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終わった世界へ異世界転生  作者: クラクラ
異世界
5/19

天上の民の女の子

「━━君、邪魔だ、よ?」

「ふぁ?」


 耳元で囁く綺麗な声に間抜けた返事をする春採はると

 目を覚ますとやけに体が冷たい感じがする。


「なんだこれ」


 体のついているゼリーのような物を手に掴む。それは紫色のスライムだ。


「うわっ」

 驚き投げると「きゃ」と綺麗な女性の声が聞こえた。


「きゃ?」


 体を起こし声がした後ろの方へと振り向く。

 金色の長髪波をうち、澄んだ碧眼は丸くして、白い肌には紫色のスライムがへばりついた下着姿の女の子がいた。


「ファイルナ? てかどういう状況?」

「君の、スラ……紫色の、体液が、つい、た」


 目の前の女の子は白い羽を背から生やし、肌は雪のように白い。


「…………」

「なん、で沈黙?」

「はぁ、俺自分のキャラに発情してたのか」


 夢だと断定する春採はすぐ体を寝かせ、瞼を閉じる。


「あの、邪魔……」

「…………すぅ」

「え、っと、あれ?」


 金髪の女の子は首をかしげ、春採を見る。


「あの…………」


 春採は二度寝しようとしたが全く寝れず、すぐに体を起こすと女の子へ目を合わす。


「ふぅ、悪いな。俺はそんな目で君を使っていたわけじゃないんだ。だから、こんな夢終わらせてやるっ」

「は、い?」


 春採は起き上がり部屋の中央にある台座へと走りだした。台座の前で立ち止まり、大きく息を吸い込み、

「俺の夢でファイルナ汚してんじゃねっ!」

 右手台座へと叩きつける。


 試練の間、守護神の召喚。台座に黒い霧状の魔力が渦を巻くように集まり、大きな球体となった。殻が割れるように傷がつき、風圧と共に弾け飛ぶ。


 雄叫びをあげ、中から黒く輝く結晶の竜型モンスターが現れた。


「さぁ、現実へ戻してくれっ、ダークリスタル」


 春採は両腕を広げ叫んだ。

 結晶の竜は部屋を覆うほど無数の魔方陣を作り出し、黒い輝きで視界が埋まる。


「ミラージュスペルっ!」


 部屋を満たす輝きは一点へと集まり出す。


「馬鹿、なの?」


 無表情に女の子は両手の指を絡ませ、春採を見る。彼女の前に黒い球体が出来上がっていく。


 女の子は体を時計回りに回し、黄色く輝きだした右足で黒い球体を蹴り飛ばす。結晶の竜へと向かった球体はその吸引力を弱め始め、結晶の竜がそれを殴り壊そうと右拳を突きつけた瞬間、収束した魔力が爆発した。


「えぇぇぇぇっ」


 春採は目の前に光景に目を疑った。


「魔力性質変化、うまく、でき、たよ」


 結晶の竜は一撃で体の輝きを失い、白い結晶へと変化する。


 ━━ダークリスタル撃破

 ━━二人以上の討伐のため貢献度により経験値を振り分けます。彩月春採は経験値300000獲得。

 ━━彩月春採はlevel49からlevel50へと上がった。スキルポイント+5000

 ━━体力+500、精神力+5000、物理攻撃力+50、物理防御力+50、魔法力+50000、素早さ+500

 ━━魔法力ステータス限界値に達しましたので、非許容ステータスを解放


「夢じゃ、ない?」

 春採は苦い笑みで呟く。

「君って、おかしい、ね?」

 金髪の女の子は不思議そうに春採を見る。

「…………」

「??」

「あ、っえと、君はファイルナで間違いない?」

「そう、だけど。どうして、知ってる?」


 春採は目の前の天使族の女の子を見て、ニヤケ顔を押さえられない。


「何が、面白い?」

「いや、嬉しくてさ」


 この世界に転生して初めて人に会えた喜びと、手塩にかけて育てたアバターの存在への喜びが混同して嬉しさが倍増する。


「変、態」

 ファイルナは両腕で胸を隠し、碧眼を細め睨む。


「さてと、スキルポイント」

「無、視……」


 春採はファイルナのキャラを知っている。だからこそ、彼女に対して反応するだけ意味がないことも。


 ━━不思議系に演じてたからな。意図的にしてるってことだよな。


 考えながらステータスを開く。


名前:彩月 春採

故郷:魔の民  種族:ルーン  level:50

体力510/510

精神力53000/53000

物理攻撃力50  物理防御力50

魔法力99999(116000)

素早さ4010


スキルポイント:5100

スキル:

