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新-執行者アリス  作者: 至福の鯱
第一章‐王都認定式編‐
22/27

執行者の片鱗-5

殺伐からお別れ。ここから一章の締めに入ります。

「くっ……」

 飛び散った血を全身に浴び、不快感を感じながら私は膝を突いた。

 権限四の見巧者――少し先の未来を予測することができる――によって、ゲリムゲルデの行動は読めていた。だが最後のチャンスを与えようと、私は一度剣から手を放したのだ。結局はブリュンヒルデを抜くことになってしまったが。

 何とか聖気の身体強化が間に合ったので、それ程傷は負っていない。しばらく休んでいると体調も含め、体は元の状態に修復された。

 私は立ち上がって握ったままだった剣を振り、かかった血を軽く払い鞘へと戻す。

「イリス。そちらはどうですか?」

 神の成れの果て。

 力はほとんど残っていなかったようだが、その亡骸に目を向けながら、ただ何となく私はそう呟いた。


「ライズさん。じゃんじゃん運んじゃってください!」

 湧き上がる聖気に気持ちを昂られ、軽傷重症関係なく、目に着いた者を片っ端から治療していく。

「う、うん。けどさ、大丈夫なの?」

 私に言われ、負傷者を運びながらライズさんが聞いてきた。

「何がです?」

「聖気切れとか起こされても困るんだけど」

「あーなるほど。心配してくださっていたんですね? ありがとうございます。ですがご心配なく。普段ならとっくに聖気切れを起こしていますが、今は大丈夫です。アリス様が絶対権限を解除したお蔭ですね」

 でなければ昨日のアリス様のように、今頃気を失っていることだろう。

「そういえば封印を解くとか言っていたけど……。結局何だったの? アリス様すぐどっか行っちゃったし」

 ふっふっふ。仕方がありません。説明して差し上げましょう。

 休むことなく治療を続けながら、私は胸を張って答える。

「ふふん。驚いてはいけませんよ。絶対権限とは――アリス様の強すぎる力を制御する為に、神が自らかけた制限なのです。この制限がなければ執行者は神と聖気的に直接繋がっているので、ほぼ無限に聖気を行使出来るのですが……。その封印を解くには、神に直接申請を通さなければならない為に、少しばかり時間がかかる訳でして。そんなこともあって、アリス様は普段ご自身の持つ聖気だけでやりくりをしているのです。簡単に言うと絶対権限の解除は、アリス様が本気を出す下準備みたいなものです。絶対権限を解除しても、どの権限を使うかという問題もありますし、必ずしも全力とは言い難いですが。さっき解除されたのは、アリス様が管轄者のお力を使いたかったからでしょう。ですが私に宣告者を貸与する為に、既に委任者のお力を使っていて権限の複数行使に引っかかったから、だと思います。昨日半分持っていかれたと言っていましたし、もしもの為に封印を解いたのでしょう」

 話している最中何だか一点に視線を感じたような気がしましたが、気にしている場合ではありません。

 後でアリス様に叱ってもらいましょう。

「情報が多すぎて、分かったような……分からないような。その、執行者の特殊権限だっけ? それは全部でいくつあるの?」

「絶対権限の、権限行使の封印が最後で10番目です。私も全部知っている訳ではありませんが、一の管轄者。二の委任者。七の宣告者は分かりますね? つまり後七つ残っている計算になります」

 そもそも神殿にいたときは修練の時でさえ、アリス様は権限のお力を使っていなかった。

 執行者の権限が1から10まであることは、知識として知ってはいるけれど。

 実際はアリス様ご自身が鍛錬されている時に、一部の権限を行使している姿をちょこっと見たぐらい。その為内訳は使徒である私も、ほとんど知らない。

 後で確認しておこう。

「なるほど。イリスちゃんも権限持ってるんだっけ?」

「アリス様よりは少ないですが、持っていますよ」

 ただ、まだまだ実戦で使えるようなものではなく、絶賛練習中だ。

「教えてくれたりは?」

「秘密です」

「あれ、それでイリスちゃんが聖気切れを起こさない理由は?」

 今更だけど、本題がずれていた。

「委任者と受諾者の力で繋がっている間は、聖気的にアリス様と繋がっているので、神から流れた聖気がアリス様を通して私にも届くからです。よし、これで終わり!」

 最後の一人を治療し終え、私は土埃を払って立ち上がった。

「それじゃあアリス様を迎えに行きますよ!」

 きっと大丈夫だとは思うが、心配は心配だし。単純にお側に居たい。

 愛しのアリス様に会いに行こう。

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