少女との出会い
魔教徒、それは500年前この国を恐怖のどん底に陥れたとされる魔女リリスによって生み出されたとされる集団。彼らは魔女リリスが死んだ後もその教えに従い今でも人々に恐怖を与え、魔女リリスを復活させようと日々動いているという話がある。
シドウと別れて2週間程がたったある日、食料調達のために森で狩りをしていると数メートル先に数人の気配を感じた。
「お前ら、今日の仕事はこの先の村へ行き、いつものように皆殺しにすることだ」
俺が声のする方を覗き込むとそこには黒ローブを着た男たちがニヤニヤしながら不気味に笑う姿だった。
「へっへっ、久々に人間の嘆き哀しむ姿が見れるぜ」
「ああ、我らの先祖リリス様を蔑み、死に追いやった人間どもよ、全員皆殺しにしてやる」
男達が口々に言葉を発していると最初に喋り始めた男が場を静めて言葉を発した。
「行くぞお前ら、人間に報復の時間だ」
「「「へい」」」
すると男達は興奮したように息を荒げ、目を黒くして走りだした。
ーー目を黒くしただと、
「魔教徒、ぶっ殺してやる」
俺は自分の怒りを抑えきれず無防備に走り出した男の1人を背後から思いっきり斬りつけた。
「ぶはぁ〜」
「おい、どうした。なっ、これは」
「あいつだ、コニーはあいつにやられたんだ」
「よくも、コニーを。お前ら、作戦中止だまずこいつをぶっ殺すぞ」
斬りつけられた男がなすすべなく倒れると周りの男達は怒りを露わにし俺へ向かって来た。
「殺人鬼どもが一丁前に仲間意識持ってんじゃねーよ」
俺はそう言って向かってくる男達の魔法を避け、一番近くにいた男を左肩から右腰に斬りつけて、胴体を真っ二つにした。そして、血しぶきが体全体にかかるのも気にせず、そのままもう1人に斬りかかろうとしたのだが、しかし、そこで俺は腹に大きな衝撃を受けて近くにあった木に激突した。
「痛え、今俺何されたんだ」
木に背を預けながら、腹から血を流し座っている俺の前に2人の男が怒りをあらわにしながら睨んでいた。
「どうやら、魔法への対処は素人慣れていないようだな。しかし人間よくもコニーとジョンを殺してくれたな、絶対に許さないぞ」
ーーなんなんだこいつら。何故極悪非道の魔教徒が仲間の仇を取ろうしている。
「ああ、だか油断するな。こいつから底知れない執念を感じる。きっとここで撮り逃せば、また同士が沢山やられる」
「さっきから気持ち悪いんだよ、お前らみたいなクソ野郎共すぐにぶっ殺してやるからな」
俺は男達の普通の人と変わらない発言に苛立ち声を荒げ再び立ち上がろうとした時、男達の背後から見知らぬ人影が俺の前に向かって来て
「逃げるよ、早く掴まって」
そうして俺はその人に手を引かれ走り出した。
謎の少女に手を引かれ、男達から逃げきれた俺は近くにあった洞窟で休むことになったのだが、
「まず、自己紹介からですかね。私の名前は
エリサ、どうぞよろしくお願いします」
「あ、俺はカズト。こちらこそどうぞよろって違うわ、あんたなんて格好してんだよ」
俺はズボンを履き忘れ服の下から白いパンツが見えているエリスに向かって、反射的に怒鳴った。
「何って、私は別に普通の格好を・し・て・い・・・・・」
エリスは自分の下半身を見て、状況を把握したらしく、どんどん涙目になって俺を睨んでくる。
ーーちょっと待て、これって結構やばい状況なんじゃ。
「とりあえず落ち着こう、なっ?大丈夫、パンツぐらい見られたって別に死にはしな」
「きゃあーーーーーー」
エリサの悲鳴と共に繰り出された平手打ちは俺の頰を直撃し、傷だらけだったこともありそのまま意識を失った。
意識を取り戻した俺は頭に柔らかい感触感じながら目を開けると、そこにはエリサの顔が目の前にあった。
「きゃっ」
エリサが可愛い声で叫んで顔を俺から離す。
「大丈夫ですか?そのさっきは本当にご無礼を」
「ええ、大丈夫です。それにこちらこそ、もっと気を使うべきでした」
「そんな、むしろ私の不注意が原因だったのに叩いてしまったりして申し訳ありません」
「………」
「………」
…どうしよう、何も話すことがない。何か話を切り出さなきゃ。
俺が久々の人との会話に戸惑っていると、エリサが真剣な表情で俺に話しかけた。
「それでカズトさん。あなたは何であんな所で襲われていたんですか?」
「いや、襲われてたわけじゃないよ。なんていうかあの時は、俺が不意打ちであいつらを襲ったんだけど逆に返り討ちにあったんだ」
俺が事実を淡々と言うとエリサはいきなり怒り出した。
「君、なんでそんな馬鹿な事したの、あの男達は魔教徒よ、魔教徒。あいつらは極悪非道で今も何も関係のない村を襲っては魔女リリスを蘇らせるなんて言ってる。そんな馬鹿げた奴らを襲うなんて、君どうかしているわ」
「どうもしてないよ。魔教徒がいたら殺す。それは俺にとっては当然のこと。俺は絶対にあいつらを皆殺しにしなくちゃいけないんだ」
「なんで、そこまでするの?もしかして君、あいつらに何か恨みが」
俺が威圧的に言ったのが悪かったのだろう。エリサは少しびびっていたが、俺を心配するような眼差しで聞いてきた。
「ああ、確かに俺は5年前に魔教徒に村を焼かれ俺以外の全員殺された。だから、俺は決めたんだ。魔教徒を1人残らず殺すと」
俺がそう言うと、一瞬エリサの顔がすごく暗くなったが直ぐに元に戻りこれで話は終わりと言いたげにその場に立ち上がった。
「とりあえず、身支度を整えて街に向かいましょう。流石の魔教徒を街まで行けば私達を追っかけては来ないだろうし」
「ああ、分かった」
そうして俺たちは身支度を整えると魔教徒と鉢合わせにならないように慎重に歩きながら街へ向かった。この後、俺の人生を揺るがす一大事が待ち構えているとも知らずに。