第2話 一目惚れ?
久しぶりにこんにちは
一目惚れとはこういうことを言うのだろう。
人に好かれたいとは常に思っているが、好こうとは思っていない宮永にとってこの出会いは衝撃的なものであった。
思わず後ずさりしようと後ろに下がるが椅子に座っているため手が滑る。
「うぉっ」
落ちる瞬間、 パシッと誰がが宮永の手を掴み グイッと力強く引き戻した。
宮永が一目惚れした、さくらであった。
その細い腕からは想像出来なかったが、宮永は好きになった子に助けられたという事実で頭がいっぱいである。
な、何だこれ!?何だこのドキドキ!?!?
もしかして、好き!?
宮永にとってはこれが初恋。それなりに少女漫画が好きな彼は、自分が恋をしていることを瞬時に見抜く。
「あの、大丈夫ですか?」
まだ手を握っていることに気づいた宮永は手を払う。
「私は鈴野さくらです。よろしくね、え〜と・・・」
「こいつ宮永って言うんだよ。仲良くしてあげてね〜。ちなみに私は和泉蓮。よろしくね」
同様のあまり声が出せなくなっている宮永に助け舟を出したのは、さくらの前の席に座る生徒だった。
端正で中性的な容姿から美少女とも美少年ともとれる彼女は、れっきとした女子である。
さくらと蓮はすぐに仲良くなったようで、そのまま何かを話している。
「おーい、いい加減授業始めるぞー」
先生の号令で彼らは授業を始める。
授業中でも宮永の頭は自分が恋をしたということでいっぱいだった。
俺が恋なんかする訳ない!そもそも俺は自分より最強じゃなきゃ付き合わない主義なんだ!絶対に認めない。ちょっと顔がいいだけだろ。勉強やスポーツまで俺より出来るわけない。そうだそうだ!出来るわけないっ!!
一旦宮永の中で結論が出ると、先生の声が耳に入ってくる。
「それじゃあ、この問題解ける奴ー。出てこーい」
応用問題らしく、皆が頭を悩ませている。
「(俺も少し考えるか)」
いつもは問題が出題されると真っ先に手を挙げる宮永もこればかりはそう上手くいかない。
手を挙げる奴いないかな。
クラス全員がそう思った時、スっと静かに手が挙がった。
「おぉ、鈴野かー。それじゃあ前に出て解いてくれ」
さくらは前に出て回答を一通り書いた後、ペラペラと説明を始める。
そのわかりやすさと丁寧さでクラスの誰もが 感嘆の声を挙げる。
「さくら、凄いね」
「・・・別に」
2限目の授業は体育だった。
「(運動は俺の得意な分野のひとつだからな!しかもバスケ!バスケ部主将の俺がまけるはずがない)」
しかし、天使な転校生そんな宮永の自信を見事に裏切った。
「いっけー!やっちゃえーー!!」
「さくらちゃん負けるなー!」
どうしてこうなった。
今は男子の試合中だ。しかし宮永は休んでいる。そして男子の中に混じる白い影。
「さくらちゃんって運動も出来るんだね!すごーい!」
さくらは今、男子の中で熱いバスケ戦を繰り広げていた。しかもボールある位置には必ずいる。
まさか・・・まさか足首を捻るなんて!!・・・
あまりの不運さに少し泣きそうになりながら、宮永はさくらが10回目のシュートを決めたところを呆然としながら見守るのであった。