第12話 セッション
このページまで来ていただきありがとうございます。森の町ステル第6話です。よろしくお願いします。
あれから二週間、セルスとクリスの決闘に使った町外れの原っぱは、音楽兼格闘技の練習場になっていた。
クリスはカホンを、セルスはフューリーとルート(セルスとクリスの決闘に来ていた二人)と一緒に格闘技の練習をしている。
事の始まりは俺達が練習をしている所に、セルスが木材のサンプルを持ってきたのが始まりだ。
セルスはこの前の件で自信がついたらしく、格闘技を護身術としてもっとできる様になりたいと申し出があり、引き続き俺達が教える事となった。
3人とも遊びではなく、本格的に練習している。
クリスはというと、楽器はカホンに落ち着いた。
まず、リュートを教えたがあまり適正が無く、だったらリズム楽器でしょ、って事で材料を揃え、クリス自身に作らせた。
完成したのを見て『やっぱり、ただの木の箱だ』なんて落胆していたが、俺が実演してみたら出てきた音にとてもビックリしていたっけ。
そこからクリスへ厳しい練習が始まった。
まずは一定のリズムを取る事からスタートし、手の使い方、スコアの見方などを、厳しく教えた。
クリスも一生懸命だった。
分からない事やできない事があっても必死で練習して、なんとか乗り越えて来た。
そして現在のクリスの実力はというと、音楽が好きで、自分で作った楽器への愛着もあって、練習時間以外にも、暇さえあれば叩いているらしく、それが功を奏して、かなり上達した。
一緒にライブできる日もそう遠くは無い気がする。
俺としては、このままカホンでリズム楽器の基本を学んで、楽器が揃ったら、ドラムへステップアップさせようと思っている。
今までのクリスの上達具合を見ても、きっと大丈夫だろう。
そして今、仲良し4人組揃ってカホンを練習する時間がある。
クリスは出世したもので、その時間は指導をしている。
きっかけは、休憩中の遊びだった。
セルス達がシャドーボクシングをしている所に、セルスが遊びでリズムを付けたのだ。
即興でリズムに合わせてパンチやキックを繰り出すのが面白かったらしく、時間を忘れてずっとやっていた。
それがかなり良かったらしく、いつの間にか格闘技組3人も、カホンを作って練習をしだした。
それから、格闘技組は練習にカホンを取り入れて、1人がカホンを叩き、それの合わせてシャドーボクシングをしたり、二人組になって隙ができたら体をタッチするゲームをしている。
それは、格闘技組がちょうどカホンを取り入れた練習をしている時だった。
「まるでブラジルのカポエイラだな。」
そう言うと格闘技組の指導をしていたリューガルドはリュートを手に取った。
「トー、クリス借りるぞ。クリス、カホン持ってこっちに来い。」
「ウッス」
クリスが小気味の良い返事と共に、リューガルドの元へ向かう。
「リュー、良いけど何するんだ。」
「ちょっと思い付いた遊びだ。」
「クリス、叩け。セルスとフューリーでタッチゲームな。」
クリスがリズムを刻む、セルスとフューリーはリズムに合わせながら、間合いを取り隙を探っている。
リューガルドは、人の動きに合わせた不規則なリズムに苦戦しながらもリュートで合わせていく。
やはり、いつものカホンだけとは違い、リュートが加わる事で音に厚みが増した。
場の熱気が上がる。
セルスとフューリーもテンションが上がっているようだ。
通常の練習の時とは違う目をしている。
獲物を狙う様な目だ。
そして、動きのキレもかなり良くなった。
見ているルートもリズムに合わせて手を叩きながら、大声をあげて声援を送っている。
(リューガルドの野郎、面白い空間作りやがって。俺も混ぜろ。)
俺はみんなの輪の中に割って入り、感じたままの声で歌う。
当然、歌詞なんて無い。
クリスのカホンが入ってから、俺達の音の厚みが明らかに増した。
改めて、実感した。
やっぱり、音楽って良いなー。
時間を彩る事ができる。
無くても良いけど、あった方が記憶として、鮮明なものになる。
