第10話 タイマン
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「また今日も帰り遅いの?一体どういう事?この町に来てから、私放置されてるじゃないの。ライブ場所の確保だって、結構大変なんだからね。ライブの評判が良いから、日に日に楽にはなってきてるけど。独りご飯もいい加減寂しいよ。ねえ今日だけ、ご飯だけでもいいから一緒に食べよ。食べ終わったら、また出ていってもいいから。」
出た、フレシアのわがまま。
多少うざいけど、本当にそうだよね。
ライブの場所の確保から俺達の世話まで、色々とありがとうございます。
いくらコミュ力最強のフレシアでも、場所の確保大変だよね。
まあ、自分から買って出たんだけど・・・
いつも本当に助かってるし、今日位ご飯一緒に食べようかな?
「いつもありがとう。めっちゃ助かってるよ。けど、ごめん。夜は遅くなるかもしれないから、約束はできない。その代わり、クエストを早く終わらせる事ができたら、昼ご飯を一緒に食べよう。今日は、なるべく早く終わりそうなクエストを受注するから。ほら、リューガルドも黙ってないで、何か言えよ。」
「ありがとうな、頑張るよ。」
おいおいおい、それだけかよ。
「ふふっ。良いわそれで許してあげる。リューちゃんとトラちゃん二人とも、毎日スケジュールがパンパンで大変だろうけど、頑張って早く帰って来てね。期待しないで待ってるから。けど、慌てちゃ駄目よ、怪我しちゃうからね。私も、昨日の夜に言ったあの場所の確保を頑張るね。店主さんの反応だときっと大丈夫だと思う。」
「じゃあ、頑張ってくる。」
「行ってくる。」
これから1日が始まる。
夕方からのライブが毎日の楽しみだ。
手応えも十分。
この町の好みも
掴めてきた気がする。
ファンもできた。
ライブで毎回見かける顔もいる。
比較的女性が多いのは、リューガルド目当てだろう、いつもリューガルドの前に陣取っている。
今、俺達が取り組んでいるのは観客参加型のライブだ。
コール・アンド・レスポンスを積極的に活用している。
ただ聞くだけではなく、踊って、声を出して、ロックを楽しんでもらいたい、そういう思いからだ。
そうやって、演者と観客で作り上げて行く特別な熱い空間。
その空間で時間を忘れて楽しんでもらいたい。
創造主様、俺達やってやりますよ。
おかげさまで、毎日が凄く楽しいです。
ライブが上手くいっているのもあって、俺達はいっそう充実した日々になった。
朝起きて、夕方前までクエストをこなして資金稼ぎをし、一旦宿に帰り、フレシアに路上ライブの場所確認をして、移動しライブ。
ライブ終了後、セルスと合流してトレーニング。
休む暇も無いが、楽しいので、不思議と疲れは無い。
俺達、まだ若いしね。
セルスの方もセンスが良いのか、短期間のわりにはキックボクシング、柔道ともかなり上達したと思う。
何せこの短期間なので、付け焼き刃なのは否めないし、実戦でどれだけ通用するかはやってみないと分からないが。
俺が案じた通り、リューガルドによる、キックボクシングの熱血コーチぶりは凄かった。
課題を与え、できなければ鬼の反復練習。
けど、課題ができればしっかりと褒めていたのが、リューガルドらしいと思った。
そして、疲れきった後で、俺と柔道の練習。
とにかくセルスは頑張ったと思う。
クリスの実力は分からないが、最悪1個でも俺達の教えた事が出せれば、合格点と言うところか。
できれば勝って欲しいが、セルスから聞いたクリスの実力を推測すると、正直厳しい戦いになると思う。
しかしそのトレーニングも昨日で終了した。
そう、いよいよ本日が本番の日なのだ。
今日の日暮れ前が約束の時間だ。
セルス、お前は練習した事をただやりきれば良い。
勝ち負けはその後だ。
俺達は仕事後に疲れきった体で、必死にきつい練習をこなすお前を見ている。
俺達にも勝負がついた後に、セルスとクリスの関係がどういう風に変わるのかは分からない。
けど、結果はどうであれ、一生懸命に努力した事が人生の無駄になるなんてあり得ない。
少なくとも、俺の前世では無駄に終わる事は無かった。
思い返せば、結果は場面や形を変えてやってきた。
勝負の女神は勝者だけではなく、真っ当な敗者にも恵みをくださる。
それが前世で、長い人生を全うした俺の実感だ。
