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リトルデヴィルの放浪譚  作者: xnishix
2/25

遭遇

 



 勇者達によって大魔王が倒され、十年が過ぎようとしていた。


 大魔王という人類最大の脅威は消え去り、世界は聖なる光で満たされていく。


 勇者達の中心人物であった光の勇者は、人類最大規模の国家の姫君と結ばれ、全人類の新王となる。


 それは新時代の幕開けあった。






✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕






 暗闇が広がる空には下弦の白い月が浮かび、星々が静か輝く。


 世界中の国が街灯の光を夜の大地に浮かび上がらせ、人々の寝静まる気配はない。


 十年前はでは魔物対策の為だったが、今では仕事帰りの男達がいっぱい酒をひっかける為の、いこいの時間となっていた。


 そんな世界の片隅、街道から少し離れた小規模の森の中に疾走する影が十数体駆け抜ける。


 夜の森は暗い。


 小規模とはいえ人の手が入っていない自然の森は、闇夜を彩る月光も星々の明かりも深い木々が遮る。


 そんな暗闇も意に介することなく行動する影の正体は、野犬の群れであった。


 以前は人に買われていたのか、首輪をしている犬もいる。


 大魔王消滅後も人類による、徹底的な魔物討伐は続けられた。


 それらに一役買ったのが、魔物の死骸からその匂いを嗅覚に認知させられた犬達である。


 だが大魔王消滅後、魔物が増加しなくなった十年という月日は、人類がその犬達を必要としなくなるには十分であった。


 人の手元に残される犬はいいが、それ以外の犬は排除物として処分されていく。


 犬達も命の危機を悟り、人類に反撃を試みるも結果は惨敗。


 戦いを生業にしていた荒くれ者達の新たな飯の種として冒険者と呼ばれる職種が再び陽の目をみ、人類の目下の問題は魔物討伐から野犬狩りへとシフトしていく。


 人の手から逃れ生き延びた野犬達は、生きていくためにその生態を変形させ凶暴化し、人類によって野犬は魔物と認定されたのであった。


 野犬が食料を求めて旅人や、小さな村や街を襲うなどはよく聞く話となる。


 そんな野犬達の一つの群れが今、森の中で足を止めその嗅覚を持って地面を探索している。


 十数匹の野犬の群れがうろつている草むらの中、一本の草の根のあたりが、ぼんやりと霞む。


 それに気付いた一体の野犬の目の色が変わり、その凶暴な牙に唾液を粘つかせて、勢いよくその草の根めがけ駆け出した。


 その状況に草の根の、ぼんやりと霞んだ部分が紫色に変色する。


 形は楕円。


 大きさはテニスボールくらい。


 ソレは犬にとって、玩具といっていい代物であった。


 他の野犬達もソレに気付き、視線を向ける……と同時に、空から木の葉を撒き散らして何かが降ってくる。




「僕の仲間に何しやがる!!」




 その言葉が終わる前に、最初に動いた野犬の頭蓋が地にめり込み、反動で宙に浮いた身体は重力に逆らうこと無く地に伏した。


 その後、その野犬は一切動くことは無い。


 野犬達は認識する。


 眼前に現れたモノが敵だと……




 闇に溶けるような藍色の目深いフードに、裾が地面を引きずる長さのローブ。


 身長が百センチもないのに、その倍の身長を必要とするローブを身に纏っているアンバランスさが奇妙といえば奇妙だが、見方によってはどこかの王様の出で立ちにも見て取れる風貌である。


 フードから垣間見得る肌は白く、形のいい小さな唇は桃色をおびぷっくりと愛らしい。


 頬を撫でる細くしなやかな白銀の髪は、光源がないにもかかわらず薄く光を纏い、薄紫の光沢を輝かせる。




 突如現れた敵の前に、野犬達は次々と地に伏していく。


 敵に近い犬から首より先の頭が突如なくなり、鮮血の噴水で足元を血の海に染め上げていく。


 敵は何もしていない。


 していない筈である。


 敵は上空の木々の間より舞い降りてから、指一本動かしていないのだから。


 野犬達は知らない。


 所詮は畜生。


 卓越した知能や思考能力は、持ち合わせていないのだから同然である。


 目の前の敵が敵ですら無い事に……


 自分達が敵にとって敵になることさえ無い事実を……


 蹂躙とさえ言えない。


 それはまさに悪夢との遭遇。


 だがわかる事も一つだけあった。


 生あるものの本能により、この場にいればあるのは死だけであるという事。


 後方のまだ生命ある野犬達は、倒れた仲間を気にも留めることなく逃走した。






✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕




「なんだ、根性無い奴らだな」


 呆れ口調でそう言いながら、遠ざかっていく数匹の野犬の後ろ姿を見送ると、本来の目的を達成すべく長いローブをなびかせて、その小さな身体を反転させて地にしゃがみ込む。


「しっかし、小さいなお前。標準の半分以下じゃないか? 色もなんか変だし……」


 森の草達が、その視界の障害となる事を避けるように、自ら道を作る。


 その事になんの疑問も持たずに、藍色のフードから覗く黄金の視線は、その先にある紫色に変色した小さな楕円を捉えて離さない。


 ソレはプルプルと震えるているが、やはりそれもに気しない。


 ブカブカの藍色のローブの袖から、小さな子供の白いその両手が紫色の楕円をすくい上げ、ぽよんぽよんのソレに対しスリスリと頬ずりをした。


「大魔王城を出てから、初めて新しい仲間に逢えた~!!」


 歓喜の声と同時に、小さな子供の白い掌にあった楕円がペシャリと崩れ、水溜まりのようなものを作る。


「うわぁ! どうしたんだ!? スライム!!」






 これが『大魔王城のリトルデヴィル』と『辺境のミニスライム』の邂逅であった。






2話目です。

ありきたりなどこかで聞いたようなネタばかりを詰め込んだ内容なので脳内では既に完結しているのに文章力とやる気のなさが足を引っ張り遅筆となっております。

そんな駄文を閲覧頂きありがとうございました。

次話更新は不明です。

悪しからずご容赦願います。

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