第29話 アドバイス
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「おーい、ムートン。作業を止めてこっちに来てくれ。」
想像通り一言目では来ず、何回も言ってようやく来た。
楽しい作業を中断され、俺の肩でブーたれた顔をしている。
オーブリーの顔は、これからダメ出しをするというのに笑顔のままだ。
この場の雰囲気に合うように真剣な顔をしてくれた方が、若干気が楽なんだけど・・・・
ヤバい、オーブリーの笑顔が怖い。
「全体的に見て、あなた達は一つのチームになっていないわね。戦闘役の男の子達は、自分の事で精一杯で周りが見えて無い。サポート役の女の子達は、戦闘に不慣れで、あたふたしてるし。これじゃ、勝てる相手でも勝てないわね。第一、このチームのリーダーは誰?そもそも決めてあるの?」
何故か、みんなの目線が俺に集中した。
俺なの?聞いて無いよ~、って言いたいが、旅の途中で意見が別れた時に意見をまとめて、決断をしてたのは俺だ。
「はい。」
俺は覚悟を決めて手を挙げた。
「そう、やっぱりトーランドだったのね。今日のあなたを見てたらわかるわ。自分の事もしなくちゃいけないし、周りも見なきゃいけない。リーダーって大変だよね。所であなた、リーダーの自覚が本当に有る?みんなの動きに取り決めが無く、自由過ぎて、チームとしてのまとまりが無いわよ。リーダーとして、よくあの場面で行けたわね。この状態で集団戦闘を仕掛けるなんて、メンバーを死にに行かせてるようなものよ。夕方のあの場面で相手が逃げたのは、ラッキーだったわ。」
心にズシンと来た。
言葉が重い。
辛い、目を逸したくなる。
けど、俺は逃げない。
これは、チームとして成長するチャンスだ。
「良い?集団で何かを成し遂げようとしてるんだったら、しっかりとしたルールが必要よ。あのね、チームって『風船』なの。みんなの力で大きく膨らんでいくの。確かにメンバーの“個性”や“自由”は必要よ。けど、それが身の丈に合ってないと、せっかく膨らんだ風船が破裂しちゃうわ。そこを調整するのがリーダの役割よ。これは戦闘だけではなく、演奏にも言える話よ。このチームはあなたにかかっているわ、活かすも殺すもリーダー次第よ、トーランド。けど、一人で全てを抱え込んじゃ駄目。一人でできる事なんて限界があるの。みんなそれぞれ得意不得意があるんだから、そこはみんなに振り分けてね。良い?それがチームってものよ。みんなも協力するのよ。みんなで支え合うの、わかった?」
「「「「「「「はい。❳」」」」」」」
みんなの返事が嬉しかった。
しっかりとリーダーの自覚を持って行動していこう。
みんな、こんな俺だけど宜しく頼む。
「次はリューガルドね。」
リューガルドの表情が引き締まる。
「あなた、自分の直感だけで行動してるでしょ。今までずっと、あなたが動いて他の人がフォローをしてきたのに気付いてた?。地元のチンピラレベルだったらそれでも良かったでしょうね。けど、夕方の件は、別の話よ。みんなを死なせたいの?あなたの独りよがりの行動で、みんなバタついてたの。相手の力量次第では、あなた達だけでは無く、通りにいた人にも犠牲者が出ていたわ。あなたみたいな人をなんて言うか知ってる?『直線バカ』って言うのよ。」
リューガルドの顔が怒りで紅く染まっていく。
「ほら、すぐ頭に血がのぼる。そんな短気じゃ命が幾つあっても足りないわよ。リューガルド、戦闘時は落ち着いて一息ついてから行動なさい。その間に状況を考えるの。トーランドとの連携は当然、必要よ。あなたはこのチームで戦闘に於いてエースなの。あなたの目、瞬発力、正義感はこのチームに取って貴重な戦力よ。それを活かす為には周りの協力が必要よ。それができるようになったらこのチームはもっと良くなるの。当然、演奏もグッと良くなるはずよ。まあ、まだあなた達の演奏は聞いてないけどね。また今度演奏を聞かせてちょうだい。リューガルドわかった?」
「わかりました。」
リューガルドは結構ショックだったらしい。
あいつ結構プライドが高いもんな。
後でフォローしとこう。
「次はクリスね・・・・・・・・・・・」
それからもオーブリーから各メンバーへのアドバイスが続いた。
クリスには考え過ぎで行動が遅い所について、フレシアとアビちゃんには戦闘に不慣れで、慌ててパニックになっていた所について、マルゴーは魔力の使い方についてだった。
「じゃあ、最後にムートンね。その前に、喉が乾いちゃった。」
