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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第29話 御伽話と特性

第29話 御伽噺と特性


 部屋は小刻みに揺れ、逃げ場は何処にもない。いっそのこと自害でもして死に戻る手もあるにはあるのだが、リーダーを始めとしたこのパーティメンバーにその覚悟は毛頭ない。


「下から何か来るぞ!部屋の入り口を背にして固まれ!」


 その一言を聞くや否や、ユエルはプルエアをお姫様抱っこの要領で抱き抱え、重いバックパックを置き去りにして走る。


 ガジンが大楯を構え、その後ろにゲルド、プルエア、ユエルの三人が身体を出来るだけ小さくし、様子を伺う。


 部屋の地面が割れ、何かが出てきた。身体は血のように紅く、瞳の色はエメラルドグリーン。龍と形容するに相応しい蛇を彷彿とさせるその体には鱗がびっしりと生え、数十メートルもの巨体が地面から姿を表した。


「何コレ?こんなドラゴン見たことない...」


 プルエアがガタガタと杖を持ちながら震え後ずさる。


「どうみたって上位の魔物だ。なんでこんな低レベルダンジョンにこんな奴がいるんだよ?なぁ!?ゲルド何でだ...」


「そんな事知る...」


 互いの言葉が遮られる。地面から自分の体を引き摺り出したドラゴンが真っ先に向かったのはガジン。音もなく、上からガジンの身体の上半身を飲み込み盾もろとも齧り付いていた。


 葡萄のような果物を口に入れた時のようにプチンと音がすると、ガジンの身体が黄色い火に包まれ、なくなって行った。


 跡には龍の顎の形が刻まれた使い物にならない盾だけが音を立てて地面に落ちる。


「ギュイイ!」


 齧り付いた筈の獲物が口の中で急に無くなり腹を立てる。スルスルと壁を伝って天井に腹を着けてそのまま巨体を天井に固定する。


「何してるんだあれ?」


「分かりません!でも、急いで撤退します!」


「撤退って!目と鼻の先に金があるんだぞ!!」


 後ろの鉄柵に向かうプルエアとユエルに向かってゲルドが吠える。


「貴方こそ何言ってるんですか!?このパーティのタンクが一瞬でやられたんですよ!?私達とはレベルがかけ離れすぎてる!死に戻り出来るのも致命傷を受けた時だけ!一発で死んだらそこに死体が残るだけなんですから逃げるんです!」


