第33話 やっぱりね
今回も土曜日に更新できました。急用がない限りは土曜日に更新します。宜しくお願いいたします。
「私は前世で、トーランドと同じ日本と言う国で、生まれ育ちました。前世ではロックが大好きだったの。けどトーランドやリューガルドと違って、見る専門よ。確か前世では、トーランドがCorkscrewの虎太郎でリューガルドはガーナードのギタリスト、ジョン・タイターだよね。それぞれの白い本を見たらわかったわ。初めて知った時はびっくりしたわよ。二人共好きなミュージシャンだったんだもの。トーランドごめんね、私は前世で、ガーナードの大ファンだったの。ガーナードのライブは必ずと言って良いくらい行っていたわ。特に好きだったのがベースのトーキンズ。彼のプレイは神がかっていたわ。タイターは女性からの人気がすごかったよね。私の周りのガーナードのファンもタイター押しばっかり。Corkscrewのライブも友達の勧めで行った事があるわ。周りが男だらけ(笑)。熱苦しい演奏に虎太郎の熱いボーカル。会場でもみくちゃになったあのライブ、あれはあれで最高だったわ。ちなみに前世では『売る』仕事をしていたの。今の私があるのは前世の仕事での経験のおかげよ。トーランドとリューガルドしかわからないと思うけど、私は保険代理店に勤めていて、全国トップになった事もあるんだから。」
おいおい、営業で全国トップ!
スゲーじゃん。
そりゃあ仕事を取ってくし、知らない人でもコミュニケーションを取れる訳だ。
「やっぱりな。」
リューガルドが呟いた。
俺も最初こそびっくりはしたが、思い返してみると怪しい場面はあったな。
「えっ、リューちゃん、バレてた?」
フレシアが驚いている。
「リューは、いつ気づいたんだよ?」
「フレシア、たまに鼻歌でガーナードの曲を歌ってたろ。もしかしたら、とは思ってた。」
一方の、クリスをはじめとするこの世界の住民は、衝撃の告白の連続に、驚くのを通り過ぎて、「あら、そうなのね」といった感じだ。
なんとなく受け入れてる感じで、頭が追いつてない様子だ。
「おい、みんな。何か、疲れたな。身体はまだ動くけど、精神がついて行ってない気がする。各個人に分かれて、でしばらく休憩を入れよう。ちょっと落ち着こうか。」
「みんなごめんね。私まで驚くような話をしちゃって。」
いつも明るいフレシアが少し暗い。
「フレシア姉さん、大丈夫。みんな驚きの連続に疲れただけ。ちょっと落ち着いて来るね。クリス、マルゴー、ムートン行こう。」
「え〜、僕は聞きたい事あるのに。」
「トラさんも疲れてるし、ちょっと後にしようか。行くよ、ムートン。」
「行くぞ、ムートン。」
「我儘を言ったらだめでしょ。後でね。」
嫌だ、嫌だとゴネるムートンをなだめながら、4人は2階へ上がって行った。
「私もエルフだけに、長く生きてきて、色々な経験をしてきたけど、こんな場面は初めてよ。驚き過ぎて、ちょっと疲れちゃった。また来るわね。バイバ〜イ。」
オーブリーも去り、急に静かになった。
「フレシア、ちょっと良いか?」
フレシアの前世で、少し気になった事があったので、小声で聞いてみた。
「もしかして、創造・・・」
フレシアが、会話を遮るように、唇に人差し指を立てて黙って頷く。
「その件は、後でゆっくりさせて。」
その反応で一つの疑問が解決した。
とは言っても、予想通りの結果だったけどね。
そう、俺とリューガルドがこの世に戻る際に、創造主様が言っていた『わしからのお節介』とは、想像通りフレシアの事だったのだ。
「やっぱりそうだったな、リュー。」
「トー、やっぱり思った通りだな。」
フレシアは、俺達の会話に不思議そうな顔を少ししたが、すぐに納得した表情になった。
「そういう事よ。」
それから俺等は、懐かしむように、前世での身の上話をした。
時間を忘れてずっとした。
フレシアはとても嬉しそうだった。
本来だったら誰とも共有できない思い。
幸運な事に、俺達は二人共同じ経験をしたので、それぞれ自分の思いを共有できたが、フレシアはずっと一人で抱えていたのだ。
俺とリューガルドはフレシアの話を聞いた。
心を全てフレシアに傾けて聞いた。
フレシアが急に黙り込んんでしまった。
「おい、どうした?」
リューガルドの優しい口調。
「リューちゃん、トラちゃんありがど〜っ。」
恐らく、俺達と一緒にいてもどこか孤独に感じる所があったのだろう。
この世に生まれてから、ずっと一人で戦っていたのかもしれない。
思いが溢れて、フレシアは泣いたのだと思う。
「頑張ったな。」
それを見たリューガルドが、フレシアの隣へすっと行き、肩をそっと抱き寄せた。
リューガルドの腕の中で泣きじゃくるフレシア。
二人共良かったな。
俺は素直にそう思った。
リューガルドがフレシアを気にかけているのは、小さい頃から知っていた。
だって、自分の思いを素直に口に出すのは、フレシアに対してだけだもん。
大半がフレシアへの文句だったけど。
馬鹿でもわかるわ、お前は子供かよ。
フレシアのリューガルドへの思いも、なんとなく察していた。
昔から俺等を呼ぶときに、最初に言うのはリューガルドだし、二人に何かがあった時に、最初に行くのもリューガルドの所だからだ。
良いもん、拗ねてやる(笑)。
フレシアがさっき言った通り、前世からずっとだけど、俺の周りには、何故か男しか集まらないんだよな。
前世では、俺の周りにいる唯一の女性は、かみさんだけだったし、この世でも、もしかしたらそうなのかな?
