のふげらっ! の世界
謎の世界に迷い込んで、右も左もわからない状態でいると、一人の男性が話しかけてきた。
「ウィッス! のふげら楽しんでっか? おう?」
「のふげら……。スミマセン、ちょっとお伺いしてもよろしいですか?」
男性はニッコリとした笑顔を貼り付けたまま、威勢の良い声で「おう!」と言った。
「この世界は何処ですか? それと『のふげら』とはなんですか?」
瞬間、男性は目を丸くした。
「おいおいおいおい! それは冗談でも笑えねーぜ? 」
そう言って、男は背中をバシバシ叩いてくる。とっても、痛い。
「あのー……本気なんですけど……」
男の目の色が変わる。
「お前……『ジャック・クランク』の一味じゃあ無さそうだ。それなら心配あるまい……いや、違った意味で心配だぜ……」
面倒臭さそうにそういう男。俺だってわざとじゃねえよ。
「しゃーねぇーな! 俺が一から教えてヤラァ‼︎」
その声に少しビクッとする。すると男は「がははは」と下品に笑う。バカにされてる……。
「この世界はAR––––仮想現実––––で出来ている。つまり、現実の建築物とこの世界の建築物は見た目こそ違えど、その位置関係は全くかわらねぇ。つまり、この世界はノーフィクション––––現実––––って訳だ」
男は語り続ける。
「それを可能にしているのが––––この【ARシュミレーター】だ‼︎」
そう言いながら左手についてある機械を指差す。
「【ARシュミレーター】? これが、そうですか?」
そういって、自らの左手に宿っている【ARシュミレーター】とやらを見せる。
「やっぱり持ってんじゃねーかよ! お前、やっぱ嘘ついてたのかァ⁉︎」
「い、いえ! 違います‼︎ 貰い物です貰い物‼︎」
すぐさま否定する。何なのかよくわからないが、″何かしらの犯人″と疑われているらしい。いや、そもそも何の?
「貰い物? あぁ、たまに聞くことがあるが、実際に受け渡しがされているとはな……。いつ、だれから貰った?」
「小さい頃、当時の友達から貰ったものです。もらった時は小さな指輪型でしたけど」
「とりあえず一つだけ言わせてもらう」
そこで一呼吸置いたのち––––
「––––この【ARシュミレーター】は一度取り付けると二度と外せない。ある一定の可能性を除いて、な」