第32話 フレシアも?
予告通り本日更新しました。宜しくお願いいたします。
「向こうの世界では、主に電気という、こちらの世界で言う『雷』の力を使って、色々な物を動かしていました。楽器も単体で鳴らす物から、雷の力を利用した物までありました。リュートも当然ありましたが、リュートはあまり有名では無く、多くの人が弾いていた弦楽器は、『ギター』という楽器でした。みんなが『ヘンテコな楽器』と言ってる製作途中の楽器は、ギターです。ギターにも色々な種類がありますが、俺達が作りたいのは、そのまま使う『アコースティックギター』、低音専門の『アコースティックベース』、雷の力を利用し、『エフェクター』という音色を変える道具を繋げて、色々な音色を出せる『エレキギター』、そして、その低音専門の『エレキベース』です。先日完成したクリスの楽器は『ドラム』という楽器で、元いた世界ではだれもが知っている楽器の一つです。元いた世界で俺達は、基本的に『声』『ギター』『ベース』『ドラム』を使って、『ロック』という音楽をしていました。そして俺とリューガルドは、その世界では双子の兄弟では無く、別な国で他人として生まれましたが、『ロック』をやっていたおかげで二人は出会い、良き友人となりました。」
リューガルドが懐かしそうな顔をして頷きながら聞いている。
他のみんなは、突然の嘘か本当かわからない理解しがたい話に、相変わらず唖然としている。
「この話は作り話ではありません。証拠をお見せ致しましょう。リュー、出すぞ。」
俺とリューガルドは、それぞれ自分のアイテムボックスに向かい、白い本を出した。
「この本はクリスでさえ、あまり見た事が無いと思います。フレシアには見られた事がありますが、何が書いてあるかは分からなかったでしょう。それもそのはず、この本は、元いた世界の言葉で書いてあるのですから。この本を知ってる一部の人には、王都のダンジョンでのドロップ品と説明していましたが、実は、元いた世界で特別な装置を使って、この世界に転送したものです。手に取って見てほしい。」
俺は本をテーブルの真ん中に置き、みんなに見せた。
みんなの目が見開いた。
「マジか‥」
クリスがつぶやいた。
ほかの人も何やら呟いているが、ちょっと怖いのか、本を触ろうとしない。
ムートンだけが、怖がらずに本に近づきペラペラとページをめくりだした。
みんなが呆気に取られた表情で、本に注目している。
「フレシア姉さん、何て書いてるかわかります?」
「・・・・・・・そうね。・・・・ん・んーとね・・・。」
フレシアの後ろから、オーブリーとマルゴーが覗き込む。
「・・・・・信じられないけど。‥あなた達の話は本当みたいね。・・・色々な国を旅したけど、見た事が無い字よ。どの文字とも形すら似ていないわ。」
「これはかなり複雑な魔法陣よ。お母様に見せてあげたいな。あのお母様もびっくりするわよ。」
「ちょ、ちょっと待って。トーランド、ここは何が書いてあるの?」
ムートンが反応したのは、第3部の楽器や機材の設計図のページだった。
「やっぱムートンが反応したか。後で説明しながら見せてあげるから、待ってくれ。」
いつも無表情のムートンの顔に、思わず笑みが溢れる。
「やったーっ。絶対だぞ。」
「おう、約束する。」
「あっ、俺のドラムだ。図面通りじゃないっすか。すごいっすね、リューさん。」
「だろ。」
リューガルドが得意顔だ。
「私のリューガルドを褒めてくれて、ありがとう。」
「うるせえ、黙れチビ。」
「何ですって?」
良かった、いつもの二人の絡みが出た。
ちょっとは落ち着いてきたかな。
「話を戻すな。実は、俺達が一番にやりたいのは、この世界の音楽では無く、元いた世界でやっていた『ロック』という音楽なんだ。リューガルド頼む。」
リューガルドが自身の白い本の魔法陣のページを開き、雷の魔石を取り出した。
ムートンが興奮しているようで、目を見開いて何かブツブツ言いながら、全身をブルブルさせている。
魔石を、開いてある白い本の魔法陣に置いた。
出てきた曲は、元いた世界でリューガルドがいたバンド、ガーナードの大ヒットバラード『Road to Exit 』。
この曲はステルでやり始めた曲だ。
当然、クリスもこの世界に合わせたアコースティックバージョンで演奏できる。
それにしても音が小さい(笑)。
分かるー、俺もそうだもん。みんなに聞かれ無いように注意すると、そんな音量になっちゃうもんね。
みんなは難しい顔をして、耳を澄ませて聞いている。
この世界に合わせたバージョンではイントロが違い過ぎて、みんなわからないだろうな。
「おっと、すまん。」
リューガルドが笑って曲を止めた。ボリュームを上げ、最初から再生する。
見たところ、普段の演奏ぐらいの音量みたいだ。
「とりあえず一曲、黙って聞いてくれ。歌は俺じゃ無いが、リューガルドがエレキギターを弾いている。イントロの楽器だ。」
曲が始まった。
「何なのこの音!」
みんながそんな様な事を呟いた。
それぞれの表情が面白い。
