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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第18話 釣り

第18話 釣り


「思ってたよりも深い。じっとしてお前はいい子だな」


「クゥーン...」


 ゆっくりと狭くなる影を見つめながら寂しげに低く鳴く。

 主人は相変わらずマイペースなのか僅かな笑みを浮かべ狭くなる影に湯掻いて臭みを取ったドラゴンの腸を釣りのように垂らす。


「捕まえた」


 キノが呟くと目にも止まらぬ早技で手繰り寄せ、鍋の中に影から出てきた部分を戻していく。あっという間に外套の本体が吊り上がり、そのまま宙に放り投げられる。


「釣られた~!!!?」


 漸くそこで自分が釣り上げられたことに気がつきそのまま地面に落ちる。キノが腕を出し、キャッチしようとするのだが、近づけていた手を離しそのまま地面に顔から激突した。


「キャッチして貰えないんですか?」


 地面に顔を付けたまま消え入りそうな声を絞り出す。


「助けたかった。でも、重そうだった。臭いし、さっきより丸っこくなってる」


「せ、せめて、強化が使える午前に落ちれば助けて貰えましたか?」


「それは無い。だって、午前で放出の基本魔法が使えなかったら、腸で釣り上げることもできなかった。そのまま糸上で釣り上げると身体がスライスされかれないからわざわざ腸で包んで糸を使った」


 ぺっしゃんこになった外套の本体をひっぺ剥がし、顔を見ながら淡々と喋る。


「あのままだったら?」


「チビ助の魔力が充填されるまでの間、あの空間で一人ぼっち」


「それは嫌だ」


 顔をどうにか横向きに振り、ビクビクと怯える。


「口の周りベタベタだけど食べた?」


 本体の口の周りを見ると白くテカテカ杜光っていた。


「多分な。あれがオヤツ?」


「まぁ。そんなとこ。何かは知らなくていいから」


 気にしてない様子でキノが調理を再開する。


「料理仕上げるから壁にでももたれかかっておいて」


 ビタンと壁際に放り投げ脱力しながらもたれ掛かるのを確認すると調理に取り掛かる。


「ん?それは?」


 チビ助が座る鍋の横に松の葉が敷き詰められその上にキノの顔と同じぐらいの大きさの二つの肉が置いてある。


「ヘビードドラゴンの胸のあたりの肉。パサパサしてるから尾っぽの肉と混ぜるの」


 地面に膝を着き、マジックバックから四角い巨大な木製のまな板を取り出す。両手を広げたぐらいの大きさで正方形のまな板の上に肉を乗せる。


「今回は毒とは無縁の素敵で美味しい料理が食べられそうだな?」


「前のも美味しかったでしょ?」


 刃が細く、採取ナイフよりも長く先端が魔女のブーツのように少し上を向いて僅かに湾曲している2本のナイフを構え肉に刃を入れる。


 サクッと切れ、肉が刺身のように綺麗に盛り付けられるのかと思いきや、ナイフを振り下ろしガリっと音がして下まで切断できない。


 骨を避けて捌くのかと思いきやノコギリの様にナイフを動かし、そのまま切断していく。


「おい?それ?大丈夫なのか?」


「大丈夫。このナイフ、小さなトゲトゲが刃に付いてるからこうやって動かしても刃毀れしない」


「そういう意味じゃなくて、骨まで食べるようなのか?って意味なんだけど...」


 小声で心配そうに呟くのだが、カンカンとナイフを振り下ろし、ミンチにしていく音のせいで本人には全く聴こえていない。


段々と肉が解体されどんどん潰されていく。


「さて、完成」


「おいコラ!ちょっと待て!」


「何?」


「完成って正気か!?それが料理なのか!?」


「そうだけど、何か問題でもある?」


「問題しかねーだろ!まな板をよく見てみろ?」


 澄ました表情のキノとは対照的に感情を露わにしてまな板を指差す。


 ゆっくりと目線を落とし自分が料理したと頑なに言い張るまな板にかわいそうに張り付いた挽肉のような物を見る。


「見たけど何?」


「お前、マジか?」


「別に見た目なんてどうでもいいでしょ?料理なんて栄養が取れればなんでも。新鮮だし、生で食べても大丈夫。ほら、美味しそうに食べてるじゃない?」


 チビ助を近くに寄せ、指に付けた肉を舐めさせる。嫌がっている様子はないのだが、喜んでいる様子もない。尻尾も動いていない。ただ、無表情なのが見て取れる。


「犬畜生と食べる物が同じなのかよ!?あー、もう!俺にやらせろ!」


「料理できるの?」


「少なくともお前よりはできるわ!」


「いや、その体の小ささで?って意味なんだけど?」


「お前の体を操るから問題ない!それと塩で茹でてる腸は何に使うんだ!?」


「ん?あれ、私何のために茹でてたんだ? 腸が手に入るといつも茹でてるけど特に何も使わない」


「クソが!!!?取り敢えず、薪と鍋を出して俺が言う通りに組み立てろ!!!」


「....分かったよ」


 あまりの剣幕に普段感情を出さないキノがタジタジになり、指示の通り組み立ていく。


「これで良い?」


「そんなんで充分だ。俺も部屋中走り回って元の体型に戻ったから外套に戻るぞ!」


「体型戻す必要あった?」


「あるわ!戻さないとキノの身体から吸う魔力の割合が多くなってぶっ倒れるぞ!俺が!」


「私がじゃないなら別にいい」


 キノが困ったようにクスリと笑いフードを下ろすと外套へと戻っていった。


 キノが新たに焚き火を起こし、大きな中華鍋の様な平たい鍋でお湯を作れと言うのが指示でそれが綺麗に行われていた。そして、腸を茹でるのとは別の小さな鍋にもスライムの身体を入れ加熱すると水にする。


