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新-執行者アリス  作者: 至福の鯱
第一章‐王都認定式編‐
21/27

執行者の片鱗-4

説明は次回!ちょっと短めです。

 体が熱を帯びる。その熱は未だ血を流す箇所を中心として温度を上げていく。

 全身の聖気が自動的に集まり、傷口の、体の修復を開始する。

 私は倒れた体を起こし、手を突いて支えた。

「……驚きましたよ。まさか魔法を使う者が、今もなお実在していたとは」

「今のをくらって平気な執行者様に私は驚いていますがね。どうやったら死ぬんですかねぇ? 今の直撃だったと思うんですが。あ、修復前に潰しちゃえば死にます?」

 そう言って地を蹴ったゲリムゲルデは、両手に黒い塊を渦巻かせたまま直進してくる。

「これだったら死んでくれるんじゃないですかぁ!」

 ゲリムゲルデが走りながら、腕を前に出した。私の前に純粋なエネルギーの塊が迫る。

「出し惜しみしている場合じゃないみたいですね……。執行者、特殊権限。権限四から権限六までを行使」

 視界が赤く染まり、瞳の色が変わっていくのを理解した。

 どこからともなく送られて来る聖気に、神との繋がりを確かに感じながら、私は力を振るう。

 とうとう目前に迫る、負の衝撃に目を反らすことなく私は唱える。

「イグニッション!」

 瞬間、私を中心とする眩い光が弾けた。

 辺り一帯に、純粋な炎が舞い踊った。

「あぁああああああああ!」

 ゲリムゲルデが全身に燃え移った炎に悶え、地面を転がる。纏っていた衣服は焼け落ち、高温の灼熱に焼かれた皮膚はただれ、その炎は消えることなくなおも燃え続ける。

 体の修復が完了した私は立ち上がって歩む。苦しみもがく、ゲリムゲルデの下に。

「魔法には、魔法を。といったところでしょうか。どうです? 失われた古代魔法の威力は。あの魔法もどきとは比較にならないでしょう。危険すぎるこの力は、使用法が封印されたのも納得です。使うつもりはありませんでしたが、少し、私を怒らせすぎましたね?」

 一歩、また一歩と歩み寄っていく。

「このままでは話ができませんから、特別に、火は消して差し上げます」

 転がり回るゲリムゲルデに、右手をかざし唱える。

「スプラッシュ」

 どこからともなく現れた大量の飛沫が、私が焼いた大地に降り注いだ。

 あまりの高温に、降り注ぐ水は炎に触れるたびに音をたてて蒸発していく。

 普段は静寂に包まれているこの場所に、私が焦げた大地を踏みしめる音と、水が蒸気と化す音が響いていた。

「ぐ、ぐぅ! な、なぜっ。魔法を使える! 神である私ですら、過去の威力は出せないというのにっ!」

 ゲリムゲルデは炎によって醜くなった顔を私に晒し、叫ぶように怒鳴った。

「うすうす感づいてはいましたが、やはりそうでしたか。古代戦争を終結させる為に動いた、神と執行者に反対した別の神がいたとは聞いていましたが、まさかそのご本人に相見えることになるとは。さすがに思っていませんでしたよ。ワルキューレの一人。ゲリムゲルデ」

 私の言葉に、ゲリムゲルデの瞳に明らかな動揺が走った。

「なぜそれをっ! 最早私たちのことを知る者はいないはず。どこで、いったいどこで知った!?」

「簡単なことです。当時貴方方と戦った者に、先代に教えてもらったんですよ」

「何を馬鹿なことをっ。力はともかく、あいつは人間の体だ。とっくに死んでいる! 嘘をつくな!」

「信じないなら信じないで構いませんよ。それに、質問しているのはこっちですからね」

 大きく一歩。倒れ伏すゲリムゲルデを私は見下ろす。

「ひっ。やめろ。分かった、言う。全部言うから! 殺すのだけは勘弁してくれ!」

 ゲリムゲルデが這いずって後ずさる。私はそれをゆっくりと追う。

「本当に?」

 剣に手をかけ、私は威圧しながら問う。

「本当だ! だ、だから、まず私の怪我を直してくれないかっ? 痛みで意識が飛びそうなんだ」

「…………」

 ふらっとよろける姿を冷めた目で見ながら、私は剣から手を放した。

「馬鹿めッ、道連れにしてやる!」

 その一瞬を狙って、懐に隠し持っていただろう爆弾が私に投擲される。

「死ぬのは貴様だッ!」

 私は抜剣し、剣の腹で爆弾を打った。開かれていたゲリムゲルデの口の中へと。手の平大のそれは、ゲリムゲルデの歯を砕いて侵入し、綺麗に収まったところで光を発した。

 飛び退る間もなく、私は爆発に巻き込まれた。

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