オーブリーがグラスにメスカルを手酌して一気飲みした。
「ムートンはどうして戦闘に参加してなかったの?店でもそうだったけど、あなただけ蚊帳の外にいるわね。一体どうしたの?何があったの?」
ムートンは黙ったままだ。
「ムートンこっちに来て。」
オーブリーがムートンを膝に載せ、軽く頭を撫でた。
ちょっと嬉しそうなムートン。
一瞬、オーブリーが驚いた表情をした。
「あなた、魔力に制限がかけられてる?一体どうしたの?」
「母上に魔力制限された。」
「私も。」
二人がこう言った時、オーブリーの口元が緩んだ。
「また、どうして?二人共いたずらが過ぎたのかしらね。そういえば二人の母親の名前を聞いて無かったわね。私こう見えて妖精とも付き合いがあったから、わかるかもよ。」
「ルミタリスです。」
マルゴーが言った。
「ふふっ。やっぱりね。この前、久しぶりに連絡をくれたと思ったらこの事だったのね。あなた達の母上は私の元パートナーよ。私はルミタリスのお母さんと友達で、あの子が赤ちゃんの頃から知ってるわ。実はムートンを見て、恐らくルミタリスの子じゃないかな、とは思ってたんだけどね。男の妖精なんて滅多にいないもんね。それにしてもあの子らしいわ。相変わらずみたいね、真っ直ぐな性格。」
それを聞いて、ビックリした顔のマルゴーとムートン。
「二人共、本音で言うと旅はどうしたい?正直言ってごらん。帰りたいんだったら、私からルミタリスに言ってあげるわよ。」
「私は外の世界をもっと知りたい。まだ帰りたくないです!」
即答のマルゴー。
「・・・・・・僕も旅をしたいけど・・・・じ・・・・自信がないんだ。実は・・・僕ね、昔から、周りのみんなより、魔法が下手で弱いんだ。母上やマルゴーが教えてくれたけど、どうしても上手くできないんだ。妖精なのに、僕にできるのは、魔道具を見る事や作る事、それしかできない。そんな僕が、みんなの役に立てるはずが無いじゃないか。」
オーブリーは相変わらずの笑顔で、何故か黙ったまま。
俺達からの“何か”を待ってるんだろう。
それにしてもムートン、自信が無いって言うが、俺だって無いものばっかりなんだぞ。
「良いじゃん、それで。俺達はムートンよりも魔法が下手だし弱いぞ。俺もリュートを弾けるが、リューガルドよりも下手だし。フレシアみたいに、いろんな仕事を取ってこれる自信も無い。クリスやアビちゃんほどの努力はしてないかもしれない。マルゴーみたいに自分の感情を上手く伝えられないし。けど、それがどうした。俺には『歌』がある。それは誰にも負けたくない。ムートンも、魔道具が好きだったら、それで良いじゃん。材料費は出すから、魔道具を俺達に作ってくれよ。」
オーブリーは笑顔で黙って見ている。
「ムートンてめえ、ようやく弟ができたと思ったのに逃げるんじゃねえぞ。帰るなんて、俺が許さないからな。」
「だな。ムートンが魔道具を作れるんだったら、俺は作ってもらいたい物があるし。」
「良いわね男の友情って。魔道具の材料費については、最後で良いから、必ず私に相談して、お金に関しては、男性陣だけで判断しないでね。」
「ずーっとトラさんの肩に乗ってるのに、トラさんを無視するムートンが好きなんだけどな~。」
「良かったねムートン。また一緒に頑張ろ。」
言いながら号泣してるマルゴー。
「改めて聞くわ。ムートンどうしたい?」
「ぼ、僕は・・・・・・・・・・・・・・・・・・魔道具でみんなの役に立ちます。」
「私は頑張れとは言わないわ。やってちょうだいね。自信なんて、いっぱい失敗と成功を繰り返したら自然と付くものよ。じゃあ、お姉さんからプレゼントよ。マルゴーも私の膝においで。」
オーブリーの膝の上に並んで座っているマルゴーとオーブリー。
オーブリーが、二人の小さな背中にそっと手を乗せると、一瞬3人が光った気がした。
「良いわよ。2人共どう?」
「魔力が戻った!」
「戻った!」
2人めちゃ嬉しそうだ。
「安心して、お母さんには私から言っておくわ。約束して、二人共、何でも挑戦して、それをやり切るのよ。いっぱい経験してらっしゃい。」
「「ありがとうございます。」」
「ところで、私からの相談があるんだけど良いかな?」
やはりオーブリーの笑顔は怖いな。
またテーブルの上が張り詰めた空気になった。
Respect Skindred/ninja ミクスチャーロックのバンドです。このバンドの珍しい点はボーカルがラップをするのでは無く、レゲエのDJをする所です。
安心してください、音はしっかりラウドロックです。




