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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第76話 馬

第76話 馬

 風を切って走るその様子は稲妻を連想させる。


 石畳が敷き詰められた地面に蹄鉄が当たると乾いた音が鳴り響き、遠くまで鋭い音が鳴り響く。


 すれ違う身なりが最低限整った人々はこちらを見るものの、直ぐに視線を戻す。


 キノの顔には冷たい風がピシピシとあたり、手綱を握る手はどんどん冷たくなっていく。


 馬から伝わる激しい衝撃に、周りの人が一体何事かとこちらを見つめる冷たい目線。


 常人であれば、あまり好ましいものではない。


 自分達が迷惑になっていることは明白だ。


 しかし、そんな中でもエナは他のことを考えている。


(うわっ! キノの腰細すぎない? 私と同じぐらい食べてるのに?)


 腰に回していた手をフニフニと動かし、細さを確かめていた。


『ねぇ? エナ? エナからもらった新しい抗魔剤の効力ってどれぐらいあるの?』


『正確な効果時間はキノで実験してるから分からないけど、朝に打って午後の今まで女の子でいられたって事は多分半日近くは保つと思う!』


 風の抵抗を受けながらもしっかりと口を開け、会話をする。


『やっぱり私が実験対象か!』


『仕方ないでしょ? 元々ダンジョンに生息するダンジョンクリーナーって言う魔物の死骸を分解する魔法蟲を培養してキノの抗魔剤を作ったり私の護身道具を作ったりしてるんだから!』


『やっぱり、私のやつとエナが投げて使ってるやつは同じものなんだよね?』


『濃度を薄めてあるけどね!』


『どう言う事!?』


『私が使っているのはノーマル種のやつ。だけど、キノに渡しているのは体の中の呪いの魔力にだけ反応するように品種改良してある。それと、私が投げてた魔抗剤で効力を打ち消すやつはダンジョンクリーナーが魔力を食べてその後に死ぬ命令をしてるやつ。魔力的な要素も分解するけど、直ぐに死んじゃうから他の人とかには影響出にくいようにしてる!』


『なるほどね。』


『それにどこに向かってるの?』


 ドンドンとスピードが上がっていき、止まる気配は全くない。


『平民区へ通じる関所! もう着く!』


 前を確認すると、閑静な住宅街の奥に平民区と貴族領を隔てる10メートルは有に超える土壁が木の門で閉じられていた。


『そこの者達! 早馬のスピードを落とせ! ぶつかるぞ!』


 門の真横、壁の中に憲兵の待機所があるのだがそこから二人の軽装の憲兵が出てくると斧を交差させ、馬の行く手を阻む。


 しかし、その様子を見ても減速などしない。手綱を握るだけでドンドンとスピードが増していく!


『止まれ!止まらないと....!』


 斧を真前で構え、大きく振りかぶる。しかし、とてつもないスピードで向かってくる馬が生身の人間に与える恐怖は計り知れない。


 あっという間に大きく写り、ぶつかる寸前まで動けない。


『ヒッヒーン!』


 憲兵の二人にぶつかる寸前で、キノが思い切り手綱を引くと、反り返った馬の足が地面を離れピタッと止まる。


 轢かれるのを覚悟した二人は尻餅を着き、ガタガタと震えていた。


『この門潜りたいんだけど? 休憩中?』


 馬の上からひょっこり顔を出したキノが地面で休む二人に自分のギルドカードと、プルエアが書いた許可書を差し出す。


『は、拝見させて頂きます?』


 怯えた二人がキノのカードを確認し、すぐに返す。


 エナの分の許可証もそのあと直ぐに返された。


『問題ありません、どうぞお通り下さい』


 その声と共に、門の仕掛けを起動させ扉が奥に開かれていく。


『どうもありがとう。お酒の匂いがするし、座ってるから休憩中かと思っちゃった』


『滅相もございません! どうか、我々がお酒を飲んでいたことは御内密に....』


『フフ。貴方達が優しい人なら黙っとく』


 意味深な言葉を吐き捨てゆっくりと馬を進める。


 門が閉じ終り、エナが最初に口を開いた。


『案外簡単に出られるんだね。もっと、厳重に入った記録とかを調べられるのかと思ってた』


『普通はそうよ?』


『え!? 今回確認されなかったのはなんで?』


『私がお酒を飲んでいたことと、女の子が操る馬に怯えていた事を黙るって言ったから。エナの許可証には貴族として有名なプルエアの名前が入っていたし、下手な事をすれば仕事をクビにされるって踏んだんでしょうね』


『それが馬を早く走らせた意味!? それに、行きと同じように忍び込めば良かったんじゃ?』


『ラウンジで、思ったより多い人に見られた。もし許可証のないエナが重要参考人として呼ばれたら惚けられない。許可証があるのに、入った記録と出た記録がなければあくまでも憲兵の落ち度になる。現に怯えて出た記録付けて無かったでしょ? 本人にサインを書かせる必要があるのに馬鹿ね』


 馬の脇腹を蹴って、スピードを出す。


『憲兵の落ち度って言う既成事実を作った訳。怖いな』


『それはお互い様。また飛ばす』


 再び、馬の脇腹を蹴って更にスピードを上げた。


 エナもキノにピッタリと身体を密着させて、あわよくばこの時間が永遠に続いてほしいと願った。


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