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第34話 いざヌシの巣へ

このページまで来ていただき誠にありがとうございます。今回のアップは日曜日にになってしまいました。次回も週末にアップします。よろしくお願いいたします。

俺とリューとフレシアの衝撃の告白から2ヶ月が経った。


店の方は、改装工事が3日前にようやく終了した。

俺とリューガルド、そしてクリスまでもが凝り性をこじらせてしまい、想定よりもかなり時間がかかってしまった。

現在は、フレシアとアビちゃんでドリンクメニューの選定作業や、魚問屋のガンムさんに続く、新たなスポンサーの獲得に動いている。


フレシアが最近、よくフルーツを買ってくるようになった。

どうやら、女性陣でオリジナルメニューを開発していようだ。

俺はドリンクだと思ってはいるが、いまいち自信が無い。


フレシアがフルーツを抱えて、外周りから帰って来ると

「みんなー、今日も始めるわよ」の一声で女性陣が厨房に集まり、男性陣はシャットアウト。


気になるので、女性陣にどんなのを開発しているのか聞いてみても、フレシアから箝口令が出ているらしく、教えてくれない。


男どもに知ってるか聞いてみたが、みんなも知らないんだって。

白い本を参考に、魔道具の研究、開発に没頭しているムートンなんて、女性陣が何かを作ろうとしてる事自体、知らなかった。


フレシアの肝いりの企画なので、楽しみにしておこう。

ステルの結婚式のように、世間を驚かせるような物になると面白いけどな。


それにしても、砂漠は暑っちーな。

正確には、流砂の上に浮かぶ船の上だけどね。


オデリアの流砂は範囲が広大な為、砂海と呼ばれており、対岸のシン国まで、船で5日もかかるのだ。


そんな砂海には独自の生態系が成り立っており、その生態系の頂点に立つのが鬼鯨だ。


俺達はその鬼鯨を捕まえる船の上にいる。


話の始まりは、魚問屋のガンムさんとの親睦会での席でだった。

鬼鯨の話が出た事から始まり、そこからお酒と共に、トントン拍子に話が進み、鬼鯨の漁に男連中が出る事になったのだ。


鬼鯨漁で最も重要な船長は、ガンムさんからの信頼が厚い、大ベテランのムルコフさんを出してくれた。


ムルコフさんの横には、なんとオーブリーがナビ役として、陣取っている。


オーブリーが遊びに来た際、鬼鯨漁の話をしたら、


「あら、久しぶり!砂海の姫の出番ね。」


と言って、ついて来てくれる事になったのだ。


実はオーブリー、漁師をしてた時期があって、オデリアでは伝説になっている、鬼鯨の天敵とまで言われた、漁師マネーギに師事していたらしい。


オーブリーは、マネーギに教えてもらった秘密のポイントをガンムさんの問屋の人のみに教え、妖精の事と共に他言無用という条件で乗ってもらった。


甲板では、ムートンが2丁のリュートとカホンを一生懸命にメンテナンスしている。


俺達は鬼鯨を捕まえるムルコフさんを応援する為に乗船している訳ではなし、鬼鯨が音楽に弱いなんて聞いた事が無い。


そう、鬼鯨の漁に、魔道具へと進化した俺達の楽器を使うのだ。


という訳で今日の目的は2つ。

一つ目はギターの材料である、鬼鯨の髭を入手する事。

二つ目は新しい俺達の魔道具のテストだ。


尚、マルゴーとムートン、それと武器のテストに関してはしっかりとガンムさんに伝えてあり、他言無用の重要機密の扱いとなっている。


その為に、ただでさえ鬼鯨の漁の出港時間は早いのに、人目につくのを避けるために、夜中の出港となった。


「ムートン、俺のリュート良いか?」


「トーランドのはメンテナンス終わってるから良いよ。」


リュートを手に取る。


リュートのヘッドの先端とブリッジ(ボディにある弦を支えているパーツ)に、俺の魔法属性である、小さな風の魔石が3個ずつ配置されている。

どうやら、魔石の数が多くなるほど、魔法の限界出力が上がるらしい。


2つの魔石は、背面に大きく書いてある魔法陣に繋がっている。


原理はムートンの説明によると、ブリッジで演奏者の魔力を吸収し、ボディと魔法陣で増幅し、ヘッドから魔法を出す仕組みらしいが、当然ながら俺は詳しくはわからない。


最初に魔道具へと進化した俺のリュートを見た時、思わず


「美しい。」


と言う言葉が出た。

これが機能美と言う物なのだろうか。


俺の呟きを聞いたムートンが、誇らしい顔をして延々と説明してくれたがさっぱりわからなかった。


「操作は前に演奏した時と同じだけど、魔力の増幅量は狩猟を想定して、かなり大きくなってるから最初は魔力を絞って出すんだよ。しないとは思うけど、いきなり思いっきり魔力を出したら、身体もこの船も、大惨事になるからね。良い?わかった?」