もっと練習して、もっとライブをしよう。
多くの人々と出会い、多くの楽しい時間を共有しよう。
改めて、音楽の原点に帰れた濃密な時間だった。
実に楽しいセッションだった。
結局、その日は時間までみんなでセッションを楽しんだ。
その流れで、俺も久しぶりにリューガルドとタッチゲームで対決をした。
多数決での判定の結果、俺が勝った。
リューガルドは不満を言っていたが、俺の勝ちという事実は変わらない。
勝負とは残酷なものなのだよ、リューガルド君。
その後の町でのライブでもテンションはそのままだった。
ちょっと俺達のテンションが高すぎて、観客が着いてこれない場面もあった気がする。
ちょっと反省。
まだクリスは、ライブデビューはさせていない。
リューガルドと話し合った結果だ。
頑張れクリス、上手にはなっているが、まだまだだ。
この町のみんなにも、カホンが入って厚みを増した俺達のライブを見て欲しいし、クリスにも早くこっち側の景色を見て欲しい。
そんな感じで前日の反省を生かしつつ、前日より少しでも観客のテンションが上がる様に心がけたライブも、たった今終わった。
日を増すごとに観客が増えたなというのが実感だ。
ファンも増えた。
当然、リューガルド目当ての女性も増えた。
俺のファンもできた。
野郎どもばっかりなので、少しは女性がいてくれても良いんだけど・・・・
片付けをクリスに手伝ってもらう。
ある程度、お金や差し入れも集まるようになった。
観客が満足してくれた結果だととらえ、有り難く頂いている。
お金に関しては、まだまだライブだけでは生活できない額だが、貴重な収入源の一つとなっている。
クレームも増えた。
うるさいだ、下手くそだ、何を言っているか分からないだとか言ってくる。
ほとんどはファンが守ってくれて、直接俺達の前までくる事は無いが、声は聞こえて来るので俺達にも分かる。
うるさいという件は、申し訳無いと少し思うので、場所選び担当のフレシアに投げよう。
その他は無視して良い。
どうでも良い、じゃあ聞かないでくれ、以上。
こういう人ってはどこでもいるよね。
俺達も少しは有名になってきたかな。
俺達はクリスと別れ、宿屋へ向かう。
毎日、パンパンのスケジュールで、体力的にはくたくたになるが、今日も楽しめた1日になったので良しとしよう。
早く風呂に入って、ご飯を食べて、寝たい。
あーそうか、フレシア様の1日の話しも聞かなくちゃ。
聞いてあげないと機嫌が悪くなる。
機嫌が悪いフレシアはかなり面倒くさい。
機嫌が良くなるまで時間もかかるし。
リューガルドの奴はというと、気楽なものだ。
眠たくなると『眠い、寝る。』と言って、とっとと寝ちゃうし。
あいつはその点に関してはなにも分かっちゃいない。
感謝しろよリューガルド。
今日の反省をリューガルドとしながら帰っていると帰りはあっという間だった。
リューガルドも、ライブにはポジティブな印象で、もう少しアップテンポの曲を増やしたいそうで、何曲かやりたい曲をピックアップしてくれた。
俺もやりたい曲があるので、明日二人でリストを決めよう。
扉の前に立ち、扉を開けた。
「ただいま。」
(ごめんノック忘れた。)
扉開けても フレシアの返事は無かった。
部屋を見渡したら、フレシアは熱心に小さな音量で何かを聞いていた。
「えーあの曲もあるじゃない。」
フレシアがそんな風につぶやいた気がした。
(もしかして曲を聞いてるの?あの本だよね?)
「フレシア、ただいま。」
俺はフレシアに聞こえるように大きな声をあげた。
「ご、ごめんね気付かなくって。・・・・・・お帰り。」
フレシアは白い本を片手に、動揺した顔で突っ立っていた。
今週は無性にパワーマン5000 /when worlds collideを聞きたくなり、CDラックを漁ってしまいました。他にも聞きたい曲を見つけることができたので良かったです。この曲は何も考えなくて無くても良い、のりの良い最高の曲です。ぜひ、テンションを上げたい時に聞いて下さい。きっとお役に立てるはずです。