「じゃあ、マジックバックの中に入っている乾燥した香草の小瓶を全部取り出せ」


「香草?あったかな?」


 マジックバックの中に手を入れてかき混ぜるように探すのだが、中々お目当てのものが見つからないようだ。


「よく探せ!どうせそこの方にあるんだろ?」


「本当にあった」


 燻んだ緑色の小瓶が出てくる。入れたとされる本人でさえその存在を忘れ去っていたようだ。


「それを三振りぐらい足して全体を馴染ませろ」


 小瓶を開け、中身を少量だす。忘れていたとは思えないほど香りが強く、ナイフで叩くと更に香りが部屋に充満した。


「クシュん!クシュん!」


「チビ助どうかした?」


「この匂いがダメみたいだな。少し、香草があんまり混ざっていない部分を作っておけ」


「はいはい」


 手早くナイフで香草が切り刻まれていき、肉に混ざっていく。


「粗方混ざったな。2本のスプーンで小さな鍋の中に適当に落としていけ」


「え?ミンチにした後に茹でるの?効率悪くない?生でも食べられるし...」


「確かに生でも食べられる。だけど、ダンジョン探索で疲れている体に生のものを入れたら身体が冷えてその後の探索が大変になる。少しでも暖かい物を取るのが踏破のコツだ」


「フーン」


 テキパキと香草が混ざった部分をスプーンで落とし、鍋に入れていく。手際が良いせいか数の割にすぐに終わった。


「次はあれだな。腸を調理する」


「正気?食べてもゴムみたいで美味しくない」


「正気。何に使うか思い出せないで腸を塩茹でしていた奴よりは正気」


 魔力を糸状にして茹でた腸を鍋から引き出す。


 地面につけないように慎重にまな板まで運んだ。


「これをどうする?」


「取り敢えず、どっちか一方の入口を魔力で縛ってくれ。中に香草があまり入っていない余った肉をスプーンで詰めていく」


「良いけど、何の為に?」


「美味しくする為」


 片方だけ糸状の魔力で縛るとスプーンで肉を掬い上げ中に詰めていく。慣れないながらもしっかりと詰まっていった。


「動きはこっちで補助してやるから楽だろ?」


「多少はね」


 無駄な動きが出ないように外套を操りキノの身体を補助している以上に動きがスムーズになっていく。


「上の方までみっちり詰める?」


「いや、詰めすぎると弾けるから押してみて指の形が残るぐらいの硬さが丁度いい」


「分かった」


 二割程の余裕を残し、肉を詰め反対側もしっかりと魔力の糸で縛り上げる。


「次は?」


「大体10センチぐらいで良いから違い違いになるように捻っていけ」


「分かった」


 手慣れた手つきで捻っていき、約40個に分けられる。


「後はボイルだ」


「ぼいる?何それ?」


「いや、もう一度鍋に戻して20分茹でるの言い間違い」


「変なの」


 塩茹でされて肉を詰めた腸を鍋の中に戻すのだが油がベットリと内側から腸に張り付いていて触るとブニブニしていて正直気持ち悪かった。


「蓋はしなくていい。後は肉団子の方が出来上がっている筈だから、茹で上がるまでそっちを食べるぞ」


「分かった』


 グツグツと煮えたぎる中華風の平べったい鍋を外套の裾で掴み持ち上げる。


「あっちぃ!あっちぃよー!」


「あ、ごめん」


 肝臓を胃に包んで灰に入れて放置している火にも気をつけて調理を進める。


「いつもの癖」


「料理の度にやられたら身体がいくつあっても足りねーよ!本当は料理でこき使った腹いせだろ?」


「さて、この味気のないスープ食べよ」


「無視してるんじゃねーよ!」


 バックからスープ用の浅い皿と肉団子を食べるための木製のフォークを取り出すと汁と肉団子諸共皿で直接掬う。


「おい!年頃の女の子がはしたない真似をするんじゃありませんよ!」


「別に。お世辞にも美味しそうとは思えない料理にはこのぐらいで良い」


「お前が子供だったら躾が大変そうだ...」


 溜息混じりに言葉を吐くも、それを実行する力は無いようだ。


 しかし、肉団子を煮込んだだけの簡素なスープでは食欲をそそられないのも事実。


 正座して、腰を下ろし限りなく透明なスープを一口啜る。


「何これ?」


 無色透明な見た目からは想像できないほど味が濃い。適度な塩気と香草の風味が食欲を刺激する。


「ハムハグ!」


 辛抱ならないという表情で口の中に肉団子を放り込む。コリコリとした軟骨の食感にほろほろと優しく崩れ落ちるお肉の旨みが口の中いっぱいに広がり、すかさずそこにスープを流すと先程よりも重厚なスープを楽しめた。


「生と全然違う」


「動物の肉は新鮮なら生でも食べられるが、火を通すと余分な脂身が適度に染み出して全体を食べやすいように馴染ませる。この部屋の壁から地中に含まれるミネラルが出てる。さっきのドラゴンは大量にそのミネラルを食事として摂取していた様だから肉団子からも適度にスープに塩分が溶けて良いスープになったんだ」


「へー、やっぱりそのままだとさっき影の中に食べに行ったお肉もしょっぱかった?」


「少し塩辛かったな。まぁ、食べられ無いことは無かったが...」


「そう。脳みそを生で食べ切った奴の料理とは思えない程美味しい料理」


 その何気ない一言に凍りついた。先程食べた知らなくていい筈のおやつの正体を知ってしまったのだ。


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