019「恋花」
――女三人寄れば、恋バナに花が咲くものである、らしい。
「ルイスくんったら、ちっとも乙女心が解ってないんだから。もっと積極的にならなきゃ駄目かしら?」
「そうねぇ。逆に、一歩下がって気を惹くのも手だと思うわ」
「そうかしら?」
「そういうものよ。押して駄目なら、引いてみるの」
三人でタータンチェックの布が引かれたダイニングテーブルを囲み、パンやシチューを食べながら、お喋りに興じている。今は、もっぱらシルビアがホワイティ―に相談しているかたちだ。
――最近の女の子は、おませさんなのかな。私が小さいときは、近所の女の子とお花を摘んだり、蝶々を追いかけたりしてた記憶はあるけど、こんなマセた話をした覚えは無いわ。
「ふ~ん。じゃあ、試してみるわ。――ねぇねぇ、アキミお姉さん」
「なぁに、シルビアちゃん」
「お姉さんは、今日、シュバルツさんと、ロッソさんと、チンさんに会ったんでしょう? 三人の中だったら、誰がタイプなの?」
「えっ!」
興味津々といった様子で目をキラキラさせているシルビアの質問に、アキミが驚いて言葉を失っていると、ホワイティ―も加勢する。
「私も知りたいわ、アキミさんの恋愛遍歴。さぞかし、おモテになったんでしょう?」
――わぁ、どうしよう。アイドル時代は仕事仕事で、趣味や恋愛を愉しむ余裕なんて無かったし、婚約破棄された彼が、生まれて初めて交際を申し込まれた人物だったなんて言えない。
*
「ごめんなさいね、アキミさん。つい、お年頃への老婆心を出しちゃって」
「いえ。私のほうこそ、せっかく恋バナで盛り上がってたのに、水を差してしまって」
「気にしない、気にしない。シルビアのことだったら、大丈夫よ。明日の朝には、今夜の話なんてケロッと忘れてるわ」
「そう、だと良いんですけど」
アキミが沈んだ調子で言うと、ホワイティ―は窓辺に移り、カーテンを開けて空に輝く満天の星を眺めながら、独り言のように呟く。
「シルビアに比べれば、もう若くないと思うかもしれないけど、この私に言わせれば、アキミさんは、まだまだ若いもの。きっと、これから素敵な殿方に巡り会うわ」
「そうでしょうか?」
「そうよ。そうですとも。諦めること無いわ。――それじゃあ、夜更かしはお肌に悪いから、早く寝なさいね」
ホワイティ―はカーテンを閉めると、振り返って笑顔でアキミに言った。アキミも、それにつられるかたちで、笑顔で挨拶を返す。
「はい。おやすみなさい、ホワイティ―さん」
「ウフフ。よい夢を」
そう言って、ホワイティ―は屋根裏部屋から姿を消した。
――三十三歳からの恋愛か。遅咲きにもほどがあるわね。