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第15話 謎の男・・・実は

このページお越し頂きありがとうございます。宜しくお願いいたします。

俺は人混みをかき分け、フレシアの横に並んで座った。


「フレシア、手伝える事があれば何でも言えよ。」


すぐに、リューガルドとクリスも駆けつける。


「大丈夫か?」


「姉さん、自分にできることがあったら言って下さいっす。」


フレシアは黙って頷く。


「大丈夫ですか、まずお水を飲んで下さい。ほらゆっくり口に含んで。」


フレシアがドレイク=モルス卿を抱え、水を飲ませている。

どうやら意識はあるらしいが、飲み過ぎみたいな感じで、青白い顔をしてぐったりしている。


「トーランドはここに居て手伝って、リューガルドとクリスはドレイクさんの従者を探して。何故か一人も見あたらないの。」


「わかった。」

「わかったっす。」


リューガルドがクリスに、二手に別れて探すのを指示し、ふたりは出て言った。


しばらくして事情を聞いた、フルストさんとこの町を統括するエドバルト=タンカレイが駆けつけ、従者がポーションを飲ませた。

しかし、状況は変わらない。

続けて、回復魔法をかける。


「駄目です、効きません。もしかすると、これは飲み過ぎではなく、魔力がねりこまれている毒の可能性があります。回復するにはハイポーションか上位回復魔法が必要です。」


「くっ、なんてことだ。どうすればいい?」


そう叫ぶと、タンカレイは困った顔をして黙りこんでしまった。

横では、フルストさんは青い顔をして立ちすくんでいる。


それにしても、従者はどうしたんだろう。


パーティーは厳戒体制を敷いているが、この位の地位の貴族になると、下級貴族出身の魔法を使える従者を数名従えており、身の周りには常に護衛役や世話役がいるはずだ。

こんな時の為の従者なのにいない。

いったいどこへ?


