は全体での音より、各個での音を重視している。

バンドマンとしては、悔しいが、我慢だ。


時間が経つにつれ、魔法への不慣れから、攻撃にムラが出てくる。


「クリス、魔力込めすぎ。それじゃ持たないよ。トーランドももっと狙いを定めて。イメージが大事だよ。リューガルドは当たってるけど、もっと攻撃して。みんな、音の粒が荒くなって来てるよ。」


必死に俺達は鬼鯨にダメージを与え続ける。

鬼鯨はだいぶ弱ってきたのか、スピードがかなり落ちた。


「そろそろ終わりにしよう。ムルコフさんスピードを落として、船を鯨に近づけて。」


「わかった。」


船に鬼鯨が近づいて来る。

深いダメージを負い、瀕死の状態に見えるが、目だけは死んでいない。

初めて間近で見る俺でもわかる。


「もう少し近づくと、鬼鯨が船に噛みつこうと口を大きく開くわ。そこを狙って、残りの魔力を全てぶち込んでね。各自構えておくのよ。」


「「「「「了解。」」」」」


鬼鯨まであと3メートル位になった時だった。

一際大きい耳鳴りがした。

鬼鯨の口が大きく開く。


「今よ。」


俺は思いっきりリュートを弾く。

3人の音の塊が、口の中に入って行くように見えた。


リューガルドも俺と一緒で、マイナーコードを選択していた。

恐らく俺と一緒で、鬼鯨へのレクイエムだろう。


ズーン


泳ぐ力を失った鬼鯨は砂の上に投げ出された。


魔力も底をついた。

魔法を出せる感覚が全く無い。


「やったぞーっ。リュー、クリスやったな。」

「っしゃー。俺等やったっす。」


リューガルドは大きく頷くだけだ。


「やった、僕もやれるんだ。やった・・・・・・」


ムートンは放心状態だ。


船をその場で停める。


目は閉じられていて、力尽きているのがわかる。

それにしてもデカい。


オーブリーが最初に見た鬼鯨を小さいと言ったのも、これを見たら、納得だ。


長さは最低でも普通の家5件分はあり、高さも大人4人分はある。


「みんな頑張ったわね。良くやったわ。ムートンの指示は的確だったし、3人共、まだ荒いけど、魂がこもった良い音を出してたわよ。私はムルコフさんと最終確認をしてくるわね。」


そう言うと、オーブリーはムルコフさんと小舟に乗り、鬼鯨の方に向かって行った。


鬼鯨を捕って、放心状態だったムートンが我に返り、俺達の元に飛んでくる。


「やったーっ、捕れたーっ。みんな、頑張ったね。みんなの魔法も上手だったし、魔道具の仕上り具合もわかったし・・・・うえーん。」

緊張の糸が切れたんだな。頑張ったぞ、ムートン。

正直、ムートンのアドバイスが無かったら、もっと苦戦してたかも。


4人で盛り上がっていたら、急に耳鳴りがした。

4人の視線が鬼鯨に向く。


力尽きたと思っていた鬼鯨が、最後の力を振り絞り、オーブリーとムルコフさんを、船ごと飲み込もうとしている。


オーブリーが、はっっとした顔をしている。

珍しく焦っているようだ。


「そういえば、あの親父と来てた時にも、こんな事もあったわね。」


オーブリーは、スッと両手を鬼鯨にかざすと、衝撃波を繰り出す。


鬼鯨の全身を衝撃波が走る。


今度こそ本当に力尽きたのだろう、再び鬼鯨が動く事は無かった。


確認を終えたオーブリーとムルコフさんが戻ってきた。


「みんなびっくりさせちゃったわね。私が油断していたわ。これは私の判断ミスよ。お詫びするわ。」


オーブリーが頭を下げた。


「それでね、あと一つみんなにお詫びがあるの。ごめんね、私も魔力を全部使っちゃった。ここは魔法が使えないと帰れないの。ムートンもみんなのサポートである程度魔力を使ってるし。だから、私の魔力が回復する、明日の朝位まで帰れないわね。」


時刻はまだ昼過ぎ。


俺達のお泊りが決まった。



Respect Jay Z/エンパイア・ステート・オブ・マインド

この曲はNasの傑作ファーストアルバム2曲目、ニューヨーク・ステート・オブ・マインドが無ければ存在しなかった曲でしょう。アリシア・キーズが歌い上げるサビが印象的な曲です。ちなみに、アリシア・キーズだけのバージョンもあります。

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