「リューガルド、素敵。」
珍しくクリスがマルゴーに絡まない。
クリスは曲に集中しているようだ。
イントロが終わり、歌が始まった。
「あっあの曲か!違う曲に聞こえた。やべぇ、ドラムかっこいい。」
クリスが、呟いた。
手が自然にリズムを刻んでいる。
「こんな音色、どうやって出すのよ。駄目ね、全く想像できないわ。それに、初めて聞く楽器の合わせ方よ。こんなのどうやったら出来るのよ!それにしても、低音の音がやけに心地良いわね。これがきっと・・・そう、エレキベース?ってやつの音色ね。曲全体を下から支えてる感じ?それと・・・・・。」
オーブリーも分析しながら聞いているようだ。
ムートンはというと、自分のアイテムボックスから、ペンと紙を取り出して、必死に何やら書いている。
喜怒哀楽色々な表情をしながら書いてるので、見ていて面白い。
曲が佳境に差し掛かる所で、ギターソロのパートに入った。
ギター小僧達に“リューガルドの速弾きがヤバい”と話題になったパートだ。
ちなみに、この世界のアコースティックバージョンでは、リュートの音色が合わずカットしている。
ソロパートが終わると、みんなの目が一斉にリューガルドに向いた。
みんなの目が“スゲー”って言ってる。
「あ、ありがとう。」
リューガルドが柄にもなく照れている。
リューガルドもあんな顔するんだ。
あいつ、かわいいな。
それから俺達は、ロックの歴史を辿るように曲をかけていった。
曲の合間に俺が説明して、補足があればリューガルドが入れた。
そうして初期のメタルまでは、みんなにすんなり聞いてもらえた。
耳が慣れたのもあるだろう。
途中、フレシアがメロディを口ずさんでいる気がした。恐らく、俺達がいない間に、こっそりと聞いていたんだろう。
まあ仕方がないか、フレシアだもんな。
しかし、ミクスチャーロックになるとはみんなの評価は一変した。
“なにこれ歌?”とか“ただ叫んでいるだけ”、“うるさい”など、散々なものだった。
俺が大好きなジャンルだけに、非常に残念だった。
よく考えると、この世界の人にとってただのロックでさえ理解を超えた音楽なのに、さらにノイジーに進化したミクスチャーロックというのは、
理解できないのもわかる気がしてきた。
この世界の人には時期尚早だったのだろう。
仕方がない、少しずつ洗脳するか(笑)。
しばらくはオーソドックスなロックでいこう。
最後に、この部屋の防音性能を確認する為、ライブでの音量、つまり“爆音”で曲をかける事にした。
みんながびっくりしないように、きちんと説明する。
かける曲は最初にかけた『Road to Exit 』だ。
曲が始まったら、みんなが耳を塞いだ。
俺にもわかるよ、俺も初めて行ったライブでそうだったもん。
けど、この音量でしか感じれない『音の迫力』があるんだよな。
音が刺さるあの感覚、目の前の景色しか見れなくなる、あの音。
一応、俺は外に出て音の漏れを確認した。
結果はOK。
バッチリ防音できていた。
俺が再び中に入ると、ちょうどギターソロのパートだった。
みんな音量に慣れたのか、耳から手が離れている。
やっぱ良いな、リューガルドのギターソロ。
この大音量でしか感じれない音があるし、やっぱ弾き手の感情がストレートにはいってきくるから良いよね。
ギターソロが終わったら、またみんながリューガルドを見てたね。
アビちゃんなんて、リューガルドに親指を立てて、サムズアップしてたし。
曲が終わったら、みんな大満足してもらえたみたいで、どの曲が好きだったとか、どの楽器が良かったとか感想を言い合っていた。
けど刺激が強すぎて、みんなの顔がちょっと疲れてたかな。
質問もいっぱいされた。
特に、オーブリーがベースギターに興味を持ったらしく、リューガルドを独り占めして、質問をしまくっていた。
ちょうど、ベース候補がいなくて、最悪の場合フレシアかアビちゃんかもと思っていたので、新しいベース候補(しかもリュートの名手!)の出現に俺は《絶対にオーブリーを口説いてやる》と決意した。
ちょうど質問もや感想が落ち着いてきたので一旦俺とリューガルドの話に一区切りつけようかな。
「これで、俺とリューガルドの秘密とこれからやりたい事が、みんなにわかってもらえたかな?みんな、何か最後に言いたい事ある?」
「‥‥‥私から言いたい事があるわトーランド、リューガルド。ごめんね。実は私も二人と同じ世界で前世を過してました。ミュージシャン、この世界で言う吟遊詩人としての二人の活躍を知ってます。」
思いもよらないフレシアの告白に、みんなの目が点になっていた。
Respect ヴァネッサカールトン/サウザンド・マイルズ
ピアノのメロディが印象的で爽やかなこの曲、だれもがどこかで聞いた事があるのではないでしょうか? 曲名を知らなくても、曲を聞けば、どこかで聞いた事あるなと思う方が多いと思います。歌詞の内容を詳しく知らないのですが、私はこの曲を聞くと、若かった頃の青臭い思いとか、熱さを思い出します。歌声も良いんですよね。オススメです。