「リューガルド、メンテナンス終わったよ。クリスも、もうすぐ終わるからこっちに来て。」


「おう。」


「おっ、できた?」


二人が嬉しそうな顔をして、自分の魔道具に近いてくる。


リューガルドのリュートは俺と同じに仕上がっているが、クリスのカホンは、魔石の数こそ俺達と一緒だが、全面に魔法陣が書いてあり、俺の厨二病をくすぐるデザインとなっている。 


クリスも、1ヶ月前にムートンの手により、普通の楽器から魔導具に生まれ変わったカホンを最初に見た時


「スッゲー」


と言ってずっと見ていたっけな。


ムートンが二人に魔道具の説明を終えたので、魔道具のテストをする事にしよう。


街からかなり離れた砂漠の中で行なった最初のテストでは、かなり魔力量や方向性の調整に苦労した。

イメージした魔法が、イメージした形で、イメージした強さ、方向に飛んで行かないのだ。


結局、魔力量の調節が上手くいかずに、魔力をすぐに使い果たしてしまい、魔法が使えなくなってしまう始末。


魔力はポーションでは回復できない為、自然に回復するのを待つしかない。

しかも、魔法を使える程度まで、魔力量を回復するには、半日近くかかる為、初回のテストは、少ししかできず、魔法の威力も、的にした岩にすら当たらなかったので大した成果は得られなかった。


それから俺達は練習を重ねて、3人とも思い通りに魔法をだせるようになったが、細かな調整ができていないので、未だに威力が倍増する合体魔法(魔法を使っての曲の演奏)はできていない。


ムートンの予測によると、合体魔法は曲のテンポや音色によって魔法の伝わり方や強弱が複雑に変化する為、かなりの効果が期待出来るとの事だった。


そんな事をムートンから聞いて、馬鹿な俺たちは試しにやってみたが、それぞれの魔法が合わさる事なく、3人の楽器の出力する魔石から、煙が少し出ただけだった。


「3人共、聞いて。今日の目的はそれぞれの魔法で鬼鯨を捕る事。その為には、各個が自分のするべき事に集中して、オーブリーのアドバイスに従って、鬼鯨に当てる事。みんな、普通の楽器の演奏はあんなに上手なんだから、魔道具としての楽器の使い方も少しコツを掴めば、もっと上手になるはずだよ。頑張ってね。」


「トラちゃん、リューちゃん、クリスくん。鬼鯨の弱点は、人間で言う所のこめかみと下腹部。そして最大の弱点は口の中よ。まずはこめかみや下腹部を中心に魔法を当ててダメージを与えて続けるのよ。鬼鯨は怒るとすぐに攻撃相手に噛み付く習性があるから、そこで口の中に攻撃して仕留めるの。これから行く所は、私の師匠の秘密の場所“ヌシの巣”よ。ヌシは身体が大きいから的も大きいけど、皮膚は固く、動きも早いわ。あなた達が攻撃を与えて弱らしてくれないと、この船の全員の命が危ういわ。魔法でも綺麗な音色を聞かせてね。綺麗な音色を期待してるわよ。」


ヨッシャー、やってやろうじゃないの。

なんか、凄いプレッシャーを感じるが、俺達には叶えたい夢があるんだ。

その為には、魔道具としての楽器も上手く使いこなさなけりゃいけないよな。


「トラさん、リューさん絶対に鬼鯨を捕ってやりましょう。俺、やるっす。」


「「だな。」」


おっ、久しぶりの双子シンクロ。

こりゃ縁起が良いな。


「3人共、良いかな。まずは練習だよ。目標は先が尖った大きな岩。トーランドの風魔法とリューガルドの雷魔法でダメージを与えて、クリスの土魔法で崩してみて。」


「「「了解!」」」


風の斬撃をイメージして、指先に伝え、リュートの弦を鳴らす。


リュートの音色と共に、リュートのヘッドから斬撃がターゲットの岩めがけて飛んだ。

ほぼ同時にリュートが鳴り、リューガルドのリュートから雷がはなたれる。


衝撃で岩にひびが入った。 

ほんの一瞬後に、カホンの音色と共に砂の上を、衝撃波が岩をめがけて走った。


衝撃波が岩に当たった瞬間に、ドンと大きな音を立てて岩が崩れた。


日々の練習の成果が出た瞬間だった。

Respect J dilla/donuts

90年代のヒップホップ好きに人気のプロデューサーJ dillaのインストアルバムです。

インストアルバムなので、万人受けはしないとは思いますが、マニアックな音楽にちょっと触れてみたいなという人には、オススメです。


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