第72話 パレード
第72話 パレード
リンゴーン リンゴーン リンゴーン リンゴーン
遠くの方から規則正しく鳴り響く鐘の音が聞こえてくる。
窓な外を見ると、すぐ下の路地には武装した数百人の歩兵が並び、騎馬隊が豪勢な馬車を取り囲むように警備していた。
列は遥か彼方まで続き、王領から伸びているといっても過言ではない。
「何か凄い人」
「今日は、お姫様の研究日だからね」
「研究?そのパレードがあるからさっきの爆発現場を検証することもなく復元したのかな?キノさん、狙ってやりました?」
「キノだったらやりかねないわ。実際のところは問い詰めた所で口を割らないだろうけどね」
この光景に馴染みがないエナだけがそわそわしているのだが,キノやユエル、プルエアの3名はまたかと言うように見慣れていた。そして、エナの疑問には面倒見の良い姉を演じるプルエアが答えた。
エナから疑いの目を向けられても、案の定キノは全く口を開こうとはしていなかった。それどころか、次第に外の雰囲気へとエナの視線も注がれて目が離せなくなっていった。
「シュリエ姫の見解研究。数年前まで異世界の人がこの国に平気で出入りしてたけど、戦争が終結して暫くしたら綺麗に消えていた。その真相を知るのは誰もいない。様々な憶測が未だに飛び交ってる」
ケーキを頬張りながらプルエアが淡々と説明する。
「だけど、いなくなってから異世界に物資を送るって言うのがおかしな話。国王が何か隠してるんじゃないかとシュリエ姫はああやって異世界に門を繋いで自分で異世界に行って真相を確かめるつもり」
次はキノが淡々と話す。
「それって、自分の父親を疑うって事ですか? ならこんなに目だったら不味いんじゃ?」
「それに関しては大丈夫。今回ももうすぐ始まる」
バァぁぁぁぁン!
雷のような一発の大砲が鳴り響いた。
「外を見て」
キノに促され、外を見てみると王城の真上には巨大な国王の胸から上が姿が映し出されていた。王冠を被り、煌びやかな服に身を包んではいるが浮きだった首の骨からは無骨な武人であることも感じさせる。そこに映っているのは現国王。それは誰が見てもよく分かる。
「何あれ?」
「何かの魔法で自分の姿を映し出してるみたい。あの映像は下民区には届かないからその言葉をよく聞いて」
次はエナがプルエアの疑問に答える。
唾を飲み、見守る。親に向かってあからさまに反抗する行為をどうするのか気になって仕方ない。
「シュリエよ、今回もまた研究に行くそうだな!!」
物凄い剣幕に加え、重苦しい低音ボイスが響き渡る!
「頑張ってねー! お父さん応援しちゃう!」
先程とは比べ物にならないほどとろけ切った甘い表情を浮かべる。
「ちょっと!! 父上、毎回毎回私が研究する時にこんな大掛かりに激励するのやめて下さい!! 国民が驚きますよ!」
姫の姿も虚空に映し出された。
「だって~、国の外に出て魔物がウロチョロしてる平原に行くって言うんだもん! お父さん、心配」
「街中で、不安定な実験はできませんもん。それが嫌なら異世界人が作り出した空間を超越する門を潜らせて下さいませ!」
「ならん!! 城の中にあるあれを潜るのは禁止だ!」
「だったら自分で繋いで真相をこの目で確かめます!」
「えー」
駄々をこねる子供のような口調で不満を漏らす。
「シュリエ、あんまり父さんを困らせるなよ? あいつらは何か知らないけど、来なくなったのだ」
茶色い髪の毛オールバックで金色の鎧に包んだ青年が国王の真横からひょっこりと顔を出す。
「あ、こら!! 勝手に顔を出すんじゃない!!」
「だって、俺じゃこの通信機使えないからな。それより、また燃えるゴミに折れた剣の残骸が入ってたって母さん嘆いていぞ?」
「お前、こんな国民の前でそんな堂々と!」
「こうでもしなきゃ、気をつけないでしょ?」
どこの家にもありそうな話題が国の象徴である城の頭上で行われていた。
「お兄様!! そんな居心地が悪かったから帰るみたいな友達の家感覚の訳ないでしょ!! 私は彼らの口からなぜ来なくなったのかを聞くまでは納得しませんからね!!」
「別に止めやしない。知りたいことがあるならばそれに見合った強さを身につけろ? それはこの国全土に言える!! 何かを掴みたいなら各々強さを手に入れろ!」
その指導者らしい言葉に国の彼方こちらで歓声が上がる。その歓声が落ち着かぬうちに、城の真上に浮かぶ3人も消えていった。
「ってなわけで、別に知りたいなら強くなれスタンスだから、問題はないよ?」
「この国のそういう所怖い」
キノの説明を聞き、納得した部分もあるのだが向上心が生む恐怖心をエナは感じた。
幼少期に暴力で支配され、親に逆らえなかった自分の境遇とは正反対に行動するこの国のお姫様に言葉では言い表せないような恐怖を感じて仕方ないのだ。
自分の価値観では到底図る事のできない、異物とも形容できるようなそんな未知のものに対しての嫌悪感すら抱いてしまう。




