第13話 2人目のパーティメンバー?とフルレイドパーティ
第13話 第二パーティメンバーとフルレイドパーティ
「一緒にお水のも」
紫色に染まった核をマジックバックの中に仕舞い込み、色が青いままのやつも一緒に入れる。三つほど抱え込み、端に置いてある鉄板に置く。
地面に敷き詰められた煉瓦を二つほど外し、コンロのようになる様組んでいた。
「ふぅ」
壁にもたれ掛かり、足を伸ばす。近くに転がっていた火打ち石を組んだコンロに入れ、魔力で編んだ糸に繋がった鏃を素早く投げ込み、火花が散ったと共に回収する。
パチンと小さな火がつき徐々に鉄板を暖めていく。
「バッグの中は狭い?」
外側に付いたポケットから飛出す仔犬。身体は灰色でふさふさとしているのだが大きさは手乗りサイズでしかない。
キノを親だと思っているのかその場でキャンキャンと周り、遊びに誘う。
「フフ。あんたの親は私に殺されたのに呑気だね」
人差し指を出し、それにじゃれつくのがまた可愛い。
「呑気なもんだなぁ?前の壁に水が出てくる悪趣味な彫刻があるのに、現地調達するなんて考えられないぞ」
聞き慣れない声が耳に届く。
「誰?」
周辺を見回すが誰も居ない。
「俺だ! 外套だよ?」
「あんた喋れたんだ。お水飲んでみる?」
「リアクション薄いな。頂こう!」
壁に取り付けられた悪趣味な大理石のライオン。大きく開け広げられた口から水が出て来て、少し下の壁に固定された水飲み台に貯まる。
そこから水を少し掬い外套に掛けた。
スーッと吸い込まれていき、次の瞬間外套から水鉄砲のように吐き出される。
「なんだこりゃぁ?」
「毒。何も知らない冒険者をここで殺すための罠」
「休もうと思って水を飲むと二度と目が覚めなくなる。鬼畜だな」
「だから、安全な水源が必要。専用の解毒剤があれば気にしないけど」
そんな事を1人でに呟く。
鉄板に置いたところてん状のスライムの面を摘み手でひっくり返すと接していた面が熱でフツフツしていた。
「できた」
角を指でちぎり、仔犬の口にスライムだったものを近付ける。ハムっと口に含むとコクコクと喉を鳴らし、中身をドンドン飲み込んでいく。
「膜まで飲んじゃう?」
飲んでいくうちに身体が大きくなり、最終的にスライムを口に含みそのまま飲み込んだ。大きさは手乗りサイズから抱えられる小型犬ぐらいの大きさになる。
「成長期だね」
もう一つ中身がフツフツし始めたスライムの角を千切る。
勢いよく透明な水が吹き出し、急いで自分の口に含む。
よっぽど喉が渇いていたのかチューっと一気に中身を飲み干した。
「ふぅ」
手には水袋のようなスライムの膜が残る。
「なぁなぁ!俺にも水くれよ!」
「仕方ない」
渋々と鉄板の上に置かれた最後のスライムを持ち上げ、マジックバックから取り出した木製のマグカップに水を入れる。
「はい、どうぞ」
そう言って、二つのスライムの膜を外套に押し付け吸収させる。
「おい!水じゃなくて、これじゃあ残飯処理じゃねーか!」
「分解すれば水...の筈。私にとってはご飯でも無いし。吐き出さないって事は食べられたんでしょ?」
「まぁ、そうだけど...」
「ワン!」
それを笑うかのように仔犬が吠える。
「それにしても、この魔物は大人しいな。さっき戦ったのは目が血走っていて凶暴そのものだったのに...」
「これ付けてないからね」
掌には魔物を解体する時に出た指輪サイズの白いリングがいくつも置かれていた。
無地にのデザインに黒い線が横に引かれた簡素なデザインなのだが、なぜか惹きつけられる。
「何だこれ?」
「服従の指輪。体内に埋め込まれると凶暴化して親とされる指輪を持っていない冒険者を襲うようになる」
「文字通り、ここは金で全て買い取られてる訳か」
「最後の部屋にいるボス以外はね」
「でも、面倒くさい事するな。マンパワー戦略で人をどんどん投入すりゃあ、直ぐに勝負は着きそうなのによ」
「攻略が目的なんじゃなくて、子息に気持ちよく攻略させるのが目的。その証拠がもうすぐ来ると思う」
その言葉を呟いた途端に先程まで大人しくしていた犬が喉を鳴らして威嚇をしながら来た道を睨みつける。
「どうしたんだ?急に威嚇し始めだぞ?」
来た道を覗き込み、軽く息を吐く。
「探知」
ブーツを軽く鳴らし、辺りの位置情報を頭に入れる。
「早いな。人数的に複数パーティに切り替えたか。鉢合わせると面倒、ここでやり過ごす」
「おいおい!こんな開けた部屋でどうやってやり過ごすんだ?奥に進んだ方が無難だろ?」
「進むのは無理。ここからは魔物のレベルが高くなるし、私1人じゃ最終部まで辿り着けない」
「詰みじゃねーか!」
「普通なら。アサシンの私ならどうにかなる」
もたれかかっていた壁に指を触れる。すると、炙り出しのように文字が現れた。
(隠し部屋)
浮き上がった文字がある煉瓦を軽く押す。
壁の一部が折り畳まれ、奥に小さな部屋が現れた。
「隠し通路か?」
「そう。ここに入るよ」
火を消し、中に鉄板を入れ自分達がいた痕跡を全て消す。
何かを思い出したように、紫色になったスライムの塊をマジックバックから取り出し、彫刻の口の中に貼り付ける。
入り終わると、壁の煉瓦が組み変わり変哲もない部屋に戻り、すぐさまシルバーメイルの鎧に体を包み込んだ者達と槍を携えた軽装の冒険者がゾロゾロと入ってくる。
どいつも悪趣味に高価な装備に身を包んでいる。
銀の分厚い胴当ての付いた西洋風の鎧に傷一つ付いていない銀のレギンス。シルバーシリーズと呼ばれ、冒険者の中では最高の性能を誇る。
そんな装備を付けた屈強な男達が12名、それぞれ異なる剣や斧に槍を持っているのだが、共通して全身を隠せる大きさの盾を背負っていた。
その後ろにはやけにふさふさした黒い動物の毛皮で作られたマントを羽織り、杖や大型の弓を携えた細身の男達、8名が列を成す。
「さて、お前達!最初の休憩所だが、今日は水だけ汲んで先に行く!目的は分かっているな!」
全身を鎧で包み、中年のオールバックで毛むくじゃらの熊のような風貌な男が甲冑を脱ぎ捨て前へ出る。
『『『はっ!御子息様の新パーティの結成祝いに気持ちよくこのダンジョンを踏破して頂く事が目的であります!』』』
後ろに並ぶ全員が声を合わせて復唱する
「全くもってそのとぉーり!我々はこれから第一先発隊として入りレベル高い魔物のみを倒し最新部まで進み、新パーティが着き次第ボスの体力を九割減らし留めを譲る!第一先発隊の最低報酬は1人7000万エール。男爵である我々でも、子爵の位に付け維持費までも払える額だ!」
「おおー!!!」
「今回手柄を立てうまく契約更新されればまた甘い蜜が吸える。いや!ゲルド様の家の地位が向上するほど俺たちも、大公になれるかもしれん!ワシについてこい!」
「「おーおー!」」
先頭の男が片手剣を抜き、後の者もそれを追って走り出す。演説を聞いていた荷物持ちの数人が持ってきた水筒に水を組み終わったらしく慌ててさきの通路へと消えて行った。
それを隠し部屋の隙間から見ているものが1人いた。
「戦士に、ランサー、アーチャーに、アルケミストとエンチャウンター。二十人だから、フルレイドパーティだとして後三分隊はくる」
入り口で貰った地図にその情報を手早く書き込んだ。
「おいおい!悠長にこんなことしておいていいのか?急いで追わないと奴らが攻略しちまうぞ!」
「問題ない。ゲルドのパーティは酒癖が悪い」
「はぁ?」
突拍子のない一言に首を傾げるような声を出してしまう。
「さっきいた戦士2人に魔法使いの三人は大して酒も強くないのにたくさん飲むからいつも活動は深夜だし、二、三日は動けない。単純計算で、今が9時でダンジョンに入ってから3時間経ってる。ここから最新部までは9時間は掛かるからフルパーティ分の80人がが揃うまでには18時間の猶予がある。最低でも18時間は踏破されない」
「ほう。なら安心か?」
「取り敢えずはね。どうやってこのダンジョンを攻略するのかも考えてないからそれまでに考えないといけないけど」
「何!?正面突破じゃないのか?」
「隠密に適したアサシンはそんなことできない」
「お前ならできそうだけどな」
「それより、お腹減ったから食事にしよ」
「腹が減っては何とやらだな!携帯食は何があるんだ?」
「無い」
「は?」
「干し肉や魚の塩漬けなんて食べたく無いから携帯食なんて持ってきてない」
「何甘えてんだ!この部屋を見てみろ!食べ物があると思うか!?」
隠し部屋を見回すがここには何も無い。角の方にキノコが生えているが、さっきいた部屋の半分程でどちらかと言うと箱に近いのだ。
「前のパーティはお坊っちゃん、お嬢ちゃんでダンジョンで野営を張ることなんてなかった。だから舌が肥えたしそれとは別にダンジョン野営したい相反する感じになった」
「語ってんじゃねーよ!どうすんだ!?この犬っころ食べちまうか!?」
「キャウン!」
何かを察したのか怯え出し、部屋の角でビクビクと小さくなって震え出した。
「チビ助にはちゃんと役割があるから」
その言葉が、チビ助の耳にはこう聞こえる。
「チビ助にはちゃんと役割があるから。おいしい焼肉になるって言うそれはものすごく立派な役割がね。だから怖くない。こわくないよー」
ちびすけには極悪非道で薄ら笑いを浮かべながらゆっくりと近づいてくるように見えたと語る。
自分はもうここまでなんだと腹を括った。
「そんなにブルブルしてお腹減った?少しどいてね」
チビ助を退かすと地面の割れ目から生える傘の大きいキノコをあるだけ採取する。
「おい!まさかだとは思うがそれを食べる気か?」
「食べる。大丈夫、毒があっても別の毒を調合してうまい具合に中和するから」
「いや、本当に不安でしかない!」
「そもそもあんたも食べるの?姿を見せないで声だけする奴にあげる飯はない」
「これだけ話しておいて薄情なやつ。生きる外套と言われた俺の姿を刮目しやがれ!」
外套の裾から黒い液体が一滴だけ地面に垂れる。
そのシミが拳程の大きさになるとずんぐりむっくりとした黒い小人が現れる。
口は白く、目は薄っすらと光っているのだが臓器として存在するのではなく、目という概念がそこにある感じだ。
「どうだ!魔法具師チェ何とかがが作った最高傑作の魔導式霊衣である俺様はカッコいいだろ!」
そんな言葉には耳もかさずに、手早くさっきと同じ手順で鉄板を組み立てる。
「おいおい?無視か?」
意表を突いたように愛用の暗器が異形の身体を貫いた。




