第3話 昼休み
学食を食べに食堂へ行く者、中庭や屋上でお弁当を食べる者。多くの生徒が会話に花を咲かせる昼休み。教室に居る生徒の数も多くはなかった。
「宮永、ご機嫌ななめだね。どうかしたの?」
「別に」
宮永は苛立っていた。その後もさくらに格の違いを見せつけられ、自分より出来るということを認めざる得なかったからだ。
怒りのぶつけ所が分からず、宮永はさくらがいる方をキッと睨みつける。
「さくらちゃんほんとすごーい!体育で男子に余裕勝ちしたし!」
「ホントホント!さっき勉強教えて貰った時もすごく分かりやすかったしー」
「可愛くって勉強も出来てスポーツ万能とか、最強じゃん!」
沢山の女子に囲まれ、褒め称えられるさくらは照れた様な表情で言葉を返している。
しばらくして女子の波が引くと彼女の周りに2人の女子が残る。
「ふぅーー、落ち着きましたー」
「大丈夫?疲れてない?」
和泉蓮と柚希美緒である。
さくらはその問いに首を振る。
「うんうん、全然平気だよー。それより、私に興味を持ってくれる方が嬉しいんだ」
純粋なさくらの笑顔に皆がほっこりする。
「宮永が見てるの、鈴野さん?可愛いよねー」
柔和な声で話しかける彼は、皐月竜星。
爽やかでありながら甘い声。世間で言うところのイケボな彼は、宮永の友人その2である。
少しウェーブのかかった明るい茶髪。赤い瞳は力強く、王子のようなルックスの中に力強さを感じる。
物腰も柔らかく、誰に対しても優しいため女子から高い支持を得ている。
そして、その2までしかいない宮永の友人の中で唯一彼女持ちである。
彼女持ちである!
その彼女こそ柚希美緒という少女。小動物のように可愛らしく、守ってあげたくなる女の子ランキング1位(クラス調べ)の彼女と皐月は、クラス公認カップルである。
「お前、そんなこと言って柚希に嫉妬されても知らねえぞ」
少し茶化したように宮永が脅すと、王子はクスッと笑い、淡々と言葉を述べる。
「僕はそれでも構わないよ。美緒が僕の大切さに気づいてくれるのであれば、本望だよ」
「ひょーーー!ラっブラブだなー」
(軽いヤンデレなのでは)
楽しそうに談笑する自分の友人達に溜息をつき、広瀬は読書に戻るのであった。