指輪と、彼女と
「やっべぇー……、ほこり臭っ!」
まあ当然と言えば当然なのだが、案の定ほこり臭かった。ちなみに中に入っていたものといえば、クレヨンで描かれたヘタクソな絵、小さかったり大きかったり様々な石などであった。何でこんなもの……。
「えっとー……、おっ、あったあった。これが例の指輪か」
夢の中に出てきた指輪を発見する。見た目も夢のものと一緒だった。
宝石をまじまじと見つめる。宝石の中に白っぽいものが混じっているのが見えた。何だろう、この白いものは?
「とにかくっ! あの子が『大切な物』って言ったんだ。何か意味があるに違いないよなぁ」
本当の本当に非現実が現実になるのならそれが一番いいのだけど、まさかこんな小さな指輪でそれが叶うはずもないだろう。
取り敢えず着けてみる事にした。うむ、何も起こらない。
「何なんだよ、綺麗なだけでやっぱただの指輪か。って、こんな感情もおかしいのか」
落胆しつつ、今日が学校のある日だという事を思い出す。
ふと時計を眺める。
「うわっ⁉︎ もうこんな時間か! 早く学校に行く準備しなきゃ‼︎」
急いで支度をして家を飛び出す。朝ごはんは抜きだ。
このアパートから高校までは、さほどの距離はない。歩きで片道15分といったところか。とにかく急ごう。
「おぉーい! おにぃーーちゃーーん! ちょっと待ってよぉ〜」
後ろから慌てた様子で走って来る人影が見える。因みに俺に妹はいない、姉ならいるが。
「はぁ……はぁ……待ってよぉ〜、おにぃちゃん……」
髪の毛は少しダークなブラウン、目は水色の虹彩をしている。身長はやや小さめで小柄な少女が目の前にいた。いや、正確には少女と形容はし難いのだが。
「 もう、その呼び方はやめて下さい!」
「えへへ、いいじゃん! こんな呼び方してみたってさ♪」
この俺の目の前にいる彼女は。