何やらおかしい。

この国で頻発している暗殺や暗殺未遂の事が頭をよぎる。


パーティーの関係者に従者はどうしてるか聞いてみると、つい先ほどまで一緒だったが、急にいなくなったと言っていた。


俺はどうすれば良い、考えろ、何ができるか・・・・・


あっ、そうだ。白い本の巻末に『巻末付録 冒険に役立つおばあちゃんの知恵袋』に何か書いてあった気がする。


そうだ『毒に冒された場合どうすればいいの、おばあちゃん?』こんな様な事が書いていたっけ。

たしか、葉っぱを何種類か煎じて飲めば良い的な事が書いてあった気がするのだが・・・・・


けど、どうしてもおばあちゃんの答えが思い出せない。

こんな事だったら、巻末付録までしっかり読んでおけば良かった。


ここから、宿屋までそんなに遠くないな。

もしかしたら、役に立たないかもしれないが走って取りに帰ろう。


「フレシア、俺に考えがあるから少し出てくる。待っていてくれ。」


「もしかして、白い本持ってくるの?」


「!!??,何で分かった?」


「そんな事どうでも良いから急いで、病人が先よ。」


「そうだな、行ってくる。」


俺はそう言い終わらないうちに、宿屋へ走った。


これで、モルス様が大変な事になるとフルストさんが非常に困るだけではなく、この国全体にも多大な影響が出るだろう。

俺はそんな思いだけで、一生懸命走る。


フレシアの発言は敢えて考えないようにする。

今はそんな事考えなくて良い、命が優先だ。


モルス邸を出て数分、宿屋がある通りに出た。

あと少しで宿屋だ。


今夜は満月だ。

月明かりが非常に明るく、人気がなく、通りの見通しも良い。


宿屋が見えた。

急がなきゃ、病人が待っている。


あれ?今まで薄暗くって分からなかったが、宿屋の少し先に黒っぽいフード付きマントを着た人が、通りの端を早足で歩いている。


時間や歩き方、歩いている場所、大して寒くないのにフードを深めに被っている点、何か怪しい。

もしかしたら、


あの憎きダリオも、俺が死にかけたあの時も、似たような格好をしていたっけ。


俺一人では危険な気もするが、モルス卿の件もあるし一応声をかけて見よう。


俺は宿屋を過ぎ、マントの人に向かってスピードを上げた。


「後ろからすみません、少し宜しいでしょうか?」


「なんでしょう?」


マントの人が足を止め、小さなかすれた声で答える。

振り返ってはくれない。


不自然な声だ、わざとそんな声を出している気がする。

かなり警戒しているらしく、いつでも武器を出せる体勢だ。


「すみません、怪しい者ではありません。ちょっと人とはぐれてしまいまして、道の途中で私と背格好が似た人を見かけませんでしたか。」


「見てないね。じゃあ。」


マントの男は足早に立ち去ろうとする。


「ちょっと待って下さい。一回で良いから私の姿を見て判断していただけないでしょうか?私にとって大事な友人なんです。」


そう言うと俺は、無理やりマントの男の正面に回り込んだ。


マントの男は、とっさに下を向き顔を隠す。

今宵は月が明るいとはいえ、この明るさでは顔が分からない。


「無いね。」


男は吐き捨てるように言うと、足早に去ろうとする。


「ありがとうございました、ちょっと待って下さい。フードに何か付いてますよ。」


そう言ってフードに手をかけようとした瞬間、殺気を感じた俺は慌てて距離を取り、腰に携えていたナイフを手に取り構える。


マントの男はナイフを右手で逆手に持って構えている。

男は場馴れしているのか、リラックスした構えで隙がない。


「ほお、なかなかやるな。もう少しで手を落とせたのに。」


「褒めていただきありがとうございます。できれば無傷で帰りたいですね。」


俺は男の顔めがけてナイフを突き出す。

男はそれを左手で受け流し、おれの胸元に右カウンターを狙う。

俺は間一髪でかわす。


服の胸元が横一直線に切れたが幸い無傷だ。


「少し本気で行きましょうか。」


男はそう言うと、右手のナイフを、素早い動きで順手に持ち替え、左手が前の半身になる。

両腕がまるで蛇のようにくねり出す。

高速で動いているので、ナイフの軌道が分かりにくい。


男が少しづつ間合いを詰めてくる。


それはまさしく、獲物を捕まえにいく蛇のようだった。

尋常ではない速さで、ナイフが胸元に迫る。


どうにか、ナイフをかわせたと思った瞬間、男の左手が俺の顔をかすめ、がら空きになったボディにボディフックがはいった。

激痛で、一瞬息ができなくなる。


「ほら、一回死んだ。」


男がつぶやく。


(ボディに入ったのが拳ではなく、ナイフだったら・・・・それにしても、どうして殺さない?)


再び我が身に迫る『死』の恐怖に、背中に冷や汗が流れる。

しかし、俺はまだやりいたい夢が沢山ある。

想像主様との約束もある。

まだ、死ぬ訳にはいかない。

俺は気を取り直し、どうにか体勢を整える。


相変わらず、男は蛇のような動きで俺の隙をうかがっている。


(ヤバい、男の動きがトリッキーでしかも早い。避けるので精一杯だ)


反撃の糸口すら見つけられず、防戦一方になる。


「次でもう一回死にますよ。」


男はそうつぶやく。

瞬間、男は体を沈めて、ボディを狙ってナイフで刺してきた。


(丁寧にご忠告ありがとう)


俺は半身でかわせたと思った瞬間だった。

俺の顎にナイフの腹が触れていた。 


「ほら、また死んだ。」


(駄目だ、実力差がありすぎる。次は殺されるのか?)


どうにか身体を動かそうとするが、『死』への恐怖で身体がこわばり、思うように動かない。


「今日の所はこの位にしておきましょう。」


男が動いたと思った瞬間、目の前が真っ暗になり、平衡感覚がなくなる。

これは、あの王都のあの晩の感覚と同じだ。

これは、ダリオが使った戦闘用魔方陣と同じかもしれない。

残念ながら、この状態ではどうする事もできない。


あの『おばあちゃんの知恵袋』にも、『自分で魔道具を学びましょう』としか書いてなかった。

ちくしょう、こんな事だったら後回しにしないで、すぐに調べればよかった。


「あなたの歌がすばらしかったので、今晩はこのくらいにしておきます。」


想定外の男のつぶやき。

まだ警戒を解く訳にはいかないが、今の状態ではその言葉を信じるしかない。


「次はないぞ。トーランド。」


(えっ、この声・・・・聞いた事あるぞ。そうだ、ダリオだ!ちくしょう、これであいつに殺られたのは二回目、俺も強くなって、今度こそ絶対にリベンジしてやる。)


しばらくして、魔法の効力が切れ、感覚が元に戻った。


俺は通りの端で倒れていた。

夜空がやけに綺麗だ。


(良かった、まだ生きてる。今するべき事は・・・『白い本』だった)


俺は急いで立ち上がり、宿屋に急いだ。



Respect Kasabian/Club Foot この曲もダリオのイメージでセレクトしました。自分は、Kasabianの持つ、ドラッギーで薄暗い雰囲気が大好きです。日本で、洋楽といえばアメリカのアーティストを思い浮かべる方も多いと思いますが、邦楽はどちらかといえばイギリスの音楽に近い気がするので、興味があったら、ユーチューブでUKチャートを検索して、チェックしてみてください。今検索したら、Lizzo/2 Be Lovedって曲が気に入りました。早速、アマゾンミュジックでダウンロードです。

調べたらアメリカのアーティストでした(笑)

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