俺の知っている赤ずきんと違うんだが
これは誰も知らない赤ずきんの話
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昔、或るところに可愛い女の子が居ましたー
なんて、いつか誰かが口ずさんでくれるような子に、私はなれない。
特別とは程遠い自分の人生を諦めている。
何かを願うほどの勇気が無い。夢を保つほどの情熱が無い。
自分の足でどこにも行かない私には、何も手に入れる事は出来ない。
大きな愛に満たされている。不自由を感じた事もない。
おばあちゃんにとって私は、何物にも変えられないものだろう。
だけど。
だけど、といつでも思ってしまう。
誰かに、この世界にとって特別でありたい。
私は無だ。どこにも行かず
何一つ挑戦しない私には悲劇さえも起こらない。
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この自分の人生は何も残す事は出来ない。
奪われ続けるばかりだ。
台所から漂う酒の匂い。自分を呼ぶ声。
ごめんねと笑う痩せた女性の顔。
子ども達から先生と呼ばれる大人。大人から友達と名付けられた子ども。
俺から大切なものを奪っていった人達の顔が浮かぶ。
過去を振り払おうとすると、今まさに奪い続ける人達の顔が浮かぶ。
生きた分だけ多くを奪われる。
いつだって多くを望んだ事はない。
大きな目標を成し遂げられなくてもいい。
誰かを救えなくてもいい。
ただ、今日と同じ日が明日も続くようにと。
そう思いながら眠れる日々が欲しかった。
あの子は。いつも同じ曜日、同じ時間に同じ場所で見かけるあの子。
全てを与えられる側にいるあの子。
愛に満ちた、未来を目掛けていくあの子。
どうか、あの子の人生が悲しみに満ちますように。
どうか。
どうか、あの子の幸せを奪い取れますように。
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この後の展開構想(結末)
女の子に悲劇は起きません。女の子は彼の妄想ですから。
彼の人生にも、悲劇なんて起きた
二人は何処にも行かず、何も成さないのです。