「でも、どうやって逃げるの!?通路は塞がれてるよ!」


 不安に顔を歪めたプルエアが今にも泣きそうなのを堪えて訴える。


「私が開発した『分析』の魔法を使います!元々は身体の傷や毒を解析する為の魔法ですが、応用すれば宝箱も解除できるので魔力を帯びてるコレも解除できます!』


 パチンと指を鳴らし、自分の錫杖を何もない空中から出し柵に翳す。


「分析!」


 柵の前で短く唱えると視界を覆い尽くすほどの魔法文字が浮かび上がる。


「プルエアさん!使い魔と視界を共有する様に私と視界を共有!構造式を破壊するように妨害の魔力を流し込んでください!ゲルドさんはその間、天井の魔物を警戒!!」


「分かった!」


「あ...ああ」


 プルエアが脚に付けた杖を取り出し、ユエルの腕を抱き締め視界共有を行う。放心状態のゲルドが気の抜けた返事をする。


「何この命令式?無属性なのにこんな複雑なの見た事無い」


 慎重に分析しながら言葉を溢す。


「量は多いね。でも、注入する魔力は少なくても解除できる」


 ユエルの言葉を聞くや否や杖の先端に魔力を集中させ、柵をなぞる。ゆっくりとだがなぞった部分が風化していき形を失っていく。


「集中してるところ悪いが、あいつが起きたら止めるのは俺だよな?」


「そうですよ?無惨に死にたく無いなら頑張って臓物をぶち撒けてでも抵抗してください」


「怖い事言うなよ。ガジンが一発で負けたんだ。俺が抑えられるわけないだろ?」


「別に抑えられなくても良いんですよ?どんなに傷ついても私が回復しますので、突っ立ってくれさえすれば大丈夫です」


「発想が怖すぎる!!」


 ユエルが小声で静かに喋るのとは対照的にゲルドが大声で喋る。


 流石にまずいと思ったのかハッと天井の龍に視点を移す。目は開かれ三人の姿が映っているのだが、一向に攻撃してくる素振りがない。


 細いベロをシュルシュルと出し何かを伺っている。


「取り敢えず、大声で叫んでも大丈夫ってことは分かった。そのまま気を引いといてね。いざとなったら...多分...使い魔で助けるから」


「おい?今、多分とか聞こえてはいけない言葉が聞こえたんだが?」


「言ってない」


「言った」


「言ってない」


「言った」


「ねぇ?私が回復してあげるって言ってるんだから、黙ってくれない?」


「はい、ごめんなさい」


 リーダーとしての威厳は無く、新人にタジタジになっていた。


「なぁ?後どれぐらいで解析が終わる?」


「まだ大分掛かる。私が解析をして先輩が壊しても直ぐに治ろうとするので大分掛かります!」


「なら、出来るだけなるべく早く頼む」


 不安がる声がする方向に目線を向けるとゲルドの身体からは薔薇のような花が咲き誇っていた。


 柵の解除に集中していたプルエアとユエルがゲルドを見ると植物の温床の様になっていた。


 上を見ると、天井にへばりついた竜の鱗が薔薇のように咲き乱れ、その一輪一輪から鱗粉が地面に落ちて来ていた。


「障壁を貼って隔絶します!動けますか!!?」


「脚に根が絡まって動けない...俺の前に早く貼れ...」


「もっと近づいて下さい!広げすぎると強度が弱くなる!引き摺ってでも入れます!」


 柵から離れようとしたその瞬間、プルエアがユエルの脚に絡みつき、ユエルの顔面が地面に減り込む。


「何...する...んですか!?」


 嗄れた声で鼻血を拭いながらプルエアを問いただす。


「外に出ないで!!もしあんたまで鱗粉に触れて動けなくなったら回復術師を失う!ただでさえ絶望的なんだからそれは絶対にダメ!」


「早く...障壁を...貼れ!柵での作業を考えて...魔力消費を最小限...に抑えろ!」


 やっとの思いでボロボロになりながらも顎を動かしている姿を見てようやく自分が置かれている状況を理解した。


「障壁!」


 自分の無力さを呪いながらプリーストの職業魔法を唱える。ユエルとプルエアを囲う様に半球状の光の膜が二人を包み込む。


 その中にいるだけで、小さな傷は癒えていく。


「この柵を解除したら直ぐに貴方を引き摺ってでもこの部屋から離脱します!」


「ああ...。頼む。もう身体が...なんだか....クラクラするんだ」


「しっかりしなさいよ!リーダーでしょ?あいつはずっと天井で動かないんだから大丈夫。絶対間に合う!」


 キュルキュルキュ


 龍が喉の奥を鳴らし、身体を譲る。すると、今まで以上に鱗粉が降り注ぎ、ガルデの身体は更に鮮やかな花で彩られる。


 そして、両目から赤い涙が滴り落ちたその瞬間。


 天井に逃げた龍が舌を数回出すと側面の壁を伝って下に降りると大きな口を開け、ゲルドを飲み込んだ。


 生きたまま口の中に捕らえられ、生きた心地がしない。


「最後に、リーダー...らしい事....しないと...な」


 右の手に握られた黄色い硬玉。それを思いっきり握り潰す。


 龍の口の中が光だし、そのまま爆発した。


 ギャァァァ!


 口の中から白い煙が立ち上り、鎧の破片が鱗を突き破って頭から出てくる。


 先程までの余裕は無く、ただひたすらに痛みで部屋の中をのたうち回っていた。


「何が起きたの!?」


「見ての通り、生きたまま食べられたから自分の魔力で爆破させたの」


「爆破!?そんな事をしたら!?」


「身体が粉々になって死に戻れ無いかもしれない。だけど、腹の中で確実な死を迎えるよりはマシだと思う。それに見て」


 プルエアが指差した先では煙を口から噴いた竜が白目を向いて地面に伏している。


「防御力の高い前衛職でも死に戻れない危険がある。そんな奴に紙ほどの防御力しか持たない私達が攻撃されたら確実に戻る暇なく、致命傷を通り越して死亡よ!死にたく無いなら手を動かして!!」


「ダメです!プルエアさん!!?」


「そんなに死にたいの!?」


 手を動かさずに口だけを動かすユエルに苛立ちを感じる。


「攻撃が来ます!!」


「は?」


 部屋の中に立ち込める爆発の煙。その中で、一つの影がのっそりと身体を起こす。赤い目と目が合うとプルエアの身体が早く脈打つ。


 先程まで地面に伏して口から煙を吐いていた龍を探そうとしたその瞬間、ユエルが錫杖を構えたそこ目掛けてデカイ頭が突進してくる。


 ガキンと鈍い金属音が鳴り響き龍の頭を跳ね返すのだが、間髪入れずにまた直ぐに頭をぶつける。


「これ以上の解析は無理です!小さな穴は開けられる筈なのでせめてプルエアさんだけでも逃げてください!」


 頭から赤い血を噴き上げ、目が潰れる。身体には幾重にもヒビが入っていたのに暫くするとその傷が癒える。


 いくら攻撃が届かなくても障壁を通して攻撃する力が増していくことが見て取れる。


 そして遂に障壁の補修が追いつかず、小さいヒビが浮かび上がる。


「だーれだ?」


「え!?あ?ちょっと!?」


 この状況で絶対にやってはいけない子供の遊び。


 後ろから近づき相手の目を隠して名前を当てさせる。


 咄嗟に手を退かそうと爪を立て目隠しされた手に深く突き刺してしまうが、一向に視界は明るくならない。


 杖を障壁の外へと投げ出し、一言唱える。


「スタンライト」


 聞き慣れない魔法の詠唱。障壁に干渉することなく外へと飛び出た杖が爆発でもしたのかと言う程黄色く迸る。


 目隠しされていても分かるほどの強烈な閃光。視界が開かれるとさっきまで好戦的であった龍が悶え、体の自由が効いていなかった。

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