かみさんもこの世に生まれ変ってないかな。
っていうか、彼女の意志もあるからな。
俺は前世で良い旦那じゃ無かったしな〜。
いずれ俺にも出会いがあると信じたい。
俺の将来のパートナー様。
今、少し寂しいです。、早く会いたいです。
フレシアが少し落ち着きを取り戻し、リューガルドから慌てて離れた。
フレシアの顔が真っ赤だ。
「落ち着いたか?」
「ありがとう。ちょっと落ち着いた。」
「リューちゃんごめんね。結構濡れちゃった。」
「大丈夫。」
「トラちゃん、私はもう大丈夫だから、みんな呼んで作業再開しよう。」
「今日はみんな情報が多すぎて、頭が回らないと思うよ。今日は防音性能も確認できたし、休みだ。や・す・み。」
俺は階段へ向かった。
「おーい、落ち着いたか?こっちはもう大丈夫だから降りて来いよ。今日の仕事は終わりだー。なんか疲れた。」
「やったー。ね~トーランド、白い本見せて。何て書いてあるか教えてーっ。」
真っ先に降りてきたのはムートン。
早速俺の前に陣取って、本を広げる。
「トーランド、これって?・・・・・」
「姉さん、目が真っ赤よ。大丈夫?」
「あら、フレシア大丈夫?」
「ちょっと泣いちゃった。けどもう大丈夫よ。」
「あれ〜、リューガルドちょっと濡れてない?えーどういうこと?」
マルゴーが何か確信した目つきでフレシアを見つめる。
おいおい、そんな事わかるの?
女の感ってスゲーな。
「えー、何かあったの?フレシア姉さん。」
アビちゃんも察したのか、笑顔で聞いている。
「ちょっと場所を借りただけょ。」
「あら、かわいいわね。」
「キャー♥そうなんですか?」
「お前らうるせえぞ。色々とあんだよ。そーっすよね、リューさん。」
「お、おう。それはいいとして、クリスは聞きたい事無いのかよ。」
「いいすか?もう一回曲を聞きたいです。」
リューガルドとクリスは、俺達から少し離れて、曲を聞きだした。
リューガルドの奴、話を逸らせて逃げたな。
あー言いてーっ。
あのリューガルドがフレシアを抱き寄せたんだぜ。
みんなも想像つかないだろうな。
「そういえば、マルゴーは良いの?嫉妬しないの?リューさん好きっていつも言ってるよね。」
「最後に勝つのは私だから良いの。友人として嬉しい気持ちもあるの。そうだ、アビちゃんも今度してみたら?」
「もーうるさいな。こっちは大丈夫だもん。」
「それ良いわね。アビちゃん。」
「もーっ、フレシア姉さんまで〜。そういえば、さっきの話で聞きたい事があるんだけど、聞いて良いの?」
「当然よ。何でも聞いて良いわよ。」
「じゃあねー・・・・」
いつもの風景が戻ってきて安心した俺だった。
Respect Jimi hendrix / ブードゥチャイルド
言わずと知れたロック界のレジェンド、ジミ・ヘンドリクス。デビューはファンクグループだったと思います。私は楽器どころか譜面も読めないのですが、ファンクを聞いてから彼を聞くと、ファンク畑出身だなって思います。骨太のロックが聞きたくなったら聞いてみて下さい。