「高等精霊体level 9」『ルーン魔術』『ルーン探索』

『ルーンボディ』「精神耐性弱」『ルーン魔術の心得』「精神強化」「精神の解放」「生命」『ルーン生命』「ルーン生命」

next5000000


「間違えてステータス開いた、……非ステータスってこんな風に表示するんだな」

「酷いな……」

「ん?」


 ファイルナを見ると女の子座りで紫色のスライムを体に染み込ませるように広げていた。


「なにしてんだろう」


 とりあえずファイルナのことを後回しにして、スキル一覧を開く。


『ルーン魔術』Max

『ルーン探索』Max

『ルーンボディ』Max

『ルーン生命』


1000 体力+100

2000 体力+200

4000 体力+300

8000 体力+400

16000 『ルーン文明』

32000 ルーンストライク

64000 「精神共生」

128000 「自動精神力回復levelMax」

256000 「自動体力回復level1」

『ルーン魔術の心得』


1200 精神力+3000

1400 『魔導師の入門』

1600 魔法力+3000

1800 ルーンリヴァイバlevel2

2000 『ルーン魔術の極意』


「魔術師の入門まで使って、あとは魔術師だな」


 春採はスキルポイントを消費し、『魔術師の入門』を取得した。


『魔術師の入門』

100 魔法力+100

200 マジックブラストlevel1

300 精神力+100

400 マジックブラストlevel2

500 〈魔術師の杖〉

600 マジックブラストlevel3

700 魔法力+200

800 マジックプレスlevel1

900 「スペルサークル」

1000 『魔術師の基本』


「これが普通だよな。今までがおかしかったんだよな」


 春採は自分の知っている常識に少し触れて妙な親近感を覚え、残りのスキルポイントを『魔術師の入門』に消費する。



「これで魔法力で威力判定が決まる呪文が使える。てか、〈魔術師の杖〉ってなんだよ?」


 ヘルアンドヘブンに『魔術師の入門』というスキルはあるが、〈魔術師の杖〉というワードをスキル一覧で見たことがない。


「武器で同じ物はあったけど━━」


 ━━特質武具の習得により、メニューに『装備』を追加します。


「アナウンス今回は遅かったな。メニュー画面装備ね」


 タッタッとリズムよく視界の画面を叩き、装備を開く。


「うわ、味気ねぇ。魔術師の杖って書いてるだけって」


 気を取り直し、魔術師の杖を選択。


 春採の体は黄色い光に包まれ、輝きは右手のひらへと集まる。形を作り始め、黒い結晶の珠が頭についた杖が生成された。


 ━━特質武具の生成により、スキル〈魔術師の杖〉は消滅します。


「えぇぇぇっ! まさかの一度きりっ?」

「何、発情してるの?」

 ファイルナは横に立っている。体には紫のスライムだったはずの液を着けて、どこかエロいと思いながらも平常心を意識する。

「人を野性動物と同じ扱いにするもんじゃないよ」

「私から見た貴方はただの黒の、塊」

「いやいや、勇敢にもダークリスタルに挑んだんだから惚れるとこだよ」

「倒したの、私だよ?」

 首をかしげ、下から顔を覗く金髪の女の子に惚れそうになる春採。

「いやこれはあれだよ。身長差が悪いな。うん、よくよく考えなくても頭半分低い女の子相手だから仕方ないよな」

「……最低」


 ファイルナは体に着けている紫色の液を手に取る。

「これ、ほしい?」

「いや、いらないよ。何、俺はそこまで変質者に見えるの?」

「リットル、スライムは、精神力の回復に、役立つから」

 ファイルナは不思議そうに春採を見つめる。

「あ、だからね。そんな効果あるんだな。なら」

「君は嫌い、だから、あげない」

「聞くなよな。もしかして、紫色のスライムが体につけてたのって君のおかげ?」

「黒の塊、恩を仇で返す鬼畜野郎」

「拗ねるな。面倒だな」

 ━━ヤタガラスをからかう時の口調のまんまだな。

「君は何でここにいるの?」

「キャラ忘れてるぞ」

「面倒に、なってきた」


 ファイルナの体についている紫の液体は徐々にその面積を減らしていき、白い肌と下着のみになっていた。


「君、服は?」

「さっき、ミラージュスペルの反射で、消えた」


 ファイルナは指を指したその先に黒い燃えかすのようなものが見える。


「他に持っていないの?」

「仲間とここに来るとき、悪のりで初心者装備で来て、ダーさんに、下着で挑むという、偉業を」

「なんか、ごめんね」

「??」


 春採は久しぶりの会話に安らぎを感じる。引きこもりのときはゲーム越しではあるが人と会話はできていた。ここに来てからはスライムにいじめられた記憶しかない。


「その格好でいられても俺の目のやり場に困る。だから、俺の学生服を着れよ。下にはシャツとパンツがはいてある。辱しめは俺が引き受けよう」


 女の子を気遣う俺は格好いいと自信を胸に高らかに宣言する。


「君、服着てるの?」

「はっ? この世界にも学生服って概念あるだろう。言わばそれだよ。見てみろ、この青いブレザーに茶色と緑のチェックのズボン」


「私からすれば、ただの黒い塊だよ、君が」


 空のように澄んだ瞳で真剣に見つめる。とても嘘を言っているようには見えなかった。


「ルーン族、もう今は絶滅、その姿は忘れられ、この世を、さ迷う。君がそうなの?」

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