第27話 酔いどれ天使
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あらためてエルフを見ると、男か女かという問題は別として、やっぱ綺麗だな。
そもそも人間とは、造形がかなり違う。
触れたら壊れてしまいそうな、繊細な美しさ。
そんな風貌で、しかもかなり酔っ払っているのにも関わらず、相変わらず隙がない。
何者だ?この人。
とはいえ美しいので、思わず見とれてしまう男性陣。
それを見て、女性陣の目が一気に戦闘モードに変わる。
「エルフさん。先程はご忠告ありがとうございました。とても参考になりました。例の件はご忠告後、気をつけていますのよ。ね〜みんな?」
フレシアの言葉遣いは丁寧だけど、違和感を感じる。
「「はーい。」」
女性陣が笑顔で答える。
けど、みんな目が笑っていない。
何だこれ?
怖えー!
「エルフさんも、お酒を楽しんでいらしゃるようなので、ご自分の席でゆっくりとお飲みになった方が良いですよ。」
「あーらお姉ちゃん、心配してくれてありがとう。知ってた?お酒はみんなで飲んだ方が酔わないのよ。ね〜お兄さん達。」
そう言うと、エルフは並んで座っている男性陣に近づき、男性陣みんなをぎゅっと抱き寄せた。
ムートンのほっぺたが真っ赤だ。
何か安心した。
それに引き換え対面の女性陣の顔は般若の面みたいだ。
マルゴーもアビちゃんの膝の上に移動して、テーブルから顔だけ出して、睨んでるし。
みんな表情、表情!
感情出ちゃってるよ。
何なの?このテーブル。
楽しかったこの場が凍りついている。
しかし何もできない、無力な男性陣。
その時、エルフが動いた。
「マスター、ここの人達に一緒に飲もうって誘われちゃった。テーブル移っていい?」
エルフがマスターから確認を得ると、よりによって俺達の対面に座るフレシアとアビちゃんの間を強引に開けて、座ってしまった。
男性陣の目の前に広がる地獄絵図。
「私の名前はオーブリー。見ての通りエルフよ。ヨロシクね。」
オーブリーは強引に俺達と乾杯する。
こうして地獄の宴が始まった。
〜〜〜〜〜2時間後〜〜〜〜〜
「マスター、オーブリーにメスカルのおかわりをお願い〜。アビちゃんも飲んでる?マルゴーも飲み物入ってる?ほーら、男どもも飲んでる?リューちゃん達も遠慮しないで飲め〜。」
フレシアはオーブリーと肩を組みご機嫌だ。
アビちゃんやマルゴーも、いつの間にかオーブリーと楽しそうに飲んでいる。
「フレシア飲み過ぎ。気をつけろ。」
「ありがと〜トラちゃん。大丈ブ〜。これあるから。」
フレシアがポケットからオリジナルポーションを出して、ちらっと見せる。
おいおい、それ酒酔いにも効くのか?
っていうか、簡単に見せるな。
「あーらいい物持ってるじゃない。フレシア見せて。」
「ちょっと変わったポーションよ。入手先はヒ・ミ・ツ。けど、オーブリーだから一本あげる。」
フレシアは小声で答える。
「いいの〜?ありがとう〜フレシア〜。」
「いいの、いいの。私とオーブリーの仲じゃない。」
「じゃあ、お礼ね。」
オーブリーがフレシアのほっぺたにチューをした!