それから俺達は冒険者ギルドで、昼前には終わりそうな『町外れで遊ぶ要人の子供の警護』を受注した。
昼を少し過ぎてしまったが、昼ご飯の時間にはギリギリ間に合った。
フレシアは、超ご機嫌+めっちゃハイテンション。
ノンストップで日頃の活動の一喜一憂を話していた。
そこに俺達がしゃべる隙は無かった。
聞くと、半分以上俺達との昼ご飯を諦めていたらしい。
いつも頑張って俺達をサポートしてくれているフレシアのストレス解消も兼ねて、たまにはご飯を一緒に食べて話を聞くのも、必要な事だと思った。
そして宿屋に帰り、フレシアの勧めで、いつもはしない休憩を取っていたら、あっという間にセルス達との約束の時間になってしまった。
俺達は約束の場所に向かった。
セルスは既に到着しており、自主練習をしていた。
勝負する男の顔だった。
俺達を確認すると、走ってそばに来た。
「トーランドさんリューガルドさん、俺、頑張りますよ。勝つんで見ていて下さい。」
「お前は頑張った。練習した事を出すだけだ、それだけ考えろ。」
「タックルに入るタイミングを考えろ、冷静な目が大事だ。倒せなくても、体勢を崩せば勝機は生まれる。」
「はいっ。ありがとうございます。」
良く見たら離れた所にかわいらしい女の子が心配そうに見ている。
あれはエーテルちゃんだ。
セルスとの練習初日に挨拶して以来だ。
向こうが俺達に気付くと、深々と頭を下げた。
こっちに来ない所を見ると、セルスから来ないように言われているか、勝負の邪魔にならないようにしてるんだな。
うちのフレシアにもこういう奥ゆかしい所が少し位あれば良いのに。
気が強いフレシアの事だから、こういう場面だったら我先に前に出てきて応援しているに違いない。
まあ、奥ゆかしいフレシアなんて、むず痒くって気持ち悪いな。
そんなこんなしていると、向こうからクリスがこの前の二人を引き連れてやってきた。
堂々とゆっくり来る所が、いかにも悪役らしい。
クリスはセルスに近づき、睨み付ける。
負けじとセルスも負けずに睨み返す。
「おい、セルス。お前が俺に勝てる訳が無い。夢は諦めて、現実に生きようぜ。無駄に頑張らないで、俺達と楽しく生きようぜ。」
「俺は負けない。夢もつかむ。守りたい物があるんだ。」
リューガルドがスッと二人に割って入る。
「ジャッジは俺がやる。状況を見て、俺が勝者を判断し、勝者の手を俺が挙げる。俺は贔屓は絶対にしない。目潰しや頭突き、金的など卑怯な事はするな。した時点でそいつの負けだ、良いな。」
二人は目線をそらす事無く頷く。
「始めっ。」
先手を撃ったのはクリスだった。
大きく振りかぶって右フックを放つ。
クリスの肩の動きで察したセルスは余裕で避けた。
クリスはセルスに近づき、振り返しで左ストレートを放ったがそれもセルスは余裕で避ける。
セルスは避けた低い体勢から左でボディ。
見事にヒットし、クリスは一瞬苦痛の表情を浮かべたが、セルスに
笑顔で返した。
「コノヤロー。」
クリスは大きなモーションで左ストレートを先程より小さいモーションで放つ。
それは、セルスの顔面にクリーンヒットし、思わず苦痛の表情を浮かべた。
そしてクリスは右フックにつなげる。
それをギリギリで避けたセルスは、クリスへタックルを仕掛けた。
しかし、タックルが高く、クリスを倒す所か、体勢を崩す事すらできない。
クリスは両手で背中を殴り、右膝でボディーを蹴りあげる。
「うっ」
セルスは小さなうめき声と共に膝から崩れ落ちた。
「ほら、セルスどうした?俺をやるんじゃないのか?お前の本気ってこんな物か?」
「うおおおーっ」
体勢を建て直し、地鳴りの様な声と共にセルスが放ったのは、すねの裏への強烈なキック、いわゆるカーフキックだった。
これこそが、リューガルドから伝授された、必殺技だった。
見事にヒットし、クリスは上手く踏ん張る事ができない。
それを見計らって、セルスはクリスへタックル。
クリスは見事に背中から地面に崩れ落ちた。
Respect クイーン/We will rock you 言わずと知れたクイーンの名曲です。甲子園の応援にも使われていますね。今回のセルスの気持ちはこんな気持ちではないでしょうか?
いやー、今年の夏も暑いです。暑さをもって暑さを制すのであったらブラジルのバイレファンキを、涼しくなりたかったらボサノバがおすすめです。
ロックだったらフーファイターズの熱いボーカルも良いですね。