「あっ、ずる〜い。姉さんは私の物なのに。」
負けずと、アビちゃんがフレシアに近づき、ほっぺたにチューをした。
「わ、私も〜。」
と言ってマルゴーが出てくこようとしたら、オーブリーが
「あら、マルゴーには、ここしか空いてないわよ。」
フレシアの唇を指した。
「え〜、そこは・・・・・」
「イェーイ、フレシア、アビゲイル、マルゴー大好きよ。カンパーイ。」
あちら側はみんなで乾杯だ。
俺とリューガルド、クリス、ムートンは完全に置いていかれている。
2時間位前のあの地獄は何だったんだろう。
「あー久しぶりに気分良くなっちゃった。リューガルド、もし良かったらリュート見せて。」
「お、おう。」
リューガルドがオーブリーにリュートを手渡す。
オーブリーがリュートを手に取り、細かい部分まで眺めている。
ポローン
慣れた手つきで、さらりと弾いた。
「しっかり手入れされてる良いリュートね。少し弾いてみていい?」
リューガルドがとっても嬉しそうな表情でうなずく。
「マスター、リュート弾いていい?っていうか、駄目って言っても弾くわよ。」
マスターが一瞬驚いた表情をしたが、すぐに笑顔でうなずいた。
「おー良いぞ。お前が楽器を持つなんていつぶりだよ。10年以上弾いてないだろ。弾けるのか?」
「あら失礼ね。エルフにとって10年なんて一瞬よ。」
マスターがリュートを弾こうとするオーブリーを手で制止する。
「おーいみんなちょっと黙ってくれ、この店の酔いどれ天使、オーブリーからのプレゼントだ。邪魔する奴は出禁な。」
出禁が嫌なのか、賑わっていた店が、静かになっていく。
ポローン
オーブリーがリュートを鳴らしたら、店が静まり返った。
左手で弦を押さえ、右手の指一本一本から、透明感のある優しい音が紡ぎだされていく。
目を閉じると懐かしい光景が浮かんだ。
テーブルの上の温かいご飯と親父の酒飲み姿。
いっぱい遊んだ路地、みんな顔はドロや埃だらけだったっけ。
親父とお袋元気かな。久しぶりに会いたいな。
いつも一緒だったあいつらは・・・バカだから大丈夫だな(笑)
ステルでのあいつらは頑張ってんだろうな。
まだまだ会えないけど、みんな大切なファミリーだ。
オーブリーがリュートにあわせて歌い出した。
まるで木々をすり抜ける風のような、とても優しい歌声。
何語だろう?エルフ語?わからない。
店を見渡して見ると、みんな、オーブリーの歌と演奏に引き込まれている。
奥の席にいるおばあちゃんなんて、泣いているのか、目頭をハンカチで抑えている。
演者によって、リュートの音も変わるもんだな。
鋼のように力強く、宝石のようにキラキラ輝くリューガルドの演奏。
それに対し、歌声と一緒で、ふわりと漂うそよ風のように優しく、ろうそくの火みたいに心をも照らすような、オーブリーの演奏。
これはどっちが上手い下手では無く、演者の個性であり、聞手の好みの問題だ。
俺は曲にもよるけど、ギターでは間違い無くリューガルドだけど、リュートではオーブリーが好みかな。
今までずっと横で聞いてきたリューガルドのリュート。
けどやはり、リューガルドのリュートは疑似ギターの部分が多少あると思う。
一方、オーブリーのリュートは本来のリュートらしいリュートだと思う。
あーあ、ギーリさんにも聞かせたいな。
ギーリさん、リューガルド、オーブリーのセッションもいいかも。
横ではクリスが・・・・・な、泣いてる。
ステルでの仲間を思い出してるんだろうな。
けど、涙くらい拭けよ。鼻水まで出てるし…
って思ったてたら、手元で椅子を叩きはじめた。即席カホンだ。
俺はそんなクリスが好きだ。
クリスがこの短期間で、こんなにカホンが上達したのは、四六時中ずっと演奏してるからだろうな。
いつも気が付けば、リズムを取っている。
演奏日数が短くても、演奏時間はかなりの時間になるはずだ。
曲は3コーラス目だ。
歌い終え、曲の終わりを名残惜しむかのように、オーブリーの右親指がリュートの弦を、ゆっくりと1本1本撫でていく。
耳の奥に残るリュートの優しい音色。
次の瞬間、食堂に響いたのは盛大な拍手だった。
「リューガルドありがとう。愛されてる楽器は良いわね。良い音がする。調子乗って3曲やっちゃった。あー疲れた。」
曲を聞き終えて、店を出ようとする人達が俺達のテーブルに寄り、オーブリーに挨拶をして行く。
「ありがとう。」
笑顔と共に返す。
「アビゲイル、見ておきなさい。あれが満足したサービスを受けて見せる最高の笑顔とこの場で最高の返し方よ。アビゲイルもそんな笑顔をもらえるように頑張ろうね。」
「はい。」
フレシアが、アビちゃんを呼んで指導していた。
フレシアは今日はまだ大丈夫らしい。
「そろそろ私も帰ろうかな。代金は安心して、もう払ちゃった。私の故郷では飲み会の最後に、再会できるようにみんなで祈りをするの。みんなでしましょう。」
何か優しい習慣だな。
いいねやろう。
みんなで目を閉じて、胸の前で手を組み合わせる。
「さあ、祈るわよ。」
[みんな聞こえるよね。]
オーブリーの声が聞こえたと思ったら念話だった。
Respect Affirmation/ジョージベンソン
今回は70年代のフュージョンです。この曲のギターの音色が最高に気持ち良い。初めてきいたのは早朝、朝焼けがとても美しい日でした。ラジオから流れてきて、鳥肌が立ったのを覚えています。ギターでもこんな心地よい音が出せるという事を初めて教えてくれた曲でもあります。このアーティストの名前で検索してみて下さい。部屋の灯りをちょっと工夫して(ろうそくなど)好きなお酒と共に聞いてみて下